2020年 4月 9日 (木)

日経新聞「米国では年収1400万円は低所得」が大炎上 日本は貧乏になっているのか? それでも幸せか?

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   日本経済新聞の「年収1400万円は低所得」というショッキングな見出しの記事が話題になっている。日本では賃金や物価が上がらない負の連鎖が深刻になり、どんどん貧乏になっているという警鐘を鳴らす記事だ。

   米国サンフランシスコでの話だが、この1400万円に比べて日本では世帯平均年収は約550万円。カチンときた読者が多いが、「そのとおり」と共感する人も。ネットでの賛否の声を見ると――。

  • 30年間、物価・家賃・賃金が変わらない「奇跡の街」東京(写真はイメージ)
    30年間、物価・家賃・賃金が変わらない「奇跡の街」東京(写真はイメージ)

新興国の憧れの「出稼ぎ先」が今や人材流出国に

   話題になっているのは、日本経済新聞オンライン版(2019年12月12日付)に載った「 『年収1400万円は低所得』人材流出、高まるリスク 安いニッポン(下)」という記事だ=下の写真参照

   12月10日付から始まった1面企画「安いニッポン」の3回目。この企画は「モノやサービス、賃金など日本の価格が安いことが鮮明になった」として、日本経済の凋落を告発するシリーズだ。3回目では、かつて新興国の人々が「出稼ぎ先」として憧れた日本が地盤沈下。2007年の年収を100とすると、2017年には日本99と微減だが、ベトナム145、中国・上海176、タイ210と軒並み急成長して日本だけが一人負けの状態。

   また、この記事を取り上げたテレビ朝日「モーニングショー」(12月16日放送)の調査でも、OECD加盟国の実質賃金の変化を見ても、1997年を100とした場合、2016年にはスウェーデン138.4、オーストラリア131.8、フランス126.4、イギリス125.3、デンマーク123.4、ドイツ116.3、アメリカ115.3とみな増加しているのに、日本だけが89.7と減っている。「どんどん貧乏になっている」というわけだ。

「年収1400万円は低所得者」という見出しの日本経済新聞(2019年12月12日付オンライン版)
「年収1400万円は低所得者」という見出しの日本経済新聞(2019年12月12日付オンライン版)

   いまや、日本の優秀な人材が海外に出稼ぎに行く時代になったという。そして、読者にショックを与えたのが、次の記述だった。

「米住宅都市開発省の調査では、サンフランシスコでは年収1400万円の4人家族を『低所得者』に分類した。厚生労働省によると、日本の2017年の世帯年収の平均は約550万円、1000万円を超える世帯は10%強に過ぎない」

   つまり、もはや日本人のほとんどが米国では「貧困層」に入るほど落ちぶれてしまったといわんばかりの論調だった。ただし、「年収1400万円は低所得」という強烈な主見出しは、新聞紙面では中見出しの一つで、紙面の主見出しは「香港なら2倍稼げる」だった。

「日本はスゴイ!というテレビ番組、もうやめようよ」

   インターネット上では、この記事について「#年収1400万円は低所得」のスレッドが立ち、賛否両論が激しく戦わされている。

   まず、日本経済新聞の言うとおり「日本の凋落を直視すべきだ」という意見から――。

「『日本スゴイ!』でこの50年間きていたけど、1995年ぐらいでやめるべき話だった。バブル崩壊から就職氷河期がきて、値上げをすると企業にクレームが殺到する。安物には大行列ができる惨めな光景に、アジア諸国からも『日本は大丈夫か?』と心配されていたのに、日本はスゴイ!というテレビ番組ばかり。『cool japan』『和風総本家』『世界 ニッポンいきたい人応援団』『世界が驚いたニッポン!スゴ~イデスネ視察団』...。あ~あ恥ずかしい」
「記事の言うとおりだ。東証一部上場企業に就職したアジア系学生から『日本人は競争力が低いから楽勝だった』と聞いたことがあるな」
「シンガポールと香港の一人当たりGDP(国民総生産)は、2000年代の初めには日本の6割程度だったが、現在、シンガポールは日本の1.5倍、香港は日本の1.2倍。韓国と台湾にも抜かれると言われている、絶賛衰退中の日本ってスゴイ!」
「メンドクセーな、もう後進国でいいってば。後進国のほうが得じゃん。国際機関への拠出も減らして、韓国が返上したWTO(世界貿易機関)の後進国優遇を日本に認めてもらおう!」
「まったく当然のことだ。この30年間賃上げもせず、物価も上がらず、インフレがまったくないのだから所得も物価も凍結されたままだ。その原因は労働組合が機能不全に陥って、賃上げ努力をしなくなったこと。経営者はこれ幸いと内部留保をため込み、商品の値上げをせずにやってきた。経営者は絶対冒険などしない。技術開発も商品開発もいらない。少し売れれば儲かるから。外国から見ればこんなおめでたい国はない。何しろ日本に来れば物価は安いし、いくらでも買える。こんな状況から脱するには賃上げしかないのだが、火中の栗を拾う労働組合幹部がいないから経営者の天国が続く」

「経済大国の日本なら5万円の寿司を出せ」と怒る中国人

   確かに日本の物価は安すぎて、逆に海外は高いという声が多かった。

「3年前にイタリアに行ったら、ビール2本とパスタで4000円!ランチが4000円ですよ!」
「スウェーデンでは、若い女性が歩きながら日本のおにぎりを食べていた。1個400円。アメリカではラーメン1杯が2000円だった」
「海辺の観光地である地元の海鮮丼は2500円で売っている。地元民は高いから食べないが、中国の観光客が『安い、安い』と食べている。その一人が『上海の寿司レストランでは一家で3万円したから、日本では5万円くらいの寿司を食べたかったのに、なんで2000円だ』と怒っていた。通訳が『ここらへんに5万円もする寿司屋はないです』と弁解しても、『経済大国の日本だろ? そんなことあるか!』と信じてもらえなかったそうだ」
「地方です。お弁当屋さんが2社いるが元気がない。小売はせずに企業にお弁当を届けている。1個380円。お弁当箱を回収し、洗って翌日の準備。ガソリン代や水道代が上がっているのにお弁当代は値上げできない。県外から進出した大手スーパーではお弁当1個198円。キツイな。『少し値上げしたらどう?』と言ってもライバルがいるし、そうはいかないらしい」

同じ加州でも農民は210万円、保育所職員は250万円

   ところで、日本経済新聞の記事がサンフランシスコの「低所得者の基準」と、日本の平均年収を比較したことには批判と疑問の声が殺到した。

「シリコンバレーを抱えるサンフランシスコは極端な例だ。世界中から優秀なエンジニアが集まり、20代若手でも年収10万ドル(1100万円)以上は珍しくない。不動産価格を中心に物価も跳ね上がっているから、家族4人世帯年収1400万円程度では余裕のある暮らしはできないのかもしれない」
「サンフランシスコは全米一リッチな街。地域で比較するなら、日本全体ではなく、東京都港区の人たちの年収と比べるべきでしょう」

といった声に代表される。

   じつは、「サンフランシスコでは年収1400万円は低所得」という基準に着目したのは日本経済新聞が初めてではない。英国民にとっても驚きだったようで、BBC放送が2018年7月20日付日本語オンライン版「年収1300万円でも『低所得』 米サンフランシスコの実情」で、次のように報道している。

「サンフランシスコでは年収が11万7400ドル(約1300万円)の家庭が『低所得層』に分類される。なぜこんなことがあり得るのか。ITなどテクノロジー分野の中心地になり、好景気のけん引役となるなか、多くの高所得者が同市に住むようになった。都市部に住む正社員の年収は2008年から16年にかけて26%増加し、2016年には年収の中央値が6万3000ドル(約710万円)に達した。......それにつれて、地価も高騰した」

というのだ。

   ただし、米国全土を見ると、4人家族の3分の2近くの年収がサンフランシスコで「低所得」とされる11万7400ドル以下だ。また、米国人の12%の年収が「貧困水準」といわれる2万5100ドル(約274万円)を下回っている。さらに、サンフランシスコと同じカリフォルニア州の農業従事者の平均年収が1万8500ドル(約210万円)、保育所職員が2万2300ドル(約250万円)であると指摘されている。

   やはり、日本経済新聞は、非常に特別な地域の年収と日本全体を比較したようだ。

東京は30年間、収入・物価・家賃が変わらない奇跡の街

   さて、ネット上では「日本経済の凋落」と「年収」や「幸せ」の問題でも議論が沸騰した。

「個人の収入だけに目を向ける視野が狭い。日本は昭和30年代の高度成長期以降、社会資本を整備してきた。道路を作ったり、トンネルを掘ったり、新幹線を通したり。電気、ガス、水道の整備などなど。それが原因で国の借金が1100兆円をこえている側面があるが、ボクらは今その恩恵を受けている。経済成長が著しいという中国の人が日本に来て爆買いするのは、中国国内で売っているものが信用できないから。つまり、社会資本が整備されていないからだ。ボクは日本に生まれてよかったと思う」
「同意。典型的な例がブータンだよね。決してお金持ちの国ではないが、多くの国民が『幸せ』を感じているなら、それでいい。『幸せ』なんて相対的なものだよね」
「医療保険が充実している日本に比べ、米国は病気になると大変だよ。オペして数日入院したら、シレッと100万円以上だよ。私は足を骨折したけど、自分一人で治した」
「サンフランシスコでは年収1400万円以上あっても悠々自適に暮らしているわけではない。『ワーキングホームレス』という、仕事があっても住居費用が高すぎてホームレスになる人が、シリコンバレーにたくさん発生している」
「私は米国に行って、銃に怯えながら生活しようとは思わない」

   そして、こんな意見も――。

「国同士の経済力の比較と個人の経済力の比較は難しい。よく言われるのは、ニューヨークでは30年前と比べて収入は2倍、物価は3倍、家賃は10倍になったということ。はやりのIT分野の人がどんどん外からくるから家賃が上がる。一方、東京は30年前から収入・物価・家賃はそんなに変わらないという奇跡の街だ。日本経済新聞は、これを個人が貧乏になったというけれど、私にはよくわからないというのが正直な感想だ」

(福田和郎)

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