【日韓経済戦争】「日本製品は買わないけど、日本企業には就職したい」韓国若者の切ない就職事情 韓国紙で読み解く

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   「日本企業の製品は買わないけど、日本企業には就職したい!」というわけだろうか?

   日韓経済戦争が始まり4か月半、日本製品の不買運動は収まる気配がないが、日本企業への就職に熱をあげる若者が増えているようだ。

   いったいどういうことか。韓国紙で読み解くと――。

  • 日本企業が多く出店した就職フェア(韓国経済新聞2019年6月6日付より)
    日本企業が多く出店した就職フェア(韓国経済新聞2019年6月6日付より)
  • 日本企業が多く出店した就職フェア(韓国経済新聞2019年6月6日付より)

「ゾンビ企業」が3分の1、韓国経済は破たん状態

   韓国経済はいま、疲弊のどん底にある。韓国経済新聞(2019年11月6日付)「韓国企業の35%は利益で利子も出せなかった」が、衝撃的な内情を伝えている。

「営業活動で稼いだ金(営業利益)で利子費用さえ払えない企業が過去最大を記録した。韓国銀行(編集部注:日本の日本銀行に相当)が11月5日に発表した『2018年企業経営分析資料』によると、昨年(2018年)インタレスト・カバレッジ・レシオが100%未満の企業は35.2%に達した」

   インタレスト・カバレッジ・レシオとは財務用語の一つで、企業の借入金等の利息の支払い能力をみる比率。150%以下になると倒産確率が高まるといわれ、100%を割り込むと、いくら稼いでも利子さえ払えなくなり、「事実上倒産している状態」といえる。韓国メディアが「ゾンビ企業」と呼ぶ会社が全体の3分の1以上に達したのだ。

   このため、韓国統計局によると、2018年の若者(15~29歳)の失業率は9.5%に達した。これは、全体の失業率3.8%の2.5倍にあたり、経済悪化のひずみが若者に集中した形だ。フリーターやニート、就職浪人を含めると実質的失業率は20%を超えるといわれる。5人に1人の若者が就職できないでいるのだ。

   そんななか、若者の日本企業人気の様子を朝鮮日報(11月13日付)「反日運動で2か月延期された海外就職博覧会に1000人」がこう伝える。

「ソウル市内のホテルでは11月12日、日本、米国など9か国の企業100社が採用ブースを設け、面接を行っていた。参加企業は日本企業が65社と最も多く、韓日関係悪化がうそのように面接希望者が絶え間なくブースを訪れた。ブース近くの椅子には正装した青年らが準備してきた履歴書や企業情報をチェックしていた」

   今回の就職フェアは、韓国政府の雇用労働部と大韓貿易投資振興公社が、青年の就職支援を目的として開いたものだ。日本ボイコットのムードが色濃いなか、会場には韓国全土から前年並みの1000人以上の青年が集まった。特に日本企業の人気が高く、ブース前には行列が並んだ。

   この就職フェアは、毎年2回開かれる韓国最大規模の海外就職博覧会で、当初は9月初めに開かれる予定だったが、日韓関係悪化で中止状態になっていた。反日ムードがやや和らいだことから、2か月後におっかなびっくり「控えめに開催した」(雇用労働部関係者)格好だが、前年並みの若者が押し寄せたのだった。

   朝鮮日報は、こう続ける。

「日本企業はソニー、日産、ハウステンボスなど65社が参加。各社は外交問題などお構いなしに韓国の人材確保に集中した。日本の家電メーカー関係者は『社内には韓国人に対する差別は全くない。悪化した雰囲気の中でも志願してくれた韓国人に感謝するばかりだ』と話した。参加者のPさん(26)は『日本企業は、父母がどうしているかとか、健康状態、家庭状況などを尋ねた。韓国に帰ってしまうことがないように、長く働ける人材を探している印象を受けた』と語った」

韓国財閥より「やや低い水準」だが、諸手当がいい日本企業

   人手不足に悩む日本企業にとって、隣の韓国の優秀な若者たちはのどから手が出るほど欲しい人材なのだ。それは、日韓経済戦争が勃発する前の今年5月に開かれた、同じ海外就職博覧会の様子を見てもわかる。

   韓国経済新聞(6月6日付)「韓国の人材を求める日本企業...TOEIC高得点なら月1万円追加、住居費支援」がこう伝えている。

   「博覧会を訪れた求職者が日本企業の採用相談ブースを見回っている。総合営業・事務職3人、技術職3人採用。年俸は248万4000~274万8000円(2710万~3000万ウォン、ボーナス2回別途)。世界で職員が16万8000人にのぼる日本自動車部品企業デンソーの外国人採用公告内容だ。デンソーは週5日勤務、ゴールデンウイーク・夏期休暇・年末年始休暇それぞれ10日間、有給・特別休暇など年間121日の休暇提供条件を掲げた。

   求人難に苦しむ日本の企業は優秀な韓国人人材を採用するためにさまざまな条件を提示した。電子部品製造会社SMKはTOEIC860点以上の職員に月1万円の資格手当を支給。総合物流会社の山九は地方勤務者に月1万円の手当を出し、既婚者には家賃を補助。エンジニアリング会社CALは電車・バスなど交通費を全額支給、顧客関係管理専門会社トランスコスモスは通勤手当として月5万円を支給。ソフトウエアの富士インフォックスネットは職務関連資格を取得すれば最大10万円の報奨金を支給......といった按配だ。これらの企業は就職合格者に来日するための航空料と引っ越し費用も提供する。

   韓国経済新聞などによると、給与面だけを見ると、日本企業が提示する額は、韓国の財閥系大企業に比べると「やや物足りない」水準だ。ただ、日本企業には韓国企業にはない魅力がある。年間2回の賞与金と1回の昇給だ。昇給のスピードも韓国より速い。また資格を取ると諸手当をもらえる点もメリットだ。

   日本には知名度は低いが、業績が優れて従業員の待遇もいい「中堅企業」が非常に多い。ところが韓国では、財閥系大企業と中小企業との間の落差が激しく、給与面では2倍上の格差がある。「中堅企業」がほとんど存在しない状態だ。「中堅企業」クラス以上を目指す韓国の若者には日本企業は大きな魅力なのだ。

トランプ米大統領の排他主義が「日本企業人気」を後押し

   また、韓国経済新聞(2019年6月6日付)は別の要因も指摘する。米国企業の人気が落ちているのだ。

「(これまで米国企業は韓国の若者にとって一番人気だったが)日本と違って外国人雇用にやや排他的になった。『米国優先主義』を宣言したトランプ政権の発足後、外国人が米国内の高賃金職場を得るのが難しくなった。就労ビザ『H-1B』を修士以上の学位者に有利になるよう抽選システムを変更し、これまで家族関係を重視していたのに、経歴や技術力に高い加重値を設定して永住権を発行するようになった」

   つまり、相当高い技術力や学歴の持ち主でないと米国就職が難しくなったのだ。その分、日本人気がさらに高まったというわけだ。

(福田和郎)

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