2020年 3月 30日 (月)

超優良「BtoB」企業なのに知名度なく...... 採用難の時代に打った「採用広報」という手段

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   NOK株式会社は、国内の多くの自動車メーカーに採用されている「オイルシール」や、スマートフォンなどに使われる「フレキシブルサーキット」など、私たちの生活には欠かせない製品に使われる部品※を製造している。そんな世界トップクラスの技術力を有する同社にも、悩みが......。

   どれも華々しい実績だが、典型的な「BtoB」企業のため、これまで会社名はあまり知られてこなかったのだ。

   そこでNOKは採用活動の強化のために、学生に向けて知名度アップに乗り出した。同社人材企画部・採用企画課の池尾並恵さんと三宅一彰さんに、最近の採用活動やコミュニケーション施策について話を聞いた。

※ オイルシールとは...... 自動車のエンジンやギヤードモータなどに使用され、主に回転軸端部からの油漏れや、外部からのほこりの侵入を防止する部品。
※ フレキシブルサーキットとは...... 薄く、軽く、やわらかい回路基板で、携帯電話などの電子機器の小型化や軽量化、高性能化に貢献している。
NOK採用企画課の池尾並恵さん(左)と三宅一彰さん(右)
NOK採用企画課の池尾並恵さん(左)と三宅一彰さん(右)

売り手市場なので「製造業に来てくれる学生が他の業界に行ってしまう」

―― 就職活動での学生の会社選びについて、最近はどのような傾向がありますか。

三宅一彰さん「以前は、買い手市場ということもあり、学生がたくさんの企業にエントリーして、企業説明会に参加したり面接を受けたりという活動が主流でしたが、最近は求人数が多いこともあり、自分の働きたい業界や好みに絞る学生が増えてきていますね」

―― そんななか、NOKではどのような採用活動をされてきたのでしょうか。

三宅さん「若手社員を出身校やその研究室に派遣して、NOKのことを紹介してもらう『リクルーター活動』が中心となっています。特に技術系(理系)の学生は、自分の研究が企業でどう活かせるかという観点で、会社選びをする傾向があります。同じ研究室にいた卒業生から話を聞くことで、NOKを身近に感じてもらい、会社や仕事を十分理解したうえで、採用につながるケースが多くなっています。併せて、広く学生にアプローチできて、会社の社風を伝えることができる、企業説明会からの採用活動にも力を入れています」

―― そういった従来の採用方法に、限界を感じることもあるそうですね。

池尾並恵さん「NOKはBtoB企業で、テレビCMなどの広報活動もしてこなかったので、世間での認知度はゼロに近いんです。ましてや学生は、NOKのことなどまったくといっていいほど知りません。いくら本業の国内・海外シェアが高く優良企業であったとしても、まったく知らない会社を、就職先の選択肢には入れないものですよね。
   いまは求人数が多く、就職環境としては好景気ということもあり、もともとは製造業に興味を持っていた学生であっても、よりよい条件の企業を求め、最終的には残念ながら違う業界に行ってしまうケースも多くあるんです。優秀な人材を確保するには、幅広く学生に、製造業や『NOK』を知ってもらうことが課題としてあがりました」

初めての試みに「当初はかなり不安でした」

他社もやったことのない「採用コミュニケーション」にチャレンジした(写真は、三宅一彰さん)
他社もやったことのない「採用コミュニケーション」にチャレンジした(写真は、三宅一彰さん)

―― 2019年から、採用活動に関してさまざまな取り組み(採用コミュニケーション)を始められたそうですね。どのような取り組みなのでしょうか。

池尾さん「まず、就職活動というよりは、将来の就職先の一つに製造業や『NOK』を見てほしいということで、インターンシップへのPRを目的に5~6月に、広告ポスターを制作して、首都圏の27の大学の最寄り駅に掲出しました。NOKの部品が使われているクルマやスマホなどをビジュアルに使って、それぞれの大学向けにカスタマイズしたキャッチコピーも作りました。製造業はお堅いと思われがちなので、軽さやあたたかみのある表現で学生と目線を合わせるといったところにも気を遣いました」

東京大学の最寄り駅 に掲出したポスター
東京大学の最寄り駅 に掲出したポスター

三宅さん「そして、さらにNOKを知ってもらうために、各大学の校門の前で、学生たちにお菓子を配りました。ただのお菓子ではなく、NOKの製品のイラストやその説明、会社ロゴなどをパッケージにプリントしたものです。チラシのようなものですが、学生たちが勉強の合間にお菓子を食べながらパッケージにも目を通してくれたらというのが狙いでした。
   ほかにも、北海道から九州までの全国7大学で『NOK全国大学もちもの検査』というイベントも行いました。これは構内の一角に幟を立てて、学生に集まってもらい、学校でなじみのある「もちもの検査」と似たような形で鞄の中身をみせてもらい、NOKの部品が使われているスマホなどを持っていたら、クーポンや生協チケットを提供するというものです。学生が集まってくれるのかドキドキしましたが、おかげさまで、1大学で200~300人ほどが集まりました。併せると2000人近くの学生が参加してくれたことになり、NOKの製品や技術が身近なところにあることがアピールできたのではないかと、考えています。
   それでも、他社に先駆けて、こうした取り組みを進めていくことに、当初はかなり不安があったんですよ。それが実現できたのは、新しいチャレンジを後押ししてくれるような社風だったからですね」
「NOK全国大学もちもの検査」には多くの学生が関心を寄せた
「NOK全国大学もちもの検査」には多くの学生が関心を寄せた

―― 宣伝しないところから一転して、さまざまな施策を試しました。学生の反応はいかがでしたか。

池尾さん「概ね良好でした。学内説明会で、『ロゴを見たことあります』とか『あのお菓子を配っていた会社だったのですね』といった反応もあり、少しずつ認知が浸透している印象があります。また、前年と比べてインターンシップに参加してくれる学生が増えたのは、こうした取り組みのおかげかなと思っています」
学生の反応は良好だった(写真は、池尾並恵さん)
学生の反応は良好だった(写真は、池尾並恵さん)

コンセプトは「世の中を動かす、中の人。」

―― 「採用コミュニケーション」の軸となったコンセプトや考え方があると聞きました。

池尾さん「じつはこの採用コミュニケーションに先駆けて、会社を表すコンセプト、いわゆる会社のキャッチコピーを開発、導入しました。それが『世の中を動かす、中の人。』というコンセプトです。NOKの製品や技術は表にこそ出ないものの、スマホや自動車など人々に欠かせない製品の中に広く使われています。そうした『NOK』という会社の存在や意義を、学生にも刺さるような『中の人』といった言葉で表してみました。一連の採用コミュニケーションは、この考え方をベースにしています」

三宅さん「企業CMも作り、地域限定(関連事業所がある福岡、熊本、福島、宮城など)で放映しました。このテレビCMには、意見はさまざまありますが、結構好評でした。関東や他県の方も、YouTubeで視聴いただけます」

―― こうした取り組みを、今後も続けていかれる予定ですか。また、どのような学生に入社してほしいのでしょうか。

池尾さん「(採用コミュニケーションの取り組みは)ある程度継続していくのが理想ですが、予算の兼ね合いもあり、今後も同じような規模で取り組めるかは未知数でもあります。でも、一連のキャンペーンを行ってみて、学生が目に付く場所に社名やロゴを出す取り組みは必要であることが認識できました。製造業という業界に興味をもってくれる若い方たちが増えてくれて、さらにNOKを選んでくれればなおうれしいです」

三宅さん「求める人材をはっきりと設定しているわけではありませんが、個性あふれるさまざまなタイプの学生や方々に集まってもらい、一緒に会社を創っていきたいですね」

(聞き手:戸川明美)

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