2024年 4月 24日 (水)

「公務員を捨てて民間会社に行きたい」2つの内定をもらった女子学生の投稿が話題に 専門家に聞いた

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   安定を求めて公務員になるか、やりたいことを求めて教育関係の会社に入るか――。悩める女子学生の投稿が話題になっている。

   市役所と教育関係の会社。女子学生は2か所から内定をもらった。女子学生が「民間に行きたい」というと、両親は「安定した公務員を捨てて、斜陽産業の教育会社に行くの?」と猛反対した。

   インターネット上では「断固公務員になるべし」という意見が圧倒的だ。専門家に聞いた。

  • 公務員か民間か、女性学生は悩む(写真はイメージです)
    公務員か民間か、女性学生は悩む(写真はイメージです)
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女性なら産休育休時短も充実している公務員がおススメ

   話題になっているのは女性向けサイト「発言小町」(2019年11月15日付)に載った「公務員を辞退し民間へ、親に反対されました」というタイトルの投稿だ。

「私は現在大学4年生です。最近やっと地元の市役所の内定をもらうことができました。また、興味のある民間企業(教育関係の事務)の内定ももらっています。就活を始めた頃は事務職がやりたい程度しか考えておらず、安定しているから公務員を目指すか~という軽い気持ちで就活に励んでいましたが、就活を続けるうちに予備校や塾で働きたいと考えるようになりました」

   そこで、両親に2つの内定のうち「自分のやりたい仕事ができる民間に行きたい」と言うと、猛反対されたというのだ。

「内定をもらってからよく考えたのですが、どうしても市役所で働きたいという気持ちが薄いのです。地域に貢献という気持ちもなければ、市役所は色々な方が訪れますから、対人ストレスが多いと思います。自分が働くわけだし自分が行きたいところは自分で決めたいのです。でも、民間に決めると親と会うたびに何か言われるのではないかと考えて悩んでいます」

というのだった。

   この投稿に対しては、「せっかく公務員に内定したのにもったいない。安定しているから絶対に市役所に行くべきだ」という意見が大半だった。

「就活時期まで、公務員や事務員でいいやと思って、特にほかの資格や課程はとってないのですよね。だったら、突然の主旨変えに親が怒るのは当たり前です。リスクの多い民間企業より公務員のような安定した仕事の方が安全だと思うのが親心でしょう」
「あ~あ、やりがいに夢見出しちゃってますねえ。若いっていいですね。でも民間と公務員の違いは、ずばり公務員は不況に強いのです。企業だと、自社の利益が減ると、社員の首を平気で斬りますが、公務員は守られて安定した生活が送れます。景気を気にしなくていい。先日、市役所に行きましたが、市役所に勤めればよかった、としみじみ思いましたよ。私、60歳の民間パートですが」

   投稿者が女子学生であることから、将来、働きながら子育てをする際も公務員は圧倒的に有利だと強調する意見も目立った。

「民間を辞めてから公務員になった者です。女性なら、公務員のほうがずっと勤めるにはオススメです。産休も育休も時短やさまざまな制度がきちんとしています。よほどよい民間じゃないと家事や育児など、なかなか両立が難しい現実がありますよ」

   また、投稿者がやりがいを感じるという「教育関係」の仕事自体が、先細り産業だからオススメできないという指摘も目立った。

「教育業界は、離職率が高いのはご存じですか。それは先細り産業だからです。特に、予備校・塾が希望とのことですが、顧客の子供数は10年後に現在の4割減です。今後は経営統合の業種です。『安定』を甘く見ていませんか」
「民間の予備校で事務って楽しそう、と思っているのかもしれないけど、講師じゃなかったら大して子供との関わりもない。子供に関わる仕事が希望なら、教職免状とか取ってないと。これが『公務員で市役所』と『塾や予備校の教師』だったら、議論のしがいがあるが、『教育に携われる』という幻想をもっているのなら、市役所にいったほうがいいと思う」

「長い人生、何に生きがいを見出すかってすごく大事よ」

   こうした意見が7割を占める一方で、「自分の夢を追って民間に行くべし」と、応援エールを送る意見も3割ほどあった。

「そりゃあ、待遇だけで言えば公務員一択です。それは間違いない。でも長い人生、何に生きがいを見出すかってすごく大事ですよ。教育産業、私もしばらくいましたよ。非常にやりがいがあります。会社に住み込んでもいいと思うくらいでした。ただ私の場合は講師だったので、事務だとどういう仕事になるかわからないけど......。自分で選んだ仕事、人生。これが一番素晴らしい」
「親に言われること、それが何なのですか。自分で信念や志を持って自分のやりたいことをする、希望する職業に就くのですから、誰かに何か言われたところで気にする必要はありません。選んだ道は間違いではなかったと思ってもらえるように、何も言わせないように自分が選んだ道で成果を出せばいいだけのことです。市役所には早く断りを入れて、本当になりたいと思う人に席を譲ってあげてください」

   また、教育産業にもまだ将来性があるという声も。

「教育産業という面から言えば、子供や学生だけでなく、大人も含めた生涯学習へと転換していけば、なんとかなるでしょう。どんな新規事業をすれば会社が伸びていくかを考え、提言できるようになれば、あなたも素晴らしい仕事ができると思いますよ」

   また、公務員の人からもこんなエールが。

「公務員やっています。人生は勉強の連続です。大学までとちがって機転が効かないと、どこに行っても使い物にはならない。働くのは本人だから、いやいや公務員やっても他のメンバーに迷惑をかけるだけ。民間へ行きましょう。あなたには厳しい環境が必要だ。最初の会社で苦労するかもしれませんが、人生の勉強にはなる。ぜひ民間へ」

   J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、女性の働き方に詳しい、主婦に特化した就労支援サービスを展開するビースタイルの調査機関「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長に、この「公務員か民間企業か、どっちの内定を選択する?」論争の意見を求めた。

ユニクロだって斜陽産業といわれるアパレルを変えた

――今回の投稿に対する反応を読み、率直にどんな感想を持ちましたか?

川上敬太郎さん「まだ社会に出て働いたことがない段階で、どう選択すればよいのか悩むのは当然のことだろうと思いました。おそらくは、どのように選択してもうまくいく可能性もあれば、いかない可能性もあるはずです。そういう意味で、あらかじめ決められた正しい選択というものはないのだと思います。投稿者さんが、今の自分の中にある判断軸を用いて選択し、決断するしかありません」

――圧倒的に多くの人が、「せっかく安定している公務員の内定をもらったのに、不安定な民間企業に行くことはないではないか」と主張しています。また、特に女子学生(女性)の場合、産休・育休制度が充実している面からも公務員のほうが有利だと訴えています。こうした意見についてはどう思いますか。

川上さん「職場がなくなる心配がない点や、福利厚生が充実しているという面では、確実に安定しているのは公務員だと思います。ただ、やりがいや将来への展望、仕事から得られる喜びなど、精神面の安定という意味では、一概にどちらのほうが安定していると決められるものではありません。何が投稿者さんにとっての安定と言えるかは、投稿者さん自身にしかわからないことです」

――「公務員に断固なるべし」という意見の中には、女子学生が進みたいと望んでいる「教育業界」が、少子化により将来的に不況産業であることをあげている人が多くいます。こうした意見についてはどう思いますか。

川上さん「確かに少子化の影響を考えると、教育関係の市場は先細りの傾向にある業界だと思います。しかし、斜陽産業といわれたアパレル業界で驚異的な進展を遂げたファーストリテイリング(ユニクロ)社のように、厳しいといわれる業界でも業績を伸ばす企業はあります。一方で、伸び盛りと言われる業界でも、時代の変化の早さに対応しきれずに苦労する企業もあります。不況産業と言われるかどうかは、就職先を選ぶ上で判断材料の一つにはなると思いますが、必ずしもそれがすべてではないと思います」

――一方、女子学生に「民間に行くべし」と勧める意見の中には「長い人生、やりがいのある道に進むべきだ」「教育産業はやりがいのある仕事だよ」という人が何人かいました。こうした意見についてはどう思いますか。

川上さん「教育産業も含め、どんな仕事であっても、取り組み方次第でやりがいは見出せるはずです。だから、民間だからやりがいがあり、公務員だからやりがいがない、という決めつけが前提になっているとしたら、それは大きな誤りだと思います。

「自分の選択が正解であったと証明するために全力を尽くせ」

――ということは、教育産業にしろ、公務員にしろ、川上さんははっきりこっちの道に行けとススメないわけですね。女子学生はどうしたらよいと考えているのですか。

川上さん「回答者の意見の中には、投稿者さんの考えが甘いとか、はっきりとした民間に進みたいという強い意志も感じられないと批判する声が多くありました。しかし、まだ社会に出てもいない学生さんが、漠然としたイメージで判断し、しっかり現実を見ることができないのは当然だと思います。逆に、社会に出て何年も経った人で、明確なイメージにもとづき、しっかり現実を見て判断できていると言い切れる人がどれだけいるでしょうか?それだけ難しいことなのだと考えます」
「社会人と学生さんの最大の違いは、経験の有無です。経験がある人は自分なりの判断軸を持つことができるようになります。むしろ、学生さんが自分なりの判断軸をしっかり持てない段階で就職先を選ばなければならない現状にこそ問題があると思います。今の教育システムと就職との連結部分に、まだまだ改善の余地があるということではないでしょうか。
投稿者さんにアドバイスするとしたら、こう言いたいと思います。就職先に限らず、人生には何度も選択する機会があります。今後は結婚や転職などの選択に悩むでしょう。それらすべてに言えることは、用意された正解はないということ。それが学校の勉強との最大の違いです。判断すべきは、唯一、その場その場における最適解です。何が今の自分にとって最適かを考え抜き、悩み抜いて出した結論こそが、あなたの正解になっていくのです」
「そして、一度選択したら、今度はその選択が正解であったと証明するために全力を尽くすことです。選択を失敗したかな、と後悔することもあるかもしれません。その時は、その失敗から学び、より成長した自分になるための糧とすればよいのです。公務員か教育産業か、社会に出る時の最初の選択ですべてが決まるなんて幻想です。社会には、まだ見ぬたくさんの可能性に満ち溢れています。大切なのは、さまざまな経験を積んで視野を広げ、社会の中に可能性を見出す目を養うことだと思います。
もし今、内定を得ている二つの道がどうしても決め手に欠けるのであれば、第三の道として、別の新たな企業の門をたたいてみるのも一つの方法だと思います。それもまた、社会の中に潜む、まだ見ぬ可能性の一つです。ぜひ納得いくまで行動し、考え抜いていただきたいと思います」

(福田和郎)

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