2024年 4月 25日 (木)

「霞が関はブラック企業か?」過労死ラインの若手官僚3割! 河野太郎大臣の告発に怒りの声(1)

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   「国会対応」という名のもとで、議員の質問や大臣の答弁書作りのため、理不尽な残業を強いられる国家公務員の無念が浮き彫りになった。

   河野太郎・行政規制改革相が国家公務員の「サービス残業」の実態調査を、2020年12月25日に公表。若手官僚がどんどん辞めていくのも無理はないようだ。

  • 残業の明かりが灯る霞が関官庁街
    残業の明かりが灯る霞が関官庁街
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20代のキャリア官僚の退職が6年で4倍に

   主要メディアの報道をまめると、河野太郎・行政規制改革相(国家公務員制度担当相)は12月25日の記者会見で、「霞が関官僚の残業時間の実態調査」を発表し、こう語って人事院を痛烈に批判した。

「過労死ラインと呼ばれる月80時間を超える残業をした人が全体の1割以上もいる。サービス残業はないという建前を横行させた人事院には厳しい反省を求める」

   と激しい口調で非難したのだった。

   河野氏が発表したデータは、内閣府人事局が調査した。霞が関の中央官庁で働く国家公務員が、勤務時間7時間45分と昼休憩1時間の計8時間45分の正規の就業時間外に職場にいた「在庁時間」を調査した。対象者は霞が関の全府省庁の課長級以下5万682人。今年10月と11月の「在庁時間」を聞いた。

   「在庁時間」とは、上司の命令で残業した超過勤務を含む「勤務時間」とは別の概念だ。長時間労働(サービス残業)の温床となっている可能性があるため、自己申告するよう求めたのである年10月と11月の「在庁時間」を聞いた。記録に残る「勤務時間」とは別の事実上の「残業時間」を調べた。

   その結果、所定の時間を超えて在庁していたのは、10月が1日平均1時間50分、11月が2時間2分。人事院が定める超過勤務の上限である100時間を超えた職員は10月の1か月間で、全体の6%に当たる2940人いた。11月に100時間を超えた人も2617人(5%)いた。

   30代以下で時間が長くなる傾向にあり、特に長かったのは幹部候補で「キャリア」と呼ばれる20代の総合職だ。10月が2時間55分、11月は3時間21分。10月は調査対象約2700人のうち17%に当たる472人が1か月間の合計で100時間を超えた。

河野太郎・行政規制改革相(12月25日の政府インターネットTVより)
河野太郎・行政規制改革相(12月25日の政府インターネットTVより)

   人事院が「超過勤務の上限である100時間を超える者はいない」としてきた建前が崩れたわけだ。また、「過労死ライン」とされる月80時間を超えた人は10月が6247人(12%)、11月が5522人(11%)いた。また、ここでも20代の総合職が多く、両月とも3割以上が「過労死ライン」を超えたのだった。

   河野氏は、記者会見で改めてこのことに触れて、

「若手に負担が偏っている実態が見える化できた。この長時間労働が早期の離職につながっている。このデータを見る限り、サービス残業がないということは考えられない。各省庁に管理職への研修義務づけなどを求めていく」

   と決意を語った。

残業時間のワースト3は財務省、文科省、経産省

   これを受けて、内閣府人事局は、管理職の人事評価で勤務管理を重視した仕組みを検討することになった。

   ところで、国家公務員の若手の離職とはどういうことか。河野氏は11月18日に「危機に直面する霞が関」というタイトルで自身の公式ブログを更新。ブログでは2019年の20代の霞が関職員(総合職)の「自己都合」を理由とした退職者が87人となり、2013年(21人)の4倍以上になったと明らかにしたばかりだ。退職者がわずか6年で4倍に達したのだ。

   いったい、若いキャリアの国家公務員たちはなぜ早くやめてしまうのか――。2019年9月に就職・転職のジョブマーケット・プラットフォーム「Open Work」を運営するオープンワークが「国家公務員の残業時間ランキング」埋込リンク:(https://www.vorkers.com/hatarakigai/vol_63) を発表した。

(表)国家公務員の残業時間ランキング(「OpenWork働きがい研究所」作成)
(表)国家公務員の残業時間ランキング(「OpenWork働きがい研究所」作成)

   Open Workは企業や官庁などで働く人の口コミサイトで、Open Workに投稿された会員による自分の勤務先である中央官公庁への評価レポート5653件をもとにランキングした=左表参照。

   それよると、1位財務省、2位文部科学省、3位経済産業省、4位総務省...... などで、残業上位官庁の職員のクチコミから見えてきたのは、「国会対応」というキーワードだった。

   「国会対応」とは、国会で質問を受ける省庁大臣らの答弁を作成する重要な業務だ。まず、質疑の前日に議員から「質問通告」を受けると、各省庁に答弁が割り振られて答弁作成が始まる。

   公務員の働き方改革のために内閣府人事局が行った「国会対応の実態調査」によると、「質問通告」が終わる平均時刻は20時19分、各省庁への割り振りが確定する平均時刻は22時28分。それから答弁作成が始まるから、当然、徹夜は必至だ。

   口コミからは、国家公務員たちの悲壮な声が聞こえてくる。たとえば、文部科学省――。

   「平日にプライベートの予定を入れることはほぼ無理。『多忙なのは国会会期中に限る』という職員もいると思うが、国会は毎年1月~6月(遅ければ8月)と、9月~12月まで開催される。その期間中毎日、国会答弁の作成をするわけではないが、国会のために急に仕事が入る(それも定時後)ことが多いので、平日の習い事や霞が関以外の人との約束は実現不可能」(企画調整、女性)

残業時間1位といわれる財務省
残業時間1位といわれる財務省

   総務省はこうだ。

   「残業は避けられない。特に国会対応を頻繁に行う部署や、法令改正の担当部署に配属されると、休日出勤を強いられ、月残業時間が150~200時間にのぼることもある」(総合職、男性)

(福田和郎)

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