2020年 4月 9日 (木)

【日韓経済戦争・番外編】ラグビー日本代表の具智元選手 父親が韓国紙記者に「息子の記事を削除して」と頼んだ理由は?

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   「ONE TEAM」が2019年の流行語大賞にもなり、日本中を沸かせたラグビー日本代表。「多国籍」のチームにあって韓国人の具智元(グ・ジウォン)選手も大活躍した一人だ。

   そのグ・ジウォン選手の父親が、息子が活躍する記事を書いた韓国紙記者に「記事をネットから削除してくれませんか」と頼んでいた。いったいなぜか、韓国紙で読み解くと――。

  • 日本代表感謝パレードでのグ・ジウォン選手(2019年12月11日撮影)
    日本代表感謝パレードでのグ・ジウォン選手(2019年12月11日撮影)

「息子の記事は日韓双方から非難されている」

   中央日報スポーツ担当のチョン・ヨンジェ記者が、ラグビー日本代表・具智元(グ・ジウォン)選手の父親から電話を受けたのは2年前のことだった。チョン記者は、その時の模様を「コラム:ラグビー日本代表の具智元」(2019年11月30日付)でこう伝えている。

「記者様、本当に申しわけないのですが、記事をインターネットから削除することはできないでしょうか。息子のジウォンがあまりにも負担を感じています」
「突然の電話に当惑した。電話をかけてきた具東春(グ・ドンチュン)先生は、2017年8月13日付の中央日報に掲載された『父は韓国代表、息子は日本代表、ラグビー家族』という記事に出てくる、その『父』だった。12年間にわたりラグビー韓国代表でプレーし、日本のホンダヒート(編集部注:ホンダの前身)でプレーしたグ先生は、2人の息子をラグビー選手に育てた。長男の智充(ジユン)と次男のジウォンはともにホンダに所属し、ジウォンは日本代表に選ばれた」

   韓国はサッカーや野球は盛んだが、ラグビーは不人気なスポーツ。ラグビー人口は日本の100分の1といわれ、社会人チームも3つしかない。ジユンとジウォンの兄弟は小学生の時からラグビーが大好きだった。

   そこでドンチュンさんは「いい環境でラグビーをやらせてあげたい」と中学2年の兄と小学6年の弟をニュージーランドに留学させた。さらに、日本でのプレー経験を持つドンチュンさんは、大分県佐伯市への一家移住を決断した。

   ジウォンは兄とともに大分県の日本文理大学付属高校から拓殖大学に進み、2017年にトップリーグのホンダに入った。そして、身長184センチ、体重122キロのタンクのような体格を生かし、フォワードの一人として日本代表入りを果たした。

ラグビー一家のサクセスストーリー

   中央日報のチョン記者は、そんなラグビー一家のサクセスストーリーを記事にまとめたのだった。その記事をなぜ父親のドンチュンさんは削除してくれと頼んだのか。中央日報が続ける。

「グ先生は『記事には、私たちを励ましてくれるコメントも多いが、ジウォンに悪口をいうコメントも多い。日本語に翻訳されて日本のインターネットに掲載された記事にも悪性の書き込みがあり、ジウォンが少し衝撃を受けている』と話した。韓日両国で非難を受けているので、何とか記事を削除できないかという頼みだった」

   チョン記者はこう助言した。

「記事のファクト(事実)が違っているか、名誉毀損の余地がなければ書き込みのために記事を削除することはできません。(韓日両国からの非難は)一度は経験することになるのなら、堂々と解決するのがよいと思います」

   日本でもプレーしたことがあるドンチュンさんは、チョン記者の助言に感謝しつつ、こう語ったという。

「ほとんどの日本人は、政治に大きな関心を向けるより生業に従事して暮らしています。夢に向かって正直に汗を流している選手たちが、政治のために委縮しなければいけない現実が残念です」
W杯試合で円陣を組むグ・ジウォン選手(2019年9月撮影)
W杯試合で円陣を組むグ・ジウォン選手(2019年9月撮影)

「日本のために最後までプレーしてくれてありがとう」

   それから2年。2019年秋、日本はラグビーW杯で盛り上がった。グ・ジウォンはニュージーランド、サモア、トンガなどラグビー強国の選手たちと共に日本代表メンバーに選ばれた。スクラム最前列で相手と直接ぶつかり合う「3番」(タイトヘッドプロップ)のポジションだ。スコットランド戦ではわき腹を痛めながらも、強い精神力で自分の任務を遂行。史上初の8強入りに貢献した。

   そのグ・ジウォンの活躍ぶりを、韓国メディアは一斉に称賛した。スポーツソウル(2019年10月5日付)「『日本の100分の1?』ラグビー日本代表・具智元の母国・韓国のラグビー事情」が誇らしげに、サクセスストーリーとともにこう伝える。

「ラグビーW杯が日本全国を熱狂の渦に巻き込んでいる。プールA最大の強敵アイルランドと対戦し、19-12で勝利を収めた。そのアイルランド戦で、日本代表の3番を背負って先発出場した韓国生まれの選手がいる。グ・ジウォン25歳。ソウルで生まれ、中学3年の頃に日本へと渡った。日本の高校、大学でラグビーを続け、2017年からはホンダに所属している。彼の父親グ・ドンチュンもラグビー韓国代表として活躍した人物。つまり、グ・ジウォンはラグビー・サラブレッドであるわけだ」

   さて、こんな韓国メディアのグ・ジウォンへのエールを見つつ、中央日報のチョン記者は、こんな感慨を述べている。

「日本は準々決勝で世界最強の南アフリカに3-26で敗れたが、最後まであきらめない闘志を見せ、大きな拍手を受けた。熱気はまだ冷めていない。東京を訪れてみるとさらに実感した。放送と新聞・雑誌では絶えずラグビー代表チームの話が出てくる。グ・ジウォンに対する一部の非難も賛辞に変わった。『日本のために最後までプレーしてくれてありがとう』『具選手を見て大きな感動を受けました』という反応が多かった。グ・ジウォンもインタビューで『(韓日)両国から応援してくれるのでうれしい』と語った」

   そして、日本のラグビー熱を羨望の目で見つつ、こう結んでいる。

「『第2のグ・ジウォン』が出てきて、日本代表でなく韓国代表を引っ張ってくれればどれほどよいだろうか」

(福田和郎)

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