展示会営業の専門家に聞いた 中小企業でもできるオンライン展示会のコツ

   「この1年、まともに営業できていません......」。こうした声を中小企業からよく耳にします。既存顧客の売り上げで、なんとか凌いできたものの、気がつけば新型コロナウイルスの感染拡大から1年が経ち、新規営業については先細っている会社は多いのではないでしょうか。

   そこで今回は、中小企業でも費用ゼロでオンライン展示会を開催する方法を指南している展示会営業コンサルタントの清永健一さんに、そのコツを聞きました。

  • コロナ禍で多くの展示会が中止・延期になった
    コロナ禍で多くの展示会が中止・延期になった
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「展示会が中止...」そのとき、どうすればいい?

――新型コロナウイルスの感染拡大から1年が経過しました。新規営業が先細るなか、中小企業の営業コンサルティングで、どのような声をお聞きですか。

清永健一さん「私のクライアント企業は、リアル展示会に積極的に出展しておられたところが多いので、
『毎年出ていた展示会がコロナで中止になってしまった。これまで、一年分の見込み客の名刺を展示会出展で集めていたのに、どうすればいいのか......』
『予定されている展示会が、今後本当に開催されるかどうかわからない。これでは事業計画を立てられない』
という、リアル展示会の開催中止や延期に、どのように対応すればいいのか、困惑された声がたくさんあります。
また、展示会に関わらず、
『接触自粛で営業活動がまったくできない』
『見込み客に電話しても、相手がテレワーク、在宅勤務なのでつながらない』
『新しい営業施策に取り組まなければいけない。でも、何をやったらいいかわからない......』
という声が増えています。先日も、年商50億円の業務用食品加工機製造業から、
『海外を含めて年間17回出展していた展示会がすべて中止になってしまった。これでは新規売り上げをつくれない』
との相談を受けました」

――年間17回の展示会の出展がゼロになってしまうとは、かなり業績に響きますね。そこで、自社で「オンライン展示会ができる!」というコンセプトのご提案はとてもおもしろいと思うのですが、大事なポイントはどのようなことなのでしょうか。

清永さん「自前オンライン展示会の開催を成果につなげるために、もっとも重要なのは、『〈売る人〉から〈教える人〉になる』ということです。せっかくオンライン展示会サイトを開設しても、発信している情報が、自社商材の性能やスペックに関するものだけでは、既存のホームページと同じですから、成果が出るはずはありません。
オンライン展示会では、見込み客の悩み解決に役立つ情報を発信することが重要なのです。そのために、4つの問いからなる「コンセプト検討シート」をつくってもらっています。
具体例でお伝えしましょう。をご覧ください。
この図は、名古屋市に本社があるオフィス家具メーカー、トヨセット株式会社の『コンセプト検討シート』を少しデフォルメしたものです。トヨセットさんが売りたい商材は、椅子や机などのオフィス家具です。でも、だからと言って、椅子や机のサイズや価格、機能、スペックなどの情報を『オンライン展示会』として発信したところで、見込み客は振り向いてくれません。
そこで、トヨセットさんは、この「コンセプト検討シート」をつくり込み、『コロナ対策オフィス オンライン展示会』というコンセプトを練り上げたのです。『椅子や机などのオフィス家具を売る人』から『ウィズコロナ時代のオフィスの環境整備について教える人』になったということです。このコンセプトに基づいて、記事や動画をオンライン展示会サイトに公開しつつ、定期的にオンラインセミナーを開催して見込み客をリスト化。お取引先として関係を強めていくというのが、私が提唱している「自前オンライン展示会」です。

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コロナ禍で痛感した「勢い」の大切さ

――なるほど。しかし、それでも手をこまねいている中小企業は少なくありません。

清永さん 「企業経営には、『勢い』が必要です。私自身、今回のコロナ禍でそのことを痛感しました。コロナ禍によって2020年3月から7月までの5か月間、大規模展示会が次々中止になりました。こうなると出展社は『仕方ないなぁ』とつぶやくしかありません。こうして社内に停滞ムードが漂い、『勢い』が失われていくのです。
そうならないためには、自社でコントロールできる範囲を増やすことです。『自前オンライン展示会』の開催は、まさに自社でコントロールできる範囲を広げていく取り組みです。
その名のとおり、オンライン展示会を自前で開催しますから、開催・中止を自社で判断することができます。そもそも、オンライン開催なので、コロナ禍などの非常事態であっても開催できます。さらに、『自前オンライン展示会』サイトのコンテンツの充実やオンラインセミナーの実施を通じて、これまで見込み客との接点づくりを代理店などに依存していた会社も、見込み客を自分たちの手で集客する力がつきます。
そして、自己集客した顧客をオンラインセミナーでの啓蒙やオンライン商談などによって、まさに自力で顧客を獲得していくことができるようになるのです。
しかも、「自前オンライン展示会」に取り組む過程で、無理なく社内のDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進むという副次的効果もあります。『自前オンライン展示会』の開催を通じて、社内に『勢い』を取り戻してほしいと強く思います」

(聞き手 高井信洋)

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プロフィール
清永 健一(きよなが・けんいち)
展示会営業コンサルタント
中小企業診断士

神戸大学経営学部卒業後、メガバンク系コンサルティング会社など複数の企業で手腕を発揮。2015年に独立、株式会社展示会営業マーケティングを創業する。展示会のプロフェッショナルとして、展示会主催者や出展企業などにそのノウハウを伝えている。
展示会の専門家としてNHKラジオ総合第一に出演。行政や公益法人、金融機関、各地の商工会議所ほか、多数の講演実績がある。著書は「中小企業のDX営業マニュアル~オンライン展示会をきっかけにしたスムーズな営業改革術~」「飛び込みなしで『新規顧客』がドンドン押し寄せる『展示会営業(R)』」ほか。

高井 信洋(たかい・のぶひろ)
高井 信洋(たかい・のぶひろ)
クラウドパワーパートナーズ株式会社 代表取締役
2013年に創業。テレワーク・クラウドソーシング活用した事業開発コンサルティングとして事業を開始した。現在、在宅翻訳者3000人をネットワークし、IT・マーケティング業界向けの翻訳・メディア編集をサポートする「あなたの翻訳チーム」を提供している。
テレワーク・リモートワーク分野での執筆、講演、コンサルティングなどを行うほか、テレワーク経営のためのサービス・専門家を探す「テレワークソリューションバンク」を運営している。
テレワークソリューションバンク:https://www.telework-bank.com/
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