2024年 4月 20日 (土)

「テクノキング」になったテスラCEOの次なる関心?

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   企業の役員の肩書きは、比較的自由だ。銀行のトップは社長ではなく「頭取」が主流であり、 スタートアップ企業の「代表取締役医師」が自身の私生活を巡るスキャンダルの責任を取って取締役に降格した、というニュースも最近報じられた。

   ここからは米国の話になるが、電気自動車(EV)で世界最大手のテスラが、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)に「テクノキング・オブ・テスラ」という肩書きを新たに加えたと、当局に届け出たことが話題になっている。

  • イーロン・マスクCEO、新たに「テクノキング」の肩書(テスラの公式サイトより)
    イーロン・マスクCEO、新たに「テクノキング」の肩書(テスラの公式サイトより)
  • イーロン・マスクCEO、新たに「テクノキング」の肩書(テスラの公式サイトより)

「シリコンバレーの異端児」マスク氏ならでは

   「テクノキング・オブ・テスラ」――。シンセサイザーの奏でる電子音が聞こえてきそうだが、米国では「テクノロジーの王様」との意味で受け止められているという。前例のない肩書きではあるが、型破りで「シリコンバレーの異端児」として知られるマスク氏ならでは発想だと、米国で持て囃されている。

   日本でも時折見かけるようになったテスラのEV。2020年の販売台数は世界で50万台程度に過ぎず、950万台を超えるトヨタ自動車グループなどの既存メーカーに遠く及ばない。それでも株式市場の期待も反映している時価総額では、2020年に世界の自動車業界で首位に立った。

   世界の潮流が脱炭素に向かう中で、テスラの技術力が評価されているからだ。その開発や生産の陣頭指揮を執っているのがマスク氏だ。

   創業したテスラをここまで成長させただけに限らず、同じく創業した宇宙企業の「スペースX」はロケットの打ち上げに次々成功している。また、マスク氏の設立した財団が大気や海水の中から二酸化炭素(CO2)を除去する技術の競技会を開くと発表。賞金はマスク氏が拠出する。

   かつてSNSでテスラ株式の非公開化に言及して、米当局から警告を受けるような自由奔放さはあるものの、テスラに対する市場の評価はマスク氏の独創性と高い技術力に対する期待を反映していると言えよう。

CFOには「マスター・オブ・コイン」の肩書き

   そのマスク氏の次の関心は、「テクノキング」の肩書きに合わせて届け出たテスラの別の役員の新たな肩書きから透けて見える。ザック・カークホーン最高財務責任者(CFO)の肩書きに加わった「マスター・オブ・コイン」だ。

   テスラは2021年2月、保有する現金を使って、代表的な暗号資産(仮想通貨)であるビットコインに15億ドル(約1640億円)を投資したと公表。まずは米国でテスラのEVをビットコインで購入できるようにした。

   米国では2020年に一部の金融機関でビットコインを金融資産として扱う動きが広がっていたものの、事業会社がこれほどの規模で乗り出すのは異例。「マスター・オブ・コイン」の肩書きには、ドルなどの法定通貨に基づく既存の考え方を超越したマスク氏の発想があるのかもしれない。

   そんな「絶好調」のマスク氏とテスラにとって、今後の死角となりそうなのが、米国と中国の関係悪化だ。テスラが上海にEV工場を建設する際には、外国自動車メーカーとして初めて単独出資の現地法人の設立が認められ、市場開放をアピールしたい中国側から優遇されていた。

   この上海工場の順調な立ち上がりがテスラ躍進の原動力にもなっているが、米バイデン政権が中国に示している強硬姿勢を背景に、中国でテスラへの風向きが怪しくなってきている。中国政府が軍など機密情報を扱う部門に対して、周囲を撮影する機能があるテスラ車の使用を制限しているとの報道もあり、今後もさまざまな理由をつけて中国政府がテスラ車に規制を設ければ、最大市場での売り上げは失速しかねない。

   「天才」が中国とどうやって渡り合うかも注目だ。(ジャーナリスト 済田経夫)

姉妹サイト

注目情報

PR
コラムざんまい
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中