2020年 4月 9日 (木)

先入観を捨てた 「MAZDA2」を買った マツダを貫くクルマへの「思想」にやられた!(大関暁夫)

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   個人的な話で恐縮ですが、2019年は還暦を迎えた年でした。暦が一巡してゼロに戻るということから還暦と呼ぶわけですが、再出発、ゼロスタート...... など。これを期にいろいろ新たな気持ちで取り組んでみようかと思ったりするものであります。

   そこで還暦を前にした今秋、クルマの運転はあと10年という前提で、「最後の」新車への買い替えを決断しました。

  • マツダの思想(画像は、MAZDA2のホームページ)
    マツダの思想(画像は、MAZDA2のホームページ)

「オッ、これはなんだ!」という衝撃

   じつは私、大昔から自他ともに認める大のクルマ嫌いでして、とにかくクルマは走ればいい、燃費が良ければなお良し、というのがこれまでの私のクルマ選びの基準でした。

   10年前にフツーのガソリン車からハイブリッド車に乗り換えたのも、そんな理由からです。今回も、当初は燃費が良く走ればいいを基準として新車選びを始め、ネットで下調べして絞りこんだカーディーラー3社を回り試乗しました。

   選んだのは、現在乗っているクルマの延長でハイブリッドの先駆者であるトヨタ、EV時代をにらんで電気とガソリンのミックスが売りの日産、クリーンディーゼルでエコカーに一石を投じているマツダの3社。どれもエコ、高燃費です。

   乗ってみると、トヨタは馴染みある想定どおりの乗り味。日産の主に電気で動くという最新ハイブリッドカーの乗り心地も決して悪くないものでした。そして最後に話のタネにと思ってマツダに行きました。

   マツダのスタッフからは、「まずはガソリン車に乗ってみていただき、その後ディーゼルとの違いを体感してください」との話で、言われるままにガソリン車に乗りました。スイッチを入れて走り出した途端に、「オッ、これはなんだ!」と私に中でちょっとした衝撃が走りました。

   「すごく運転している感があるというのか、クルマとの一体感があるというのか、運転感覚がびっくりです」。マツダ車に乗ったのは初めてだったのですが、その時クルマとのコミュニケーションとはこういうことかと、決して大げさな表現でなく感じたのです。

   家に戻り、さっそくマツダについて調べました。1980年代に企業規模を顧みずトヨタ、日産に正面から戦いを挑んで破れ、90年代は瀕死の状態に。外資の米フォードの支援を受けて復活を遂げて現在に至る、というのがクルマ業界に不案内な拙ない私の理解でしたが、そのクルマづくりの思想までは知りませんでした。

「インコース高めのストライク」なクルマづくり

   マツダはフォードの傘下にあった時代も、クルマづくりでは自社の思想を曲げない、「最高で超一流、最低でも一流」を合言葉に、「一括企画」や「全車種技術統一」などでコスト削減を図りながらも、高い性能と品質にこだわり乗り手本位のクルマづくりは絶対に譲らない、そんな精神で突き進んできたと知りました。

   その結果として見事な復活を遂げたマツダの現在のコンセプトが、「Be A Driver」。要するに「真のドライバーになれ!」ということであり、燃費にばかり気を取られ、クルマの運転はつまらないもの、単なる移動手段に過ぎないと思い続けていた私は、見事にこのコンセプトに仕留められてしまったということなのです。

   それにしても、長年クルマ嫌いを貫いてきた私がハマってしまうクルマづくりというものは、いったい何であったのか――。

「マツダ ~心を燃やす逆転の経営 / 山中浩之著 日経BP社」の中で、金井誠太マツダ前会長がマツダのクルマづくり戦略について、非常にわかりやすく話しています。
「まだ業績回復途上にあった2005年に、マツダの目指すクルマづくりをプロ野球広島カープのオーナー企業でもあったことから野球にたとえて『インコース高めのストライク』と表現し、社内に徹底しました。それが今に至るマツダのクルマづくりの基本です」

   では、「インコース高めのストライク」とは、どういうことか――。

「トヨタはど真ん中のストライクで勝負をする企業であり、ライバル日産も同じ球種で真っ向勝負を挑むライバルです。ところが1980年代のバブルに浮かれたマツダも、トヨタ、日産と同じ『ど真ん中ストライク』で勝負しようとして、大失敗するわけです。戦略が身の丈に合っていなかった。その反省に立って、マツダはど真ん中から距離を取ることで、真っ向勝負は避ける。すなわち同じストライクでも個性ある球で勝負をするわけです。かつ、その個性が車種ごとにバラバラにならないよう、バッターの胸元をえぐるようなインパクトのあるクルマづくりという意味で『インコース高めのストライク』と表現したのです」

ランチェスター戦略を地で行った復活劇

「そして世界一のクルマを作るために社員が皆、『インコース高めのストライク』を意識しながら汗をかく。結果として、たとえば理想の運転姿勢を考え、ハンドルの中心線とドライバーの中心がピタリと合って左右均等に足を開くと自然とペダルに足が乗る。そうなると、タイヤを前に出さないと右足が置けないから、プロットフォームから見直すことになる、みたいな議論と試行錯誤があって、ドライバーの快適さを優先して作られた第6世代の車種が生まれ、以降の飛躍的な売り上げ増加につながっているのです」

   規模、資金力で劣る企業が最大手をマネしても負けは見えている、というランチェスター戦略を地で行ったような復活劇です。中小企業にも大いに参考になるでしょう。

   個人的には本件でもう一つ、先入観というものの怖さを改めて思い知らされました。クルマの運転はおもしろくないもの、つまらないものという思い込みが長年私に誤った認識を植え付けていたということ。何事も先入観を持たずに、常にゼロベースで考え、立ち向かうことの大切さを、還暦という人生の暦がゼロに戻るその年に教えられた気分です。

   ちなみに、クルマの買い替えですが、クルマ選びの基準は燃費優先ではなくドライバーズ感覚優先だとの新たな基準で、マツダのガソリン車に決めました。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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