2020年 7月 14日 (火)

吉田CEOの「祖業」への思い コロナ禍の中でソニーが社名を変更したワケ(大関暁夫)

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   ソニーが2021年4月1日付で、63年ぶりに社名変更をして「ソニーグループ」という社名になるとの報道がありました。

   ソニーグループという名称は、社名変更と同時に実行する持ち株会社化をわかりやすく表現したようですが、長年「技術のソニー」「世界のソニー」として「ソニー」の名に親しんできた私の第一印象は、「ソニーグループ」という企業名の居心地の悪さであり、ソニーブランドの毀損への懸念でもありました。

   そこで、なぜ社名変更なのか、なぜ持ち株会社化なのかと不思議に思いつつ、いろいろ調べてみたわけです。

  • 昔はテレビが社業をけん引した……(写真はイメージ)
    昔はテレビが社業をけん引した……(写真はイメージ)
  • 昔はテレビが社業をけん引した……(写真はイメージ)

ソニーとパイオニアの「差」

   調べてみると、そこには就任1年目で過去最高の営業利益を記録した現トップである吉田憲一郎CEO(最高経営責任者)の自社ソニーに対する深い思いがあることがわかってきました。

   その思いを紐解くヒントのひとつとして、今回の社名変更に伴い、ソニーの名称は同社の「祖業」であるエレキ事業会社が持ち株会社の下で引き継ぐ、という話がありました。祖業を大切にすることは、創業の精神に対するリスペクトであり、私の疑念は少しずつ晴れていく気がしました。

   2000年代前半以降、世界規模の競争に敗れて赤字垂れ流しの状態だったテレビ事業を中核とする祖業のエレキ事業は、長年、組織内で疎まれ続けた存在であり、いつ事業を売却されてもおかしくない状況にありました。しかし、そんな苦しい時代が長引く中で、吉田CEOのCFO(最高財務責任者)時代からの根気強い努力の甲斐あって、ようやく2018年度に黒字化に漕ぎ着けました。

   世には、同じように赤字の山を生んでいた祖業を事業売却することで、手離した企業もあります。1980年代にミニコンポーネント・ステレオで一世を風靡したパイオニアはその代表格です。パイオニアは、祖業のステレオ事業の売却を機に、多くの優秀な技術者が組織を去り、残存事業も思うに任せず、2019年アジア系ファンドに買収されるという結末をみています。

   企業、特に製造業は、いかに多角化を重ね成長していこうとも、祖業は企業の創業の精神を伝えるものであり、成長の停止や業績の低迷などの経営環境が悪化した時に立ち返るべき場所でもあるのです。企業経営が窮地に陥った時、売却価値があるうちに事業を金銭に替えて会社立て直しの足しにしたいという経営判断も理解できなくはありません。

   しかし祖業というものは、その企業にとっては売却価格以上の価値を持つ求心力の拠り所でもあり、できることならば手放すべきではないと個人的には強く思うところです。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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