2021年 9月 21日 (火)

東電の新会長に小林喜光氏 経産大臣が「説得」した手腕に課せられた「重すぎる」課題

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東電が抱える課題

   小林氏を迎える東電が抱える課題は多い。列挙すると、(1)原発事故の処理費用を確保のための収益力回復、(2)福島第1原発の処理水の海洋放出、(3)柏崎刈羽原発(新潟県)のテロ対策不備など一連の不祥事の調査と再発防止、(4)脱炭素に向けた取り組み――などになる。

   中長期的な課題である(4)は除き、まず、(1)では、電力自由化により首都圏の販売競争が激化し、新電力のシェアは1月時点で30%近く、全国平均を8ポイント上回る。都市ガスの販売などでも電力の売り上げ減をカバーしきれない。

   政府は、福島第一原発の廃炉など事故処理費用を約21.5兆円と見積もり、うち約16兆円を東電が負担する計画。東電が17年に策定した再建計画で、事故処理のため毎年5000億円程度を確保するとしているが、21年3月期に確保できたのは3778億円にとどまり、計画どおりにいかなければ、将来的に電気料金値上げや税金の投入が必要になる。

   資金確保、収益確保で、特に重要なのが柏崎刈羽原発の再稼働だ。(3)の問題はJ-CAST会社ウォッチ「東電の収益計画、再び暗礁 頼みの柏崎刈羽原発「再稼働」できず......」(2021年4月6日付)で詳報したように、国の原子力規制委員会は2021年3月31日、外部からの不正侵入を検知する設備の点検や改善活動を怠っていたこと、社員が同僚のIDカードを使って中央制御室に不正に入室していたことについて、原子炉等規制法にもとづき、核燃料の移動禁止という商用原発では初めての行政処分(是正措置命令)を出した。

   燃料移動禁止とは、原発を稼働できないという意味で、再発防止のための措置と、規制委による検査には少なくとも1年はかかるとされる。

   6、7号機が稼働すれば1基あたり年1000億円規模の収益改善効果が見込まれる柏崎刈羽原発の再稼働は、東電の経営再建と事故処理費用捻出に不可欠と位置付けられてきただけに、東電の収益計画への影響は大きい。21年3月に中期経営計画のためにまとめた試算では、柏崎刈羽原発の再稼働できない場合、23年3月期に450億円、24年3月期は750億円の利益を押し下げるとしている。

   (2)の処理水の海洋放出は、炉心溶融で溶け出した燃料などを冷却する水と地下水が混じり合った高濃度の放射性物質を含む「汚染水」を処理した水がたまり続けている問題で、J-CAST会社ウォッチ「汚染処理水の海洋放出  原発推進派と反対派それぞれの言い分」(2021年4月16日付)などで報じたように、政府は21年4月、水で薄めてトリチウムの濃度を環境基準以下にした処理水を23年をめどに海洋放出する方針を決めた。だが、風評被害を心配する地元漁業者らの反発は強い。

「原発の地域のみなさんの信頼を失ってしまった。安全の確保や信頼の回復の取り組みを主導するのが第一の使命だ」

   会長就任が内定した4月28日、小林氏は会見で述べた。

   小林氏がいかにガバナンスを強化し、原発の地元住民・自治体との信頼関係をどう再構築していくか。公益企業の親方日の丸体質にどっぷりつかってきた組織が簡単には変われないことは、この間の不祥事を見れば明らかだ。小林氏の過去の「成功体験」がそのまま東電でも通用する保証はない。エネルギー政策という国策を進めるためにも、国(経産省)が、小林氏と二人三脚で責任を果たしていくことが欠かせない。(ジャーナリスト 岸井雄作)

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