2024年 4月 26日 (金)

ネットで誹謗中傷をしている「極端な人たち」とは誰なのか

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   インターネットが普及、SNSが進化する一方で、近年とくに問題となっているのが、発信されたコメントなどに批判や誹謗中傷が殺到する「炎上」が頻発していることだ。

   不謹慎狩り、自粛警察、悪質クレーマーなどといわれ、炎上や、時には人命も危険にさらすような行いしているのは、どういう人物なのか――。本書「正義を振りかざす『極端な人』の正体」は、炎上事例などをデータを使って分析し、炎上を引き起こす者たちの意外な正体や、隠された真実を明かした一冊。ネット社会の知られざる実態が報告されている。

「正義を振りかざす『極端な人』の正体」(山口真一著)光文社
  • ネットの炎上は「超極端な人」の仕業か
    ネットの炎上は「超極端な人」の仕業か
  • ネットの炎上は「超極端な人」の仕業か

プロファイリングをしてみると......

   著者の山口真一さんは、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授。ネットメディア論、ネットビジネス、プラットフォーム戦略などを主に研究している。「炎上とクチコミの経済学」(朝日新聞出版)、「ネット炎上の研究」(共著、勁草書房)などの著書があり、NHKの「あさイチ」「クローズアップ現代+」などメディア出演も数多い。

   発信に対して、根拠のない批判や誹謗中傷を寄せ、炎上を引き起こしている人物について、本書は「極端な人」と呼ぶ。その極端な人たちについて、一般的なイメージというと、だいたいが年がら年中ネットをしているヒマな人たちといったところだろう。あるいは、「比較的時間があってネットに精通している学生」を考えている人も少なくないはずだ。

   ところが、極端な人たちを追跡調査していくと、ネットでの行動の「極端」とは対照的に、社会的地位・立場、学歴、収入などからみても、ふつうの人たちで占められることがわかってくる。

   ある事件をきっかけに、9人の弁護士が次々にブログでターゲットとなり、懲戒請求が執拗に繰り返された。弁護士らは損害賠償請求訴訟を提起し、懲戒請求が不法行為とされ、賠償が認められたが、法廷では懲戒請求の送り主のほとんどが高齢者だったことが判明し、原告の弁護士らも絶句したという。

   また、著者らが2014年と16年に、それぞれ20~69歳の男女2万人、同4万人を対象に行った、ネット炎上についての調査のデータ分析によると、炎上に参加していない人と参加した人のうちで、主任・係長クラスが占める割合をみると、参加した人の割合が31%と、参加していない人の割合の1.5倍以上で、こうした肩書のある人ほど「極端な人』になりやすい傾向を示している。

「超極端な人」が執拗に投稿

   こうしたことから、実際に「炎上」を引き起こしている「極端な人」はごく少数だ。

   2014年と16年の調査を分析すると、炎上1件あたりに参加している人は、ネットユーザーの0.0015%。具体的には7万人に1人ほどの割合だ。全国のネットユーザー数からみると、7万人に1人という割合は、およそ1000人が炎上1件に言及しているといえる。

   過去の炎上事件のツイッター分析でも、この割合は裏付けられたという。たとえば、自殺という痛ましい事件に発展したプロレスラーの木村花さんの事件でも、木村さんのアカウントにきたリプライは1日最大でも400件未満。誹謗中傷に限るとさらに少なかった。

   また、著者がNHKとともにツイートを分析すると、木村さんに10回以上のリプライを送っている人は、投稿者の中で1.3%だったのに対し、投稿数では14.7%を占めていた。ごく少数の「極端な人」の中の、さらにごく少数の「超極端な人」が執拗な投稿をし、どこまでも追い詰めようとしていることがみてとれる。

   通常の「極端な人」であれば、せいぜい1、2回投稿して終わりだろう。「超極端な人」が大量の攻撃をしているのが、いま問題となっているネット誹謗中傷の図式といえる。あるライターが提訴した事例では、男は、数百のアカウントを作成し、そのアカウントを駆使して次から次へとライターへの誹謗中傷やデマ流布を繰り返していた。

   著者は本書について、「極端な人」がいる社会で生きにくいと感じている人や、「自分も極端な人になるかも」と心配している人に向けたものであり、本書のデータ解析と事例でネット社会の実態を知ってもらい、何らかの答えを出せる参考にしてほしいと述べている。

「正義を振りかざす『極端な人』の正体」
山口真一著
光文社
税別760円

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