2020年 11月 25日 (水)

オバマ氏が鳩山氏を「酷評」? 海外メディア報道で見えた「NHK誤訳騒動」の真実(井津川倫子)

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   バラク・オバマ前米大統領が回顧録を出版し、世界中で話題をさらっています。日本円にして約4600円(45ドル)もする「高額商品」にもかかわらず、発売後たった24時間で89万部の売り上げを達成! 世界中が注目した米大統領選挙の直後だけに、オバマ氏が著書で何を語っているのかを各国のメディアがいっせいに報じています。

   日本でも、NHKや一部メディアが、「オバマ氏が鳩山由紀夫元首相を『迷走した日本政治の象徴』などと評した」と報じたことに、英語の専門家たちが「誤訳だ」と指摘するなど、ネット上で大盛り上がり。果たして、この「鳩山騒動」は「誤訳」なのか、それとも......。各国メディアの報道を読み解くと、意外な事実が見えてきました。

  • オバマ前米大統領にとって鳩山由紀夫元首相は「厄介な同僚だった」?(2015年撮影)
    オバマ前米大統領にとって鳩山由紀夫元首相は「厄介な同僚だった」?(2015年撮影)
  • オバマ前米大統領にとって鳩山由紀夫元首相は「厄介な同僚だった」?(2015年撮影)

鳩山氏は「感じは良いが厄介な同僚」だったの?

   それにしても、ものスゴイ売れ行きです。バラク・オバマ前米大統領の回顧録「A Promised Land」は、発売早々にアマゾンのベストセラー1位にランキング。発売後24時間で89万冊を売り上げて、歴代米大統領回顧録の記録を作りました。

   ちなみに、2位のビル・クリントン氏の回顧録「My Life」の記録が40万冊、3位のジョージ・W・ブッシュ氏の「Decision Point」が22万冊ですから、オバマ氏の89万冊の記録は、群を抜いてダントツの1位です。

   日本で話題になっているのは、オバマ氏が当時の日本との関係について回想している箇所です。とりわけ、鳩山由紀夫元首相を評した部分を一部メディアが抜粋して取り上げたことから、「騒動」に発展してしまいました。ちょっと長いですが、話題の渦中にある英文をご覧ください。

A pleasant if awkward fellow, Hatoyama was Japan's fourth prime minister in less than three years and the second since I'd taken office--a symptom of the sclerotic, aimless politics that had plagued Japan for much of the decade
(不器用だか感じの良い人物だった鳩山氏は、私が大統領になってから2人目の、そして3年以内で4人目の日本の首相だった。これこそが、10年近く続いた硬直化して目的を失った日本政治の象徴だった)

   こうしてみると、何てことのない文章なのですが、まず冒頭の「A pleasant if awkward fellow」の解釈でメディアの見解が分かれています。

「感じは良いが厄介な同僚だった」(時事通信)
「感じは良いが、やりにくい」(毎日新聞)
「感じは良いが付き合いにくい」(共同通信)
「不器用だが感じの良い男」(朝日新聞)

   メディアの「和訳」を比較してみると、「pleasant」(感じが良い)の解釈は一致していますが、「awkward」(不器用な、ぎこちない、下手くそな)の解釈が分かれていることがハッキリと見て取れます。

   この英文の和訳がテストで出題されたと想定して、一番高得点を取れるのは朝日新聞の「不器用だが感じの良い男」でしょう。

   残りの3社は、和訳以前に文法の解釈が間違っています。「A pleasant if awkward fellow」の骨子は「A pleasant fellow」(感じがよい男性)で、「if awkward」「~かもしれないが」といった「補助的」な位置づけです。

   つまり、オバマ氏がメーンで伝えたかったことは、「鳩山氏は感じが良かった」であり「鳩山氏は不器用だった」ではありません。

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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