2024年 4月 18日 (木)

お客との「キャッチボール」をオンライン化 ソフトバンクの商談数は1.2倍に急伸(藤崎健一)

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   前回は、スタジオ02の大関暁夫社長から「お客様との有効面談は営業のオンライン化でどのように変わるか」について、解説してもらいました。

   有効面談とは、商談できる関係をつくるための営業活動です。具体的には、情報の提供・ニーズの把握・商品説明といった商談に至るまでの「お客様とのキャッチボール」のことです。今回は、そのキャッチボールを上手にオンラインで実践している具体例をご紹介します。

  • どうすれば、うまくいく? オンラインで「お客様とのキャッチボール」(写真はイメージ)
    どうすれば、うまくいく? オンラインで「お客様とのキャッチボール」(写真はイメージ)
  • どうすれば、うまくいく? オンラインで「お客様とのキャッチボール」(写真はイメージ)

3つのステップでアプローチ

   最初に、ソフトバンク株式会社の宮内謙会長が、前月の決算会見で発表した内容からご紹介します。

◆ Case study 1 ソフトバンク、お客様との有効コンタクト数は5倍、商談数は1.2倍に急伸!

   メディア各社の取材記事を総合して、私の経験から分析してみると、それはまさに営業マンが対面営業で行ってきた「キャッチボール」を、見事にオンライン化しているといえます。

   といっても、闇雲にオンライン化しているわけではなく、お客様の購買ステージに合わせ、キャッチボールをオンラインで実施するのです。

   段階別に説明します。

ステップ1:ニーズの喚起

   まだニーズが顕在化していないお客様向へは、興味・関心を持って頂くためにニーズを顕在化させるための情報をメールで提供しています。

Example:「中小企業の00%は電子決済を導入し、リモートワークでの業務効率の向上に成功!」

   常日頃、業績向上の為に奮闘している中小企業経営者なら、中小企業の仲間のこういった情報は目に留まり、興味を抱いてもらえるでしょう。

ステップ2:課題解決のアドバイス

   次に、ニーズが顕在化しているお客様へは、購買メリットや導入イメージを持ってもらうために、課題解決の具体的な事例をメールで紹介します。

Example:「契約書締結までの時間を30秒に短縮。さらに、年間30万円の収入印紙代をゼロに!」

ステップ3:詳細な商品説明と購買不安の払拭

   最後に、購買意欲がさらに高まっているお客様向けには、商品ごとの専門担当者が具体的な機能や価格説明をするメールを送付したり、質疑応答を設けたウェブセミナーを開催したりていします。

   このように、従来、営業担当が「ピン」で行っていた商談前の「キャッチボール」をオンライン化し、営業担当は購買意欲が高いお客様との商談に集中できるようにしたのです。

   リアルの営業担当の活動量と比較すると、メールによるお客様との接触量は数十倍、顕在化したお客様への課題解決のアドバイスメールやウェブセミナーでの商品説明による接触量は実に5倍以上になります。

潜在顧客を発掘 ニーズを顕在化する情報発信のコツ

◆ Case study 2 キャッチボールを「業界ニュース」と「調査架電」で実施。毎月50件以上の顕在客を発掘

   SNSの炎上を防止するさまざまなサービスを提供しているIT系サービス会社D社の事例です。クチコミによる商品やサービスの伝播は強力な販売促進効果が見込まれます。半面、ネガティブなクチコミは企業ブランドを毀損するリスクを孕んでいます。D社は、このように「諸刃の剣」となっているSNSでの炎上防止サービスを提供している会社です。

   顧問やグループ会社からの紹介営業中心だった同社ですが、緊急事態宣言の発出により、営業環境は一変しました。紹介件数が減少し、訪問営業ができない。お客様とのキャッチボールができない中で、商談件数が伸び悩みました。

   そこで、メールとホームページを活用して、お客様との非対面「キャッチボール」を開始しました。まずは、リストとコンテンツの整備です。リストは、営業担当が個別管理していた名刺を集め、一元管理すると数千件にのぼりました。

   コンテンツ整備では、自社のホームページに注目すべき炎上ニュースや炎上リスクの把握の仕方など、ニーズを喚起させるお役立ち情報を掲載しました。

   メールニュースはタイトルで目を引くように、「SNS炎上防止ニュース」と命名ました。メール配信で悩ましい文章の作成については、構成内容を雛形化して作成の手間を極力省く工夫をしました。扱う内容は、最近発生した炎上ニュースの詳細、その炎上ニュースに着目した理由、さらにこのような炎上を防止するためのコツを端的にまとめます。

   ちなみに、「SNS炎上防止ニュース」作成の副次効果として、炎上した業界の課題に詳しくなれるということがあげられます。

   「SNS炎上防止ニュース」の特徴は、売り込みメールではなく、ニーズ喚起のメールなので、お客様から嫌われるリスクがありません。加えて、お客様がホームページのどのページを閲覧したかを計測することができます。ニュース記事のみの閲覧であれば潜在顧客、解決事例やFAQ(よくある質問)の閲覧であれば顕在顧客といった具合に、購入意向の判別・分類が可能になります。

   潜在顧客に対しては引き続き継続的な情報提供を行ない、ニーズの顕在化を待ちます。ニーズ顕在顧客に対しては、架電調査をします。

「いつも『SNS炎上防止ニュース』をご覧いただき、ありがとうございます。もっと役立情報をご提供したいので、取り組み状況をお聞かせください」

と、商談に有効となる情報を調査、ヒアリングします。

   顕在顧客に対しては通話率も調査回答率も非常に高くなり、ここでニーズを正確に把握することでその先で有効な商談に持ち込める確率も高くなるのです。

   現在D社は、毎月約3000件の業界ニュースを配信し、毎月50件程度のニーズ顕在顧客を発見。セミナー誘導や営業の商談へ繋ぐことができるまでに至っています。

   次回は、ウェビナーを有効活用したオンライン営業の事例とオンライン営業を阻む要因について、解説します。(藤崎健一)

※このコーナーの筆者である大関暁夫氏、藤崎健一氏が登壇する無料オンラインセミナーが、毎月開催されています。5月は25日(火)に「オンライン化で変わる新規営業~最短距離で結果をつくる」をテーマに開催予定です。
セミナー内容詳細およびお申し込みは、こちらまでお願いいたします。

大関 暁夫(おおぜき・あけお)
株式会社スタジオ02 代表取締役 企業アナリスト
東北大学経済学部(企業戦略論専攻)卒。1984年、横浜銀行に入行。現場業務および現場指導のほか、出向による新聞記者経験を含めプレス、マーケティング畑を歴任。全国銀行協会出向時には対大蔵省(当時)、対自民党のフロントマンも務めた。中央林間支店長に従事した後、2006年に独立。銀行で培った都市銀行に打ち勝つ独自の営業理論を軸に、主に地域金融機関、上場企業、ベンチャー企業のマネジメント支援および現場指導を実践している。
メディアで数多くの執筆を担当。現在、J-CAST 会社ウォッチ、ITメディア、BLOGOS、AllAboutで、マネジメント記事を連載中。
1959年生まれ。
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