2021年 1月 26日 (火)

似てるけど、ちょっと違う「MaaS」と「CASE」? 未来の交通機関の「正体」を理解する

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   「MaaS(マース)」という言葉を聞いたことがある人は多いはず。「Mobility as a Service(モビリティー・アズ・ア・サービス)を略した言葉で、「サービスとしての移動」という意味だ。AI(人工知能)やICT(情報通信技術)を交通に採り入れ、バラバラに動いている交通機関を有機的に利用できるようにして、暮らしやすい社会をつくる狙いがある。

   一方、ドイツの自動車メーカーが未来の自動車社会を指して、Connected(接続)、Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとった造語の「CASE(ケース)」がある。こちらは、クルマがインターネットにつながって自動運転が可能になるなどハード面での変化を示唆している。

   本書「ストーリーで理解する 日本一わかりやすいMaaS & CASE」は、この二つのコンセプトによって切り拓かれようとしている新時代を展望、解説。「MaaS」 と「CASE」は、誕生の経緯は異なるが、よき「相棒」同士であることが示されている。

「ストーリーで理解する 日本一わかりやすいMaaS & CASE」(中村尚樹著)プレジデント社
  • 日本では公道での自動運転バスの実証実験も行われた
    日本では公道での自動運転バスの実証実験も行われた
  • 日本では公道での自動運転バスの実証実験も行われた

フィンランドの学生論文がきっかけの「MaaS」

   「MaaS」という用語が登場したのは2014年5月、フィンランド・ヘルシンキのアールト大学大学院の学生、ソニア・ヘイッキラさんの修士論文の中という。この大学は、起業家マインドの育成で世界的に知られており、ヘイッキラさんの論文はメディアの注目を集め、その後にMaaSの考え方が事業化されて広く知られるようになった。

   さまざまな交通手段を使って行う移動を、一つのサービスとしてシームレスに捉え、より効率的に、より経済的に、そして環境負荷を抑えながら実現するようにすることをいう。

   自動車や自転車などの移動手段を所有することなく、公共輸送サービスを組み合わせて使い、時には移動手段を借りたりしながら目的地に到達する。

   たとえば、マイカーが増えて道路渋滞が問題化してから、最寄り駅までマイカーを利用し、その先は公共交通機関を使うパーク・アンド・ライドという交通手段の組み合わせがはじまった。これも、MaaSの一環だ。

   パーク・アンド・ライドをMaaS化するためには、マイカーの代用を考えねばならない。その一つがスマートフォンのアプリで効率的に手配できる、住民間のシェアライドであり、オンデマンドのミニバスの運行という手段といえる。フィンランドのMaaSが支持された背景には、こうしたITやICTが利用しやすくなったことがある。

   マイカーの利用が必ずしも最適な選択ではなく、さまざまな交通機関を組み合わせて利用したほうが早く、安く、しかも安全に目的地に到達できることを知らしめたからだ。

   フィンランドの「MaaSアプリ」によるサービスが始まったのは、2016年10月。鉄道やバス、タクシーなどの交通事業者の情報案内機能と予約機能、決済機能などを統合。政府が事業者に対し、各種データをオープンにするよう義務付けた、「MaaSプラットフォーム」と呼ばれる土台部分を構築した。

   さらに交通事業者のチケットの販売ネットワークを広げるため、発券や決済のアプリケーションと連携するためのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を公開。現在、稼働している。

自動車メーカー主導の「CASE」

   さて、「CASE」はといえば、「クルマがインターネットにつながること」や、それによって「自動運転」、そしてシェアリング、電動化につながる取り組みをいう。自動運転の実用化が実現すれば、過疎地に住む高齢者は、自動運転のタクシーに移動手段を委ねることができるようになるだろう。

   CASEが提案しているのは、ITやICTの力で、駐車場で眠っているクルマをシェアリングで有効活用したり、電気自動車で地球環境への負荷を減らしたりすることにある。

   CASEを主導しているのが、マイカーの所有を前提に事業を考えている自動車メーカーのため、一見するとCASEとMaaSは対立する構図になるのだが、じつはMaaSはマイカーを否定しているわけではなく、マイカーの利用より便利で合理的な手段があることを示しているに過ぎない。

   つまり、地球環境のため、社会のムダを省くためという点では、同じ方向を向いているといえそうだ。

   日本でも国土交通省が先頭に立ち、自動車メーカーやIT企業などが名を連ねてMaaS事業の取り組みが始まっている。「MaaSの時代が本当に実現すれば、公共交通を使った移動の利便性が向上し、マイカーの維持費を中心とした交通費の削減にもつながる。マイカーが減少することで、道路の渋滞緩和は大気汚染の改善も期待される。また、高齢化が進む過疎地での交通弱者対策にも有効であり、交通事故の減少や駐車スペースの削減、人間優先の都市づくりにも役立つ」と考えられているからだ。

   本書では、MaaSとCASEを切り口に、日本でさまざまな取り組みを進める挑戦者たちのストーリーを紹介。登場者には、ベンチャー企業などの異業種からの参入も多く、キャスティングは多彩で、グングンと読み進められる。なかには、過疎地域で遠隔診療ができる移動診療車のストーリーなど、偶然ではあるが、「ウィズ・コロナ」の時代にフィットしそうなタイムリーなテーマも盛られている。

   著者の中村尚樹さんは、NHK記者を経て、現在はフリーランスのジャーナリスト。専修大学社会科学研究所客員研究員、法政大学社会学部非常勤講師を務めながら、さまざまなテーマで取材・執筆活動を行っている。

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「ストーリーで理解する 日本一わかりやすいMaaS & CASE」
中村尚樹著
プレジデント社
税別1800円

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