2020年 4月 9日 (木)

【どこゆく子育て】少子化対策、調査手法に課題アリ! 子どもが欲しい夫婦は多い、女性の「意識」の変化を追え(鷲尾香一)

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   「21世紀成年者縦断調査」は、特定の個人を追跡調査している珍しい調査だ。厚生労働省が実施している。通常のアンケート調査は、特定の個人を追跡調査することはない。これは政府が実施するアンケート調査でも同様だ。

   この追跡調査によって、結婚して、子どもを持った女性が、同じ企業で継続して働くためには、企業に育児関連の制度があり、その制度を利用しやすい企業の雰囲気が重要であることが明らかになった。

  • 子どもは欲しいけれど……
    子どもは欲しいけれど……

子どもが「もちたい」夫も妻も70%超す

   21世紀成年者縦断調査は、2012年10月末時点で20~29歳であった全国の男女および配偶者を対象調査に、対象となった男女の結婚、出産、就業などの実態および意識の経年変化の状況を継続的に観察する。今回で7回目となり、対象者の年齢は26~35歳となっており、6900人を集計した。

   2012年の第1回調査時の独身者が、今回の調査(6年後)に結婚した割合は、男性で25.6%、 女性で40.6%だった。

   第1回調査時に独身者は、「結婚に意欲がある」「どちらともいえない」「結婚の意欲はない」を選択回答しており、「結婚に意欲がある」と回答した男性の35.2%、女性47.7%が結婚した。

   これは結婚した割合が、「どちらとも言えない」では男性11.2%、女性20.7%、「結婚意欲なし」では男性7.2%、女性12.0%だったことを比べると、倍以上の成婚率となっている。

   6年間で子供が生まれた割合は62.5%。第1回調査時に夫婦だった者は、子どもを「もちたい」「もてなくてもかまわない」「子どもは欲しくない」を選択回答しており、実際に子供が生まれたのは、「もちたい」と回答した夫74.3%、妻73.4%、「もてなくてもかまわない」と回答した夫50.0%、妻54.5%、「子どもは欲しくない」と回答した夫19.5%、妻22.4%となっている。

   「もちたい」と回答した夫婦では、子どもが生まれた割合は、「子どもは欲しくない」と回答した夫婦の3倍以上になっている。

「職場の雰囲気」はよくなっている!?

   5年間に子どもが生まれた夫婦で、妻が出産前の会社と同じ会社に勤めている(同一就業継続)状況を見ると、妻の就業形態で利用可能な育児休業制度が「制度あり」が80.4%、「制度なし」が14.3%と出産後の「同一就業継続」の割合が圧倒的に高い。

   このことからも、共働き夫婦が子どもを持ち、妻が継続して出産前の会社に勤めるためには、育児休業制度の有無が重要な役割を果たしていることが明らかになっている。

   ただ、育児休業制度の利用にはキーワードがある。「職場の雰囲気」だ。5年間に子どもが生まれた夫婦で、妻が出産前の会社と同じ会社に勤めている(同一就業の継続)ケースでは、育児休業制度の利用にあたっての職場の雰囲気を「利用しやすい雰囲気がある」と感じていた人の84.4%が、また「利用しにくい雰囲気がある」と感じていた人の73.7%が同じ会社に就業し続けており、「利用しやすい雰囲気」が重要なことがわかる。

   ちなみに、「制度がない」では同一就業継続は14.3%でしかない。

   もちろん育児休業制度の利用には、企業側の努力や同じ職場、上司などの理解も必要になる。2002年と2012年の「職場の雰囲気」についての調査では、「利用しやすい雰囲気がある」が56.3%から69.6%に向上している。

    一つひとつの職場を見れば、「上司の理解がない」「子どもをもつ女性ともたない女性との関係が冷めている」などと、そんな声も聞こえてくるが、だからといって制度が進んでいないわけではない。

   こうしたアンケート調査は、「その時点」における意識調査が基本になっているものがほとんどで、その後、意識の変化などを時系列に追跡調査しているものは少ない。それだけに、この「21世紀成年者縦断調査」は貴重な調査だと言えよう。この調査は少子化対策のために行われていることを考えれば、なおさらだ。追跡調査の必要性はここにある。

   「21世紀成年者縦断調査」が現在の出産適齢期の人たちの考え方を理解し、出産、子育てに対する支援を行う上での参考となり、少子化対策の一助となることを期待したい。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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