2020年 4月 9日 (木)

【日韓経済戦争・番外編】米軍「イラン司令官暗殺」にすくみあがった北朝鮮 金委員長は「斬首作戦」怖さに雲隠れか 韓国紙で読み解く

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   イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官の暗殺事件をめぐり、中東でイランと米国が一触即発!?「第三次世界大戦」の危機が高まっている。

   その一方で、つい最近まで東アジアで爆発寸前の地政学的危機の元凶だった国が急に大人しくなった。北朝鮮である。

   金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が、米国の「斬首作戦」といわれる暗殺の手際のよさを見せつけられて、「すくみあがっている」と韓国メディアは大はしゃぎ状態だ。韓国紙で読み解くと――。

  • かつては手と手を取り合ったトランプ大統領と金正恩委員長(労働新聞ウェブサイトより)
    かつては手と手を取り合ったトランプ大統領と金正恩委員長(労働新聞ウェブサイトより)

米国のイラン司令官暗殺は北朝鮮へのみせしめだ

   「斬首作戦」とは米軍と韓国軍が密かに計画しているといわれる、有事の際の北朝鮮・戦争指導部の「排除作戦」。具体的には、金正恩委員長の「暗殺作戦」のことだ。

   昨年(2019年)暮れ以来、「衝撃的な行動に出る」「クリスマスプレゼントに何を選ぶかは、完全に米国しだいだ」などと、盛んに米国を挑発し続けてきた北朝鮮が、米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を2020年1月3日に暗殺したとたん、にわかに大人しくなった。この「異変」を韓国紙が一斉に報じている。

   朝鮮日報(2020年1月6日付)「米国の斬首作戦に沈黙する北、金正恩委員長は5日間外出せず」は、米国のイラン司令官暗殺は北朝鮮へのみせしめだとして、皮肉っぽくこう伝えている。

「北朝鮮の金正恩委員長は昨年12月31日に幕を下ろした朝鮮労働党中央委員会全員会議を最後に今なお公の席に姿を現していない。金正恩氏は中央委員会全員会議で核とミサイルのモラトリアム(試験・発射の猶予)破棄をちらつかせ、『対米正面突破戦』を宣言した。しかしその直後に米国がソレイマニ司令官を『斬首作戦』により殺害したため、これが北朝鮮にかなりの心理的圧力として作用しているとの見方もある」
「米国は無人攻撃機(ドローン)MQ9リーパ-を使ってソレイマニ氏を殺害したが、韓国軍周辺では『これは金正恩氏が今姿を隠していることと無関係ではない』との見方もささやかれている。米軍はソレイマニ氏の位置を事前に把握してピンポイント攻撃を行ったのではなく、その動きをリアルタイムで米国本土から監視し、最適な時期に攻撃を行う方法を取った」

   そして、ソレイマニ氏暗殺に使ったのと同じドローン、追跡システムを在韓米軍も運用しており、韓国の軍、情報機関と協力しあって、金正恩委員長を常時追跡しているという。必要であればいつでも攻撃が可能になるのだ。

人工衛星とドローンで標的把握能力が格段に向上

   朝鮮日報が続ける。

「韓国統一研究院のチョ・ハンボム研究員は『(ソレイマニ氏の暗殺は)米国が金正恩氏の動きを、手のひらを見るように把握していることを意味するため、金正恩氏は極度の恐怖を感じているはずだ』と指摘する。韓国統一部のあるOBは『金正恩氏は今後外部での活動を自制する可能性が高い』と予想した。父の故・金正日(キム・ジョンイル)総書記も米国がアフガニスタン(2001年)とイラク(03年)を攻撃した際、1~2か月にわたり活動を中断した」
「韓国の国立シンクタンクのある関係者は『ソレイマニ氏の殺害は米国の斬首作戦能力を北朝鮮に誇示したものであり、これでは北朝鮮としても軍事行動を取りにくくなるだろう』とする一方、『中長距離ミサイル発射や核実験再開の動きを示唆する程度の軍事挑発に乗り出す可能性は考えられる』と予想した」

   中央日報(1月6日付)「目の前で見た米国のドローン斬首作戦...金正恩委員長は衝撃大きいはず」もこう伝える。

「北朝鮮の金正恩委員長が新年早々『障害物』にぶつかった。米国が3日(現地時間)、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官をドローン攻撃で除去したからだ。今回の作戦は北朝鮮が神経質な反応を見せてきた『斬首作戦』の典型的な事例だ。韓国政府当局者は5日、『米国はソレイマニ司令官除去を通じて、外交的に解決しなければ軍事的オプションを使用する可能性があることを明確に示した。北は自国にも似た状況が発生する可能性がないか懸念しているはずだ』と話した」
「北朝鮮は金委員長の身辺保護を大幅に強化すると予想される。国家安保戦略研究院のイ・ギドン研究委員は、『過去に米国が他国に軍事行動を見せれば、北の最高指導者は公開行事に姿を現さず、しばらく潜伏することが多かった。米国が直ちに北に軍事力を使用する可能性は低いが、金委員長の立場では心理的な衝撃を受けた可能性が高い』と述べた。白馬に乗って白頭山を登るなど大胆な公開活動をしてきた金委員長の動きが萎縮することもあるということだ」

政治的危機を「斬首作戦」で乗り切るトランプ大統領

「斬首作戦」に金正恩委員長は衝撃を受けたと報じる中央日報(2020年1月6日付)
「斬首作戦」に金正恩委員長は衝撃を受けたと報じる中央日報(2020年1月6日付)

   そして、朝鮮日報(1月6日付)は「社説:米国のイラン軍司令官斬首作戦、北はデッドラインを越えるな」で、北朝鮮にこう警告を発している。

「ソレイマニ司令官殺害は、敵司令官の動きをリアルタイムで追跡し、外科手術的に除去する、まさに『斬首作戦』そのものだ。過去には斬首作戦の成功率は決して高くなかった。標的の移動経路や隠れ家などを正確に把握するのが難しかったからだ。ところが今米軍は人工衛星とドローンによって標的の動きを把握する能力を格段に向上させた。米メディアもドローンの操縦士らが標的を追跡し『忍者爆弾』を発射したと伝えている」

   そして、トランプ大統領をなめてはいけないと、北朝鮮にこうも指摘する。

「今年は大統領選挙を控え、また弾劾によって追い込まれていることもあって軍事行動に乗り出す可能性が高い。昨年末に米下院で弾劾に向けた調査が行われていた際には、イスラム国の指導者を斬首作戦によって殺害し、政治的な危機を乗り越えようとした。トランプ大統領は大統領選でイラン問題と同じく対北朝鮮政策の失敗も追及される可能性がある。トランプ大統領によるイランに対する斬首作戦は、米国防長官が北朝鮮に向け『今夜にでも戦う準備ができている』と警告してからわずか数時間後に実行された」

   社説では最後に金正恩氏に、

「北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射などで米国に直接『核攻撃を行う』と脅迫し、これがトランプ大統領の選挙運動に悪材料となれば、トランプ大統領がどのような行動にでるか予測がつかない。金正恩委員長はトランプ大統領を単なるほら吹きと考えているかもしれないが、選挙を控えたトランプ大統領の行動は軽々しく判断すべきでない。絶対にデッドラインを越えてはならない」

とアドバイスしている。

   金正恩氏は「衝撃的な行動に出る」と米国を脅してきたが、それ以上に「衝撃的な行動」に出かねないのがトランプ大統領だというわけだ。

(福田和郎)

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