2024年 4月 27日 (土)

【6月は環境月間】石油会社が石油を売らなくなる日!?

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太陽光発電、洋上風力発電の大型化

   第3章のタイトルが刺激的だ。「石油会社が石油を売らなくなる日」となっている。何を意味しているのか? アラブ首長国連邦(UAE)にある巨大な太陽光発電所を紹介している。東京ドーム166個に相当する土地に太陽光パネル約300万枚を敷き詰める。丸紅が中国の太陽光発電パネルメーカーや政府と取り組む「スワイハン太陽光発電事業」だ。100万キロワットを超す巨大な出力と、1キロワット時あたり3円を切る発電コストの安さが世界を驚かせた。中東は晴天が多く、日射量も多いのが有利だ。サウジアラビアやクウェート、カタールでも大規模太陽光プロジェクトが進む。

   欧州の洋上風力発電の大型化、送電網の効率化にも触れている。1基で1万キロワットを超える風車が出現する日も遠くないという。

   電気自動車(EV)が普及すれば、「石油の終わり」が来るのだろうか? 松尾さんは否定的だ。日本エネルギー経済研究所が将来のエネルギー消費を検証したこんなシナリオを紹介している。

   ・EVや燃料電池自動車などの販売比率が、2030年に30%、50年に100%になった場合、石油需要は30年を頂点に減少に転じる。

   ・その場合でも50年には現状と同じ日量8900万バレルの原油が必要となる。

   つまり、EVシフトが進展しても、なだらかに石油を使い続ける限り、相対的に生産コストの安い中東油田への依存は続く、と見ている。

   だが、石油が安泰なわけではない。フランスの石油メジャー、トタルのトップの「エネルギー利用の正しい組み合わせは天然ガスと再生可能エネルギーだ」という言葉を紹介し、事業のガス・シフトを紹介している。同社の生産量に占める天然ガスの比率は05年には約3割だったが、現在は5割に上昇した。ほかの石油メジャーも同様だ。

   シェルやトタルなど欧州系メジャーは給油所ネットワークを、EV向けの充電所や燃料電池車(FCV)向けの水素供給ステーションへ転用する取り組みを始めたという。「石油会社が石油を売らなくなる日」が来るかもしれない。

   最終章では、日本の選択について論じている。EVの台頭で、日本はエネルギー安全保障上の中東リスクから解放されるわけではないことはすでに触れた。中東の産油国は石油依存の国家体制の転換を迫られている。サウジアラビアは一早く改革に乗り出した。「日本は産油国改革へ手をさしのべねばならない」と松尾さんは結論づける。

   本稿では触れられなかったが、アメリカのシェールオイル革命、中東の再分割の動き、中国の「一帯一路」など、地政学的変化にも多くのページを割いている。それらの複雑化するリスクを「複眼的な視野で見極める力が、より求められるようになっていくだろう」と結んでいる。

(渡辺淳悦)

「『石油』の終わり エネルギー大転換」
松尾博文著
日本経済新聞出版社
1980円(税込)

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