2024年 4月 19日 (金)

経団連・中西会長が異例の途中退任 4年後の登板を本命視される、あの経営者

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   日本経済団体連合会の中西宏明会長が2021年6月1日付で退任し、後任に住友化学の十倉雅和会長(経団連審議員会副議長)が就く人事が決まった。

   リンパ腫の治療をしながら会長を務めてきた中西氏は療養に専念することになり、日立製作所の会長職も退いた。経団連会長の任期は2期4年が通例だが、1年を残した途中退任となる。十倉氏も2期務める見込みで、財界では早くも4年後を見据えて次期会長の名前も浮上している。

  • 経団連の中西会長が異例の途中退任(写真は、経団連会館)
    経団連の中西会長が異例の途中退任(写真は、経団連会館)
  • 経団連の中西会長が異例の途中退任(写真は、経団連会館)

中西会長、「就活ルール」廃止に女性副会長の就任に尽力

   経団連会長は、かつて「財界の総理」とまで呼ばれたほどの経済界のリーダー的な存在。東レで社長や会長を歴任した榊原定征氏(現関西電力会長)の後任として、2018年に就任した中西宏明氏は、まず大学生の就職活動に関する「経団連ルール」の廃止に乗り出した。春の大学卒業に合わせて一括採用する仕組みは、多様な人材を必要とする企業の現状からかけ離れており、通年採用が広がるきっかけとなった。

   他にも経団連への加入条件を緩和してIT系など新興企業に門戸を広げたり、経団連初の女性副会長としてディー・エヌ・エー(DeNA)の南場智子会長を指名したりして、旧来の「重厚長大型」企業が中核を占めている経団連自身の改革にも尽力した。

   しかし、2019年5月にリンパ腫が判明して入院。その年の9月に復帰を果たしたが、2020年7月に再発。病室から経団連や日立の執務に当たり、メディアのオンラインインタビューにも応じていたが、療養が必要と判断した。

   一方の十倉氏は、経団連では2015年から19年に副会長を務め、19年からは審議員会副議長だった。経団連には会長に就任する条件として「現職の副会長か副会長経験者」という慣例があり、今回は中西氏が経団連事務総長を介して十倉氏を指名したとされる。

   住友化学からは2010年から14年に米倉弘昌氏(故人)が経団連会長を務めたことがあり、出身企業としても支えられると判断された模様だ。

父も務めた会長職、「本格政権」の看板を引き継ぐ大物!

   会社の規模と経営者の実力は分けて考えるべきだが、経済団体のトップは出身企業の「社格」が何かとつきまとう。

   前任の榊原氏の東レ、その前の米倉氏の住友化学がいずれも売上高2兆円規模だったのに対し、企業向けだけではなく一般消費者向けの製品を数多く手掛けて知名度が高く、連結売上高が8兆円を超える日立のトップだった中西氏が経団連会長に就任すると、「大物会長」「本格政権」との期待が高まった。こうした意味で今後の経団連会長の候補として期待を寄せられているのが、トヨタ自動車の豊田章男社長だろう。

   世界でも一、二を争う自動車メーカーであり、豊田氏自身も2009年の社長就任後の実績は申し分なく、このコロナ禍でも増益を果たした。おまけに実父の章一郎氏も、経済団体連合会時代の経団連で会長を務めた。

   豊田氏の慶応大ホッケー部の後輩であり、丸紅で財界スタッフを長く務めた元秘書部長が2020年にトヨタに入社した際には、「財界活動に向けた布石ではないか」と、ざわついたこともあった。

   だが、一方で「トヨタが経団連に距離を置き始めたのでは」との見方も浮上している。2021年6月の定時総会をもってトヨタ自動車副会長の早川茂氏が経団連の副会長から審議員会副議長に移るが、その後任の副会長をトヨタは出さない。少なくとも旧経団連と日本経営者団体連盟(日経連)が合同して今の経団連になった2002年以降、トヨタは会長か副会長を常に出してきており、それが途切れることをもって、距離を置くのではとする見方だ。

   それでも、2022年以降に豊田氏が経団連副会長に就任すれば、状況は一変して「ポスト十倉」の最有力に浮上する。4年後に向けた駆け引きは、すでに始まっているのかもしれない。(ジャーナリスト 済田経夫)

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