2024年 4月 21日 (日)

もう「激務」とは言わせない! モチベーション高く働ける職場を目指す 大和証券 森千春さんに聞く

人気店や企業から非公開の招待状をもらおう!レポハピ会員登録

   早くから女性活躍の推進に積極的に取り組んできた大和証券グループ。「時間」の有効活用を意識することで、働きやすい環境と社員のモチベーションのアップを実現してきたという。

   さまざまな職場環境の整備によって対外的なイメージが変わり、「学生が就職したい企業としても上位にランキングされるようになった」と話す大和証券 人事部人事課兼ワーク・ライフ・バランス推進室 次長の森千春さんに、社内での取り組みについて聞いた。

  • 育児中の社員が安心して働ける(写真は、社員の研修中に子どもを預かるベビーサロンの様子)
    育児中の社員が安心して働ける(写真は、社員の研修中に子どもを預かるベビーサロンの様子)
  • 育児中の社員が安心して働ける(写真は、社員の研修中に子どもを預かるベビーサロンの様子)

社員全員が19時までに退社する

――大和証券グループは、女性活躍推進に早くから取り組んできたフロントランナーのイメージがあります。どのような取り組みをされてきたのでしょうか。

森千春さん「基本的な考え方として、若手からベテランまで、すべての社員が高いモチベーションで働きつづけることができる職場環境の実現を目指しており、女性活躍の推進はその取り組みのひとつと位置づけています。
大和証券でいえば、2007年から始めた『19時前退社』の励行が、社員全員の働きやすさにつながっていると思います。そもそもは2005年頃から女性活躍支援の取り組みをはじめましたが、女性が出産などのライフイベントを経ても、キャリアを継続できる環境が必要だという観点から、さまざまな制度を整備しました。両立支援制度を考える際には、女性だけでなく、男性の働き方改革なくしては成り立たないため、当時の経営トップが、すべての社員が活躍するためには『時間がキーワードである』と捉えて、半ばトップダウンで19時までに全員が会社を退社するよう促してきました」

――「証券会社は夜遅くまで働くイメージがありましたが、そういうイメージはもう古いんでしょうか。

森さん「特に営業現場では19時前退社が徹底されていますね。以前は残業することが当たり前の企業文化だったのですが、現在では、全国にある大和証券の支店は、19時に行けばオフィスの明りが消えているはずです。この励行が進むにつれて、社員はだんだんと『自分で時間をコントロールして働くことが当たり前』と身をもって感じるようになり、限られた日中の時間に集中して成果を出すという考え方にシフトしてきました。
家族との時間や自己研鑽の時間もとれるようになり、実際に、退社後に資格取得を目指す社員も多くなりました。この取り組みによって女性はもちろんのこと、すべての社員がモチベーションを高めながら働き続けられる環境になっていると思います」

会社がベビーシッター代を補助

――働く女性をサポートするための制度には、どのようなものありますか。

森さん「女性がさまざまなライフイベントを経ても仕事を継続できること、そしてキャリアアップできることのふたつを両輪としてさまざまな施策を行っています。
たとえば、『育児をしながら働き続けてキャリアアップを図りたい』という人には、会社が契約するベビーシッターサービスを特別料金で利用できる制度があります。一般的にはベビーシッターサービスは入会金や利用料などでかなり高額になりますが、それらを補助することでベビーシッターを利用しやすくしています。また、育児休職から復帰する際に、社員のかわりに保育園の空き状況などを確認する『保活サポートデスク』もありますね。以前から、保育園や幼稚園の費用補助はしてきましたが、昨年度からは学童の費用のサポートも始めました。ベビーシッターサービスなどは、社内の『ワーク・ライフ・バランス委員会』で議論されて創られた制度です」

――ワーク・ライフ・バランス委員会とはどのような組織なのでしょうか。

森さん「日比野(隆司)会長と中田(誠司)社長が共同委員長となって年4回開かれている社内委員会です。現場社員の声やアンケートの結果などをもとに、働き方などの課題を議論し対応策を考えています。委員会に参加するアドバイザーは内容ごとに毎回変わります。社内トップが共同委員長として参画しているので、方向性が決まると実施に至るまでが速いのが特徴ですね。この委員会から、男性の育児参画妊婦エスコート休暇の導入などさまざまな制度が実現しました」
大和証券のワーク・ライフ・バランス委員会の様子
大和証券のワーク・ライフ・バランス委員会の様子

――大和証券の女性活躍推進の現状はいかがでしょうか。

森さん「今年度末までに掲げている数値目標としては、女性管理職比率を2005年度比で5倍強となる15%以上にする、新卒採用における女性採用比率を安定的に50%にする、研修受講者に占める女性比率を50%にする、年休取得率を70%以上にする、男性の育児休職の比率を100%にすることの5つがあります。
まだ今年度(2020年度)が終わっていないので、あくまでも今の段階ですが、この5つの指標すべてで目標に近い数字となっています。
現在の女性管理職比率は15.9%ですが、女性社員が入社後に会社で同じようにスキルアップしていけるよう、男女共通の研修に関しては男女半々の受講比率を目指しています。とはいえ、女性特有のライフイベントもありますので、将来の管理職候補となる若手女性を対象とした研修や管理職に登用された後の女性向けの研修も実施してきました。女性が経験しやすい悩みや障壁はありますので、こうした研修は今後も継続していきたいと思います」

金融界をけん引するリーダーの輩出に向けた「流れ」つくる

「男女問わず優秀な学生が就職先として興味をもってくれている」と話す、ワークライフバランス担当の森千春さん
「男女問わず優秀な学生が就職先として興味をもってくれている」と話す、ワークライフバランス担当の森千春さん

――女性活躍推進の施策によって、社内外の反応は変わってきていますか。

森さん「現在、グループ内で女性の支店長は全体の約2割を占め、女性が海外の拠点長を担っているケースもあり、ロールモデルになる女性がだんだんと増えてきています。そういったこともあり、社内では、エリア総合職という地域限定型の働き方から、少しエリアを広げた広域エリア総合職や、全国型の総合職へと職制転向試験にチャレンジをしてキャリアップを目指すケースが増えてきています。
総合職になると転勤もありますが、女性でもふつうに転勤している人も多いですね。私自身も、入社後は東京でリテール営業に従事していましたが、神戸支店へと転勤して課長職を経て、2020年10月から東京に戻って人事という新たな分野に挑戦しています。
社外の反応という面では、女性活躍に優れた企業を選定する『なでしこ銘柄』に6年連続で選ばれているということもあり、男女問わずに優秀な学生さんから就職先として興味をもってもらえていると実感しています。以前は、証券会社というと『ツラそう、キツそう』といったイメージがあったかもしれませんが、そんなイメージも変わりつつあり、年々学生さんから弊社に対する評価が上っているように感じますね」

――今後の課題としては、どのようなことがありますか。

森さん「2019年5月に日本で発足した『30% Club Japan』活動に賛同し、日比野会長と中田社長がメンバーとして参画しています。この活動では、メンバー企業が取締役会における女性比率を2030年までに30%以上にしていくことを目標として掲げ、日本企業の持続的成長を促進するために役員に占める女性の割合を向上させることを目指しています。弊社の場合、取締役会における女性比率は現時点で23.1%となっていますので、まずは30%にすることを目指しています。そして、当社グループとしては、金融界をけん引するような女性リーダーの輩出に向けて、今後も採用から育成、登用という取り組みを積極的に行うことで良い流れを生み出していきたいですね」

(聞き手:戸川明美)


プロフィール
森 千春(もり・ちはる)
大和証券株式会社 人事部人事課兼ワーク・ライフ・バランス推進室 次長
2007年大学卒業後に総合職として大和証券入社。東京、神戸など計3か店でリテール営業に従事。2020年10月から現職となり、人事業務のほか、女性活躍支援やワーク・ライフ・バランス促進の取り組みなどを担当する。

水野 矩美加(みずの・くみか)
水野 矩美加(みずの・くみか)
アパレル、コンサルタント会社を経てキャリアデザインをはじめとする人材教育に携わる。多くの研修を行う中で働き方、外見演出、話し方などの自己表現方法がコミュニケーションに与える影響に関心を持ち探求。2017年から、ライター活動もスタート。個人のキャリア、女性活躍、ダイバーシティに関わる内容をテーマに扱っている。
戸川 明美(とがわ・あけみ)
戸川 明美(とがわ・あけみ)
10数年の金融機関OLの経験を経て、2015年からフリーライター、翻訳業をスタート。企業への取材&ライティングを多く行う中で、女性活躍やダイバーシティの推進、働き方の取り組みに興味をもつ。
姉妹サイト

注目情報

PR
コラムざんまい
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中