2024年 5月 9日 (木)

米GAFA、なぜ分割論? トランプVSバイデン、大統領選の結果しだいで......

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   GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の行く末に、にわかに注目が高まっている。

   米国議会で「GAFA分割論」が取り沙汰され、これを支持する民主党のバイデン候補が大統領選で優位をキープしているためだ。対抗するトランプ大統領の動向は? 現地報道でひも解くと......

  • ネットの巨人たちは「分割」されるのか!?
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GAFAと民主、共和両党のねじれた関係?

   GAFA分割論は、米議会下院司法委員会の反トラスト小委員会が、強大になったGAFAの支配力を抑え込むことを目的に、米国版独占禁止法である反トラスト法改革を提案したことがきっかけだ。

   反トラスト小委員会は、大企業には厳しい態度で臨むことが多い民主党が主導。提案に伴って、GAFAが反トラスト法に違反していることを1年4か月にわたって調査した報告書を公表。それによると、4社は協力の市場支配力を得ており、競争環境を歪めており、小委員会では、その是正のためには反トラスト法の抜本改革や会社分割が必要と提言している。

   GAFAについては、それぞれの市場の「プラットフォーマー」だが、報告書での定義は「ゲートキーパー」。「門番」という意味だが、ここでは「取捨選択する権限を持つ者」を表す。それぞれが支配する市場へのアクセスを条件に不当な契約を押し付けたり、買収を繰り返したりして独占状態を築いた。

   その結果、じつはイノベーション(技術革新)が滞り、消費者の選択の幅を狭め、引いては民主主義が制約を受けた―― というのが反トラスト委員会の言い分だ。

   この反トラスト小委員会の報告書について、トランプ大統領を支持する共和党は賛同しておらず、議会で承認され実現する公算が大きくはない。しかし、大統領選では、投票を11月に控えて、民主党のバイデン候補が共和党のトランプ大統領を支持率で上回っており、選挙結果次第では今後の独禁法をめぐる政策に影響を与えることが考えられる。

   米メディアによると、民主党の議員らは、独占禁止当局の連邦取引委員会(FTC)や司法省が、GAFAによる反競争的な合併や買収を防止できないでいると非難。議会では、これらの政府当局が合併の監視を強化することを提案している。

   だが、GAFAはいずれも「リベラル」を標榜する、民主党支持派だ。一方、共和党とは、GAFAが欧州で独占禁止法違反に問われた際にトランプ大統領が報復の意を示すなど、ビジネスでの関係は悪くない。トランプ政権の「支え」である株価をけん引してもいる。

   かつて、アマゾンのベゾス、フェイスブックのザッカーバーグ両CEOらと意見が対立、ツイッターで批判をささやいたトランプ大統領だが、今回の件ではとくに発言をしていない。GAFAと民主、共和両党とのねじれた関係も、今後の政策に影響があるとされる。

   反トラスト小委員会の報告書に対して、アマゾンはブログ記事を投稿して、マーケットプレイスの運営が反競争的であるとの指摘に反論。分割により、ユーザーが商品や価格の比較が困難になると述べた。

   また、フェイスブックは「インスタグラム」や「ワッツアップ」は、フェイスブックの投資により成功を収めたと反論している。反トラスト小委員会の報告書にも共和党議員らは署名していない。

GAFA分割論は1年以上前から浮上

   GAFA分割論は、いま初めて出てきたものではない。米大統領選(2020年11月投票)で民主党候補が次々と出馬表明を行っていた2019年3月、すでに前月に立候補を明らかにした左派のエリザベス・ウォーレン上院議員が、アマゾン、グーグル、フェイスブックについて分割を提案。選挙戦の柱に据えたところから、米国では民主党VS大企業の構図がおなじみという側面もあってクローズアップされた。

   反トラスト小委員会の報告書での指摘や、ウォーレン氏の公約を待つまでもなく、GAFAと呼ばれる4社の巨大化を問題視する指摘は、それ以前から、研究者やアナリストらが著作物などを通じて繰り返していた。

「分割論」が浮上している4社だが......
「分割論」が浮上している4社だが......

   GAFAと呼び方が日本で広まるきっかけになった「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」(東洋経済新報社)で、著者であるニューヨーク大学スターン経営大学院のスコット・ギャロウェイ教授は、当時はまだ知られていなかったGAFAの本質を分析し、米国内外に警告を発した。

   競争が自由だと考えられたインターネットビジネスの世界だが、検索、SNS、ECではそれぞれ1社しか存在しないことを指摘。その独占ぶりは、規制や処罰などで改善されるものではなく、法律によって分割すべきと訴えた。

   なぜ、分割が必要なのか――。グーグルやアマゾンのおかげで、個人ばかりか企業などにとっても、デジタル社会のなかでは利便性が向上し、反トラスト小委員会の報告書が言うような「民主主義が制約を受けた」というような主張はピンとこない。

   こうした指摘に対し、用いられるのは、1984年に実施された長距離電話会社AT&Tの分割だ。AT&Tは1980年代、米国の長距離電話市場の80%を占めていたが、このことが競争を阻害するとして8つに分割。これにより、AT&Tが電話ビジネス独占のため付属の研究所に、いわば塩漬けにしていた光ファイバーや携帯電話、データ通信などのイノベーションが開放され、一気に通信分野の改革が進んだ。

   GAFAの分割でも同じようなことが期待でき、さまざまな分野でさらにイノベーションが期待できるとされる。

米マイクロソフト分割はどうなった......

   ウォーレン氏は民主党の大統領候補指名を争う戦いで、GAFAそれぞれの分割案を提示。反トラスト小委員会の報告書の内容もそれに似ている。たとえばアマゾンについては、こうだ。まずは、買収した企業との合併解消。GAFAの典型的ビジネスは、プラットフォームとなる市場のオペレーションと、自らその中で事業を行うこと。アマゾンはマーケットプレイスをオペレーションしながら、アマゾンブランドの製品も販売している。こうした中では、自社製品にとって有利な販促活動をするのが当然であり、競争が阻害される。検索結果の上位に自社製品を表示するといった方法がその一つだ。

   フェイスブックは、画像共有アプリ「インスタグラム」、対話アプリの「ワッツアップ」の切り離しが求められる。両サービスともフェイスブックの競合相手であり、フェイスブックによる買収は脅威になる前の芽のうちに傘下に入れたと指摘される。

   GAFAを取り巻く状況は、OSとブラウザを独占して20年前にやり玉に挙がったマイクロソフト(MS)の場合と似ている。米国では、企業が巨大化して分割が論じられることが繰り返されている。MSは長い裁判闘争の末、分割には至らなかった。

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