2024年 4月 25日 (木)

IOCと小池都知事に見放された森会長、辞任にカウントダウン 後任はやっぱりあの人か?(1)

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   日本はもちろん、世界中で沸き起こる「辞めろ」コールにもかかわらず、東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長の座に居座り続ける森喜朗氏(83)。2021年2月9日、突然IOC(国際オリンピック委員会)が森会長の女性差別発言を「絶対に不適切!」という極めて激しい言葉で批判する声明を出した。

   5日前までは「この問題は終わった」と表明。擁護していただけに異例の展開だ。IOCという後ろ盾を失った森会長は辞任に追い込まれるのか。

   東京都の小池百合子知事をはじめ、外堀を埋める動きが加速している。

  • 外堀が埋められた森喜朗会長
    外堀が埋められた森喜朗会長
  • 外堀が埋められた森喜朗会長

「IOCの露骨な豹変は今に始まったことではない」

「Absolutely Inappropriate!」

   IOC(国際オリンピック委員会)が2021年2月9日、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)に「最後通告」を突きつけた非難の言葉は強烈な表現だった。「Absolutely」は「絶対に」「完全に」「無条件で」という意味。「Inappropriate」は「不適切」「不穏当」という意味だ。森会長の女性差別発言を「完全に不適切だ」と問答無用に切って捨てた。

   この断罪の言葉は、IOCの公式サイトに掲載された「オリンピック・ムーブメントにおける男女平等に関する声明」の中で、森会長の発言を引用したなかで使われた。

   声明では、

「過去25年間、IOCはスポーツにおける女性の進出に重要な役割を果たしてきた」

とIOCの立場を強調。そのうえで、

「森会長の最近の発言は『Absolutely Inappropriate』で、IOCの公約や改革指針の五輪アジェンダ2020に矛盾している」

とバッサリ斬り捨てた。

   そして、森会長の進退には言及しなかったが、11項目に及ぶ取り組みの成果を強調しながら、

「IOCは男女平等や反差別などの取り組みを引き続き提供していく」

と、森会長がトップにいる日本の五輪組織とは「別路線」であるかのように記したのだった。

   森会長の発言があった翌日の2月4日、森会長の謝罪会見を受けてIOCが出した「問題は決着したと考えている」という終了宣言の声明とは正反対だ。森会長が記者会見でブチ切れして国内外の世論を激昂させ、スポンサーからも非難の声が続出したため、慌てて軌道修正を図ったとみられる。

   スポーツニッポン(2月10日付)のコラム「記者の目:IOCまたしても犯した同じ過ち... 批判の矛先変わる前に慌てて『最後通告』」で、藤山健二編集委員はIOCによる事実上の「森会長への辞任勧告」だと指摘する。

「IOCの朝令暮改は今に始まったことではない。昨年(2020年)3月には理事会で東京五輪を『予定どおりに開催』と決議したにもかかわらず、5日後に延期を発表。選手たちや各国五輪委からの思わぬ反発が理由だ。その時世論を見誤ったIOCは、1年後にまた同じ過ちを犯した。森会長の発言内容や国際世論を確認する前に早々と『謝罪したので問題は終了』と幕引きを図り、墓穴を掘った。しかも今回は世論だけでなくスポンサーやボランティアまでが抗議の声を上げ始めたため、批判の矛先が自分たちに向けられる前に、慌てて新たな声明を出したというのが実態だ」

   そして、こう結ぶのだった。

「IOC自身が2014年に定めた『アジェンダ2020』の『男女平等』という最重要項目を、事もあろうに組織委員会のトップが否定も同然の発言をしたのだから、辞任に値するのは当然だ。IOCから最後通告を突きつけられた形となった森会長と組織委が、2月12日にどんな決断を下すのか、世界中の目がTOKYOに注がれることになる」

   元JOC(日本オリンピック委員会)理事で、五輪選手団本部員を5大会連続で務めた春日良一氏は、2月10日放送のフジテレビの情報番組「とくダネ!」に出演。今回のIOCのダメ出し声明についてこう解説した。

「IOCの基本方針は組織委員会の人事には不介入ですが、森氏が身を引かないと東京五輪自体が危うくなる可能性があるぐらいの重いメッセージです」

「金メダル級の女性蔑視」に世界中のメディアが怒った

突然豹変して森喜朗会長を切り捨てたバッハIOC会長
突然豹変して森喜朗会長を切り捨てたバッハIOC会長

   このIOCの豹変ぶりには、海外メディアも呆れた。中日スポーツ(2月10日付)「IOC露骨な手のひら返し 森喜朗会長は『絶対的に不適切』風見鶏ぶりに海外メディア苦笑い」が、こう伝える。

「露骨な手のひら返しに世界も苦笑した。AP通信のハリス記者は『IOCは先週に、今回の問題は解決したものと考える、と言いながら、ここに来て絶対的に不適切と強烈な言い回しに変更。その一方で、いまだにモリを(会長職を続けるよう)後押ししている』と皮肉ツイート。同通信社は『IOCは今回の声明で自身のジェンダー平等の信頼性をアピールしている。しかし、IOC理事会の女性は15人中5人だ』と報じた。英BBC放送は『謝罪会見後、IOCは問題は解決したと言っていた。ただでさえ、コロナ禍での五輪開催に厳しい目が向けられるなか、(謝罪会見からの)5日間で、今回の問題が日本の組織委員会とIOCに大きな困惑とダメージをもたらしたということだ』と報じ、英ロイター通信も『IOCが異例の強い干渉を行った』と伝えた」

   IOCが森会長にダメ出しをした背景には、ますます燃え盛る海外メディアの非難の広がりがある。

   朝日新聞(2月10日付)「『金メダル級の女性蔑視』森氏発言、海外でも批判続々」が、こう伝える。

「『金メダル級の女性蔑視』。国際人権団体『ヒューマン・ライツ・ウォッチ』は声明で森氏の発言をそう論評した。声明は、複数の医大が入試結果を操作して女性の合格者数を抑えたことや、女性が結婚後も元の姓を名乗ることが難しいこと、性暴力被害を訴えにくいことに触れ、日本社会に今も根強く残る女性差別の是正に本腰を入れるよう求めた」
「仏紙ルモンドは森氏の発言を『年老いた日本の指導者たちの(男女間の不平等についての)深い無理解ぶりを示すものだ』と報じた。英日曜紙オブザーバーは、英国の地方議会でオンライン審議中に暴言を吐いたり怒鳴ったりする男性議員を女性職員が画面から退場させた事例を紹介。『このビデオクリップを誰かモリヨシロウに見せてあげてほしい』とつづった」

森氏がJOC山下泰裕会長の「反旗」にショックな理由

   バッハ会長は3月上旬のIOC総会で再選を目指しており、こうした国際世論の非難を浴びている森会長をかばっては再選が危うくなる。一方、バッハ会長に切り捨てられた森会長は強力な後ろ盾を失うことになる。組織委は2月12日に理事会と評議員会メンバーによる臨時合同会合を予定しており、森会長が改めて謝罪した上で有識者に意見を求める方針だ。会合は「懇談会」の形をとっており、「会長人事」には触れない予定だ。

   しかし、毎日新聞(2月10日付)「『森氏辞任を』世論うねり 臨時会合火消しを図る」は、12日の会合が大荒れになるだろうと予想する。

「組織委は(会合で)スポーツを通じて男女平等や多様性を推進するプロジェクトチームを発足させる見通しで、幕引きの場としたい考えだ。しかし、『(森氏に)おきゅうを据えた形になればいい』という声も内部から聞こえる。『逆ギレ』会見と形容された4日の森氏の記者会見。大会関係者は『完全に失敗だった』と指摘する。追い詰められた組織委幹部は『政府や東京都からこのままでは収まらないと言われた』と明かす」
IOCからダメ出しされたと報じるロイター通信(2月9日付)
IOCからダメ出しされたと報じるロイター通信(2月9日付)

   政府や東京都も水面下で見放す動きがあるようだ。

   森会長の外堀は着々と埋められている。

   その一つが、森会長の庇護の元にあったJOCの山下泰裕会長の「反旗」だ。山下泰裕会長は定例会見で森氏の発言について聞かれ、

「(発言を撤回、謝罪しているので今さら是非は論じられないが、としながら)いかなる種類の差別も認めないオリンピズムの根本精神に反するもので、極めて不適切であったとあらためて強調したい」

とキッパリ語った。

   この山下泰裕会長の発言は、森氏にとってショックなものであるに違いない。というのは、そもそも森氏の「女性差別」発言は山下泰裕会長を「激励する」ために出たからだった。

   日本経済新聞(2月10日付)のスポーツ面コラム「スポーツの力:旧態依然、蔑視発言」を書いた北川和徳編集委員によると、森会長が問題発言をしたJOC臨時評議委員会の場では、本来ならメンバーではない森氏は発言に立つ立場ではなかった。会場にいた評議員は18人で、ほとんどがリモート参加だった。テーマは、女性理事を40%以上に増やすガバナンスコードの問題だった。

   北川和徳編集委員は、こう説明する。

「森会長は議事の終了後にあいさつした。内容はほぼ雑談だった。山下泰裕会長らJOC執行部にはスポーツ界に絶大な影響力を持つ森会長の後ろ盾を強調し、競技団体に(女性理事登用の)改革を促す意図があったと想像する。森会長もそれを察して話題を選んだのだろう。皮肉なことに、それで飛び出したのが女性蔑視ととれる発言だった」

というわけだ。

(福田和郎)

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