2021年 8月 4日 (水)

元Jリーガー社長が掲げる理想 「健康寿命を延ばして、いきいき働ける社会を創る」こと

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   サッカー好きなら、彼の名前は何度も耳にしたことがあるだろう。現役の16年間、Jリーグ「浦和レッズ」でプレーし、日本代表としても活躍した元プロサッカー選手の鈴木啓太さん。

   2015年に現役を引退した鈴木さんは、サッカー界を離れて実業家の道に転向。アスリートの便(べん)を集めて腸内細菌を研究する「AuB株式会社」を立ち上げた。

   ビジネスという場に活躍の場を移して、丸4年。サプリメントを開発したり、プロ野球・読売ジャイアンツとパートナーシップ契約を結んだりと順調にビジネス領域を広げている。AuBの鈴木啓太社長に聞いた。

「人間は腸がいちばん大事」母の言葉を胸に刻む

―― プロサッカーの現役時代から、腸や便に興味があったとのことですが、興味を持ったきっかけは何だったのでしょう。

鈴木啓太社長「小さい頃から、母親に、『人間は腸がいちばん大事。毎日自分の便を見なさい』と言われて育ちました。調理師だった母は、食事に気を遣ってくれていましたが、私のカラダが小さかったので、カラダのことをあれこれ調べるうちに『腸が大切だ』という結論に至ったようでした。
母の言葉に、最初は半信半疑でしたが、自然と便の状態を毎日チェックするようになりました。プロになってからは、自分のコンディションを腸やおなかで測るようになり、便の状態から、食事の内容を調整したり、ストレスなどの精神的な負担を整えたり、おなかにお灸をすえたりして、体調管理していたんです。
運動選手は冷たいものをよく飲みますが、腸を冷やすものはなるべく摂らないようにしたり、食後に必ず温かいものを飲むようにしたり......。食事に気を遣っている選手はたくさんいましたが、腸に一番気を遣っていた選手は私くらいだったと思います」

―― プロのスポーツ選手が、セカンドキャリアとしてビジネスを立ち上げるというのは、めずらしいと思いますが、アスリートの便について調べるというアイデアは、いつ、どこから得たのでしょうか。

鈴木社長「2015年、現役を引退する少し前に、『毎日の便を記録する』というビジネスをされている方と会う機会がありました。そのとき、『アスリートの便を調べてみたら、おもしろい発見があるんじゃないか』という話になったんです。太っている、痩せているなどのヒトの体形は、特定の腸内細菌の影響によるものだという有名な腸内細菌研究があるのですが、同じようにアスリートという特徴的な対象者の便の中に、特有の傾向や特有の菌があるんじゃないか。それがわかれば、一般人の課題の解決にもつながるはずだと思いました。これを調べることが私の『天職だ』とピンときましたね」

「腸」研究活かし、プロ野球・巨人軍の若手を食事指導

―― 起業して大変だったことは、なんですか。

鈴木啓太社長「やはり、資金繰りですね。現役引退と同時に会社を起こして、この4年間は、アスリートから便の検体を提供してもらい、共同研究している大学に便を送っては調べてもらうという日々が続きました。この間、お金はどんどん出ていくだけですから、資金の枯渇にも直面しました。
経営にはまったくの素人で、会社が継続できるかという不安とプレッシャーで眠れない日もありましたが、なんとか資金調達に漕ぎ着け、乗り越えることができました」

―― アスリートからたくさんの検体が集まったそうですね。そこから発見はありましたか。

鈴木社長「これまで500人を超えるアスリートに便の提出に協力してもらってわかったことは、アスリートの腸内細菌は、一般人と比べて『多様性が高い』ということです。腸内細菌の多様性は、人間の健康の指標のひとつとも言われていますが、それがアスリートのほうが高かった。
もう一つの発見は、アスリートには、酪酸菌とよばれる腸内細菌が多かったことです。一般人の腸内細菌の酪酸菌の割合は2%から5%ですが、アスリートの場合は5%~10%でした。酪酸菌は、免疫力に大きく関わっている細菌だとされていますが、何百種類もある細菌の中で、この細菌が数パーセント違うというのは、かなり大きな差なのです。
こうした結果から、アスリートは免疫力に関わる腸内細菌を多くもっているので、過酷なトレーニングに耐えられ、最高のパフォーマンスが生み出せるのではないかという仮定が導き出せました」

―― ここで得た知見を、どのように活用しているのでしょうか。

鈴木社長「研究結果に基づいて、アスリートへの食事面や栄養面のサポートを行っています。今年(2020年)1月に、読売ジャイアンツとスポンサーシップ契約を結び、当社のスポーツ栄養士が、若手の多い2軍と3軍のチームに常駐して食事や栄養の指導を行っています。ほかにも、プロのスポーツチームや個人のオリンピック選手への食事や栄養面でのサポートの要望は多くいただいていますので、引き続きサポートを提供していきたいと思っています」

今後はフードテック分野へ進出

―― 今後の事業展開の予定はいかがでしょうか。

鈴木社長「今後は、サプリメントなどのフードテック分野への進出に力を入れていきます。その第一弾として、2019年12月に『AuBBASE(オーブベース)』というサプリメントを開発し、一般に向けて販売を開始しました。腸内環境を良好にすることでカラダのコンディションを高めるという観点から、酪酸菌を含む29種類の菌を配合しています。
カラダのベースを整えることは、生きるうえでの基本ですから、アスリートを目指す人たちだけでなく、趣味でスポーツをしている人や会社などで働く人にも必要なことだと思っています」

―― アスリート研究の有用性については、いかがでしょうか。

鈴木社長「アスリートは、ただ自分たちが強くなりたいという一心で、カラダを鍛え、コンディショニングをしています。私たちがアスリートの研究をすることで、一般の方たちとも有益な情報を共有し、人々がいきいきと健康に暮らしていけたら、両者にとってうれしいことだと思うんです。
理想は、健康寿命を延ばして、何歳になっても働ける社会を創ること。そのために、アスリートの研究をずっと続けて、その知見を社会に還元していきたいと思っています」

(聞き手 戸川明美)


プロフィール
鈴木 啓太(すずき・けいた)
AuB株式会社 代表取締役

2000年、東海大翔洋高校から浦和レッドダイヤモンズに入団。06~07年にA代表。09年から3年間、浦和レッズ主将。15年10月にAuB株式会社を設立。16年1月、浦和レッズを退団。AuBは、香川大学、志学館大学、京都大学と共同研究を重ねている。
2004年のアテネ五輪アジア最終予選のUAEラウンドで、代表選手23人のうち、18人が下痢を訴えたが、日ごろから腸を整えていた鈴木氏本人は症状が現れず、腸の大切さを痛感する。こうした経験が、「アスリートが腸内環境を意識できれば、コンディションアップにつながるのではないか」というビジネスのアイデアになった。
静岡市生まれ。38歳。


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