2024年 4月 19日 (金)

東京五輪「観客どんどん入れよう!」 強気の菅首相に経済界も総スカン(1)

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   東京五輪・パラリンピック開催まで残り45日を切った。菅義偉首相と国際オリンピック委員会(IOC)は何が何でも開催を強行する構えだ。

   焦点は無観客か有観客か。有観客ならどのくらい入れるかに移っている。菅義偉首相はできるだけ多く入れたがっている。

   しかし、それは「トンデモなく危険だ」と専門家は指摘するのだが......。

  • さまざまなイベント会場となる青海アーバンスポーツパーク(大会組織委の公式サイトより)
    さまざまなイベント会場となる青海アーバンスポーツパーク(大会組織委の公式サイトより)
  • さまざまなイベント会場となる青海アーバンスポーツパーク(大会組織委の公式サイトより)

「5000人」「1万人」とバナナの叩き売りか!

   東京五輪開催の焦点になっている、観客を入れるかどうか――。国際オリンピック委員会(IOC)は2021年6月9日、理事会後にオンラインで記者会見を開き、東京五輪の観客の上限について6月末までに決めると発表した。

   主要メディアの報道をまとめると、実務責任者のクリストフ・デュビ五輪統括部長は、無観客にするか、有観客にするかについては、

「現段階での決定はない。期限は6月末ごろだ」

と述べたのだった。

   しかし、観客の問題については、日本側は現在、10都道府県に出されている緊急事態宣言の期限となる6月20日前後に判断する見通しだ。しかも、「観客を入れる」ことが大勢になっているという。

   朝日新聞(6月9日付)「『五輪に観客』強気の政府 一時は無観客... ワクチン接種加速で勢い」が「有観客での開催」に前のめりになっている政府の思惑をこう伝える。

「今夏の東京五輪・パラリンピックで、政府や大会関係者の間で『有観客で開催』との主張が勢いを増している。わずか1か月ほど前には、政権内にも『無観客』を受け入れざるを得ないとの空気があった。大会組織委員会の橋本聖子会長は4月28日、『無観客の覚悟は持っている』と発言。官邸幹部も『〈緊急事態宣言でこれだけ我慢して生活しているのに五輪かよ〉という気持ちが国民に広がっている』と、五輪への逆風を前に弱音を漏らしていた」

   ところが、4月下旬からワクチン接種が本格化。五輪の準備に向けても、「職域接種が始まれば、五輪に前向きな雰囲気がもっと出る」と強気の言葉が飛び交うようになった。

   今のところ、政権内では緊急事態宣言下の「収容人数の50%を上限に最大5000人」との制限に準じた形での開催が検討されている。「1万人」との強気の声もあり、「有観客を前提にどこまで入れられるか」と話す官邸幹部もいるという。

   朝日新聞はこう続ける。

「一方、政府のコロナ対策に関わる専門家からは、前のめりの政権にクギを刺す指摘も。専門家が特に懸念するのは『五輪がJリーグやプロ野球と異なり〈特別な祭典〉であること。幅広い客層が競技に熱狂し、人の動きも盛んになる。五輪と普通のスポーツを同一に語れない』。お盆や夏休みと重なり、感染リスクはさらに高まる恐れもある」

   コロナ対応にあたる政府の官僚も有観客での開催を不安視する。6月下旬で緊急事態宣言を解除すれば、その後の感染再拡大は免れないと指摘。「五輪は開いて終わりではない。パラリンピックも含めて9月上旬まで続く」と、期間中のリスク管理の難しさを語る。

   官邸幹部は「観客を入れ過ぎて、何か起きて非難されるリスクもある」と不安を隠さない。五輪がパンデミックに火をつけたとなれば、国内だけでなく、国際的にも批判を浴びるからだ。

期間中に観客だけで310万人の巨大な「人流」

観客を入れての開催にこだわる菅義偉首相
観客を入れての開催にこだわる菅義偉首相

   菅政権が強引に「有観客」で開催した場合、どれだけの危険な「人流」が起こるか。朝日新聞と東京新聞がそれぞれ独自の「試算結果」を発表した。朝日新聞は、メイン会場が密集する東京臨海部の人の流れを調査した。朝日新聞(6月10日付)「東京臨海部、有観客の五輪なら1日6.8万人 独自試算」が、こう報告する。

「政府などが検討している『収容人数の50%を上限に最大5000人』の有観客で開催した場合、7会場が集まるお台場、有明など東京臨海部の半径1.5キロ圏内に、1日あたり最大で延べ6万8000人の観客が見込まれる。大会組織委が公表している競技日程と会場の収容数をもとに試算した。一帯には国立競技場のものとは別の聖火台をはじめ、大会スポンサーのパビリオンなどが設置予定で、チケットがなくても訪れることができるため、さらに多くの人出が見込まれる」

   なかでも、複数の大会関係者が「人流増が心配だ」と語るのが、お台場と有明をつなぐ「夢の大橋」に設ける聖火台の半径1.5キロにある7会場のエリアだ。このエリアは「トーキョー・ウォーターフロント・シティー」と名付けられた=写真参照

大勢の人の密集が予想される「トウキョー・ウオーター・フロント・シティー」(大会組織委の公式サイトより)
大勢の人の密集が予想される「トウキョー・ウオーター・フロント・シティー」(大会組織委の公式サイトより)

   「チケットがなくても大会に触れられる」という史上初の取り組みとして、聖火台周辺に遊歩道(約2キロ)を設けるほか、競技体験ゾーン、大会スポンサーのパビリオン、大型グッズ販売店なども設置する予定だ。競技は新採用のスケートボードや3人制バスケットボールなどを実施する。

   試算では、観戦者だけで1日最大延べ6万8000人、大会期間中に7会場で延べ70万人が観戦する見通しだが、さらにチケットを持たない人が何万人ここを訪れるか見当もつかない。

   その危険性について、国際医療福祉大学の松本哲哉教授(感染症学)はこう語った。

「(1日)数万人の観客が日本中から来る。観戦後まっすぐ家に帰れば、感染拡大のリスクにつながらないと思うが、五輪は『お祭り』。スポンサー企業の宣伝や催事があれば、多くの人が滞留する。多くの人が集まることで感染リスクになる」

   一方、東京新聞は全42会場の試算結果を出した。東京新聞(6月7日付)「五輪観客『プロ野球並み』の基準ならば310万人 方針決まらず混乱の懸念」が、トンデモない人流のスゴさを伝える。

   国の基準では、緊急事態宣言中の大規模イベントは「収容人数の半分」か「5000人」の少ない方で開催され、プロ野球やJリーグは5000人が入場可能だ。東京新聞は、その条件を五輪に当てはめ、19日間の観客数を試算。国立競技場など収容1万人以上の24会場は5000人、その他の収容1万人未満の会場は半分の人数で設定し、各競技日程に応じて足した。

「その結果、観客数が延べ約310万人になる。このほか、選手と海外からの大会関係者約9万3000人以外に、ボランティアら国内関係者延べ約30万人が出入りする。全42会場のうち25会場が都内に集中する。東京都の尾崎治夫医師会会長は『今の状態であれば、無観客開催が最低限の話』と述べた。観客を入れた場合は熱中症の恐れが生じるし、医療従事者の負担が増えるとも指摘した」

   菅首相は、記者会見でプロ野球などの例を出して、

「対応はできると思っている」

と述べているが、1会場で5000人のプロ野球と、42会場で延べ約310万人が集中する五輪を比較するほうが間違っていると、尾崎治夫医師会会長は指摘するのだった。

   ちなみに310万人という数字は、東京23区の中で、最も人口が多いベスト4である世田谷区、練馬区、大田区、足立区の人口の合計に匹敵する。加えて、それ以外に海外から変異ウイルスを持つ可能性のある人々が多く入ってくるわけだ。また、多くの人が集まるパブリックビューイング(PV)も、組織委が作るものが30会場、地方自治体独自のものが全国で227会場も計画されている(6月1日現在)。

(福田和郎)

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