2024年 4月 19日 (金)

【尾藤克之のオススメ】「イエモン」のロック・バラード「JAM」が教えてくれること

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   私たち人間は、誤解や勘違いなしでコミュニケーションをすることができません。なぜなら、誰もが「バイアス」を通して物事を見ているからです。

   本書は、さまざまなバイアスについて学び、人間関係やコミュニケーション問題を改善したり、会話をコントロールしたりするテクニックをわかりやすく解説します。

「勘違い」を科学的に使えば武器になる(堀田秀吾著)秀和システム
  • 「航空機内に日本人の乗客は……」(写真はイメージ)
    「航空機内に日本人の乗客は……」(写真はイメージ)
  • 「航空機内に日本人の乗客は……」(写真はイメージ)

飛行機事故のニュースで聞く「乗客に日本人はいませんでした」

   「JAM」(ジャム)は1996年2月29日に発売されたロックバンド「THE YELLOW MONKEY」9枚目のシングルです。累計80万枚のセールスを記録しています。歌詞には、外国で飛行機が墜落したとき、ニュースキャスターが「乗客に日本人はいませんでした」とうれしそうに言う光景が、非常に印象的に描かれています。

   本書の著者の堀田秀吾さんは、

「乗客に日本人がいたか気になるのは、日本人なら当たり前の感覚かもしれません。ただ、 飛行機事故が起きた時点で、とてつもない悲劇が起きているわけです。『JAM』の歌詞は、日本人が犠牲にならなかったことを喜ぶあまり、犠牲者に対する思いが薄れてしまってはいけないと気づかせてくれます」

と、言います。

「内集団バイアスは、多くの人が自分の家族や自国を大切に思うように、普通にあるものです。無理になくそうとするのではなく『JAM』の歌詞のように、外からの視点を自分の中でたくさん持てるように意識することが大切です。どれだけ日本が大好きでも、ほかの国に敵意を持つ理由にはなりません」

   ヴォーカルの吉井和哉さんは2015年のトライアド復活ライブ『TRIAD ROCKS -Columbia vs Triad-』において飛行機事故のニュースに関して次のように語っています。

「今聞くとウソみたいと思うかもしれないけどさ、昔は外国で飛行機事故があったとき、ニュースキャスターは笑顔で『乗客に日本人はいませんでした』って言ってたんだよ。そう考えると、この曲(JAM)を作ってよかったんだと思える」

   堀田さんは、内集団を大切に思い、評価が高くなるのはよいことですが、 同じような視線を外集団にも向けられるように意識すべきだと指摘します。

(注)「内集団」とは、個人が自らをそれと同一視し所属感を抱いている集団のこと。「外集団」とは、「他者」と感じられる集団で、競争心、対立感、敵意などの対象になりやすいもの。

人間はみんなバイアスがあり、勘違いする

   「内集団」のことを誇りに思ったり、ひいき目にみたりするのは仕方ないことです。問題は、「外集団」に対して不要な攻撃をすることだと、堀田さんは解説します。

「自国を愛するのはいいことでしょうが、他国や外国人に対するヘイトは許されません。近年、他国に攻撃的な方が問題になるとともに増えてきましたが、そもそも日本を好きなことと、他国を好きになることは両立できるはずです。このように、内集団バイアスは、内集団への愛情などが強まりすぎることで、外集団に対する意識が微妙なものになってしまう危険性を秘めています」

   人間はみんなバイアスがあり、勘違いをします。それを理解してうまく利用することで、上手にコミュニケーションできるようになります。人間は一見客観的な評価に弱いのです。だから、Amazonの星や食べログの評価を参考にします。また、名刺の肩書きはビジネスを進めるうえで非常に意味を持つ場合があります。

   科学的に導かれた知見すら、時代の流れとともに否定されることもあります。データの収集や解釈に研究者の意思やバイアスが介在して、信頼性に欠ける研究もあります。つねに情報をアップデートし、目の前で起こった現象をじっくり見つつ、さまざまなバイアスに惑わされない意識を持たなくてはいけないのです。(尾藤克之)

尾藤 克之(びとう・かつゆき)
尾藤 克之(びとう・かつゆき)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員。
議員秘書、コンサル、IT系上場企業等の役員を経て、現在は障害者支援団体の「アスカ王国」を運営。複数のニュースサイトに投稿。著書は『最後まで読みたくなる最強の文章術』(ソシム)など19冊。アメーバブログ「コラム秘伝のタレ」も連載中。
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