2024年 4月 24日 (水)

ワクチン特許の一時停止 どう進める「国際協調」 途上国を味方につけた米国の思惑は?

出遅れ日本に批判 EUからのワクチン輸出4割占める

   フランスのマクロン大統領は「供給増には、ワクチンと原材料の流通が止められてはいけない。現在はアングロサクソンが多くを止めている」と、米国や英国の自国優先を批判。フォンデアライエン欧州委員長も「EU域外(EU加盟国向けと同じ)に約2億回分が供給されている」と、EUが域外への供給に努めているとし、米英との違いを強調している。

   欧米の言い争いもさることながら、地球規模で大きく眺めると、中国が自国製ワクチンをアフリカなどに大量に供給するなど、米中対立の中でワクチンが外交の重要なツールとなっている。米国の特許一時停止論も、中国への対抗の一環との見方が一般的だ。

   途上国への支援では、ワクチンを共同購入して低所得国にも公平に分配する枠組み「COVAX(コバックス)」があり、21年中に20億回分のワクチン確保をめざしている。これを進める資金として、2月の先進7か国(G7)首脳テレビ会議で、米国40億ドル、日本2億ドル、EU5億ユーロ(約640億円)など計75億ドル(約8000億円)の拠出を表明している。

   この問題は日本も「弱点」」がある。ワクチン開発では事実上の「蚊帳の外」で、ワクチン確保に出遅れ、懸命に巻き返した結果、EU輸出承認済みのうち4割を日本向けが占める。その分、途上国に回るワクチンが少なくなるとの批判も招きかねない。

   そんな事情も踏まえ、日本政府はCOVAXに追加で7億ドル(約770億円)を拠出することを検討している。

   ワクチンをめぐり、協力、競争、対立が複雑に絡み合う。そうしたパワーゲームは不可避であっても、貧富の差を超えて人類一丸となって新型コロナウイルスを克服するというモラル的な要請は言うまでもない。途上国までワクチンが普及しない限り、世界経済全体の回復は望めないという経済的な必要からも、日米欧を中心に、もっと資金を出し合って事に当たることが不可欠だ。

   特許の停止をめぐるこの騒動は、そうした国際的な協調の必要を改めて教えている。

(ジャーナリスト 岸井雄作)

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