2021年 9月 23日 (木)

「東京一極集中」の日本の危機を乗り切るため、「首都移転」を!【防災を知る一冊】

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   9月1日は「防災の日」。1923(大正12)年9月1日に関東大震災が起きてから、まもなく100年になろうとしている。

   また、近年は9月に大型台風が上陸したり、長雨が続いたりして、各地で風水害も発生している。9月は防災、自然災害、気候変動、地球温暖化をテーマにした本を随時、紹介していこう。

   2020年、世界を襲ったコロナ・ショック。感染症の脅威を描いた高嶋哲夫さんの小説「首都感染」(2014年、講談社文庫)は、まさに現実のものとなった。「首都崩壊」(幻冬舎文庫)など、日本のさまざまな危機を描き続けてきたクライシス小説の第一人者が、コロナによって浮かび上がった日本の「弱点」、そして近い将来必ずやって来る東京直下型地震、南海トラフ地震のリスクを指摘したのが、本書「『首都感染』後の日本」である。

   東京一極集中の弊害と、新たな時代にマッチした国家の在り方を提言している。

「『首都感染』後の日本」(高嶋哲夫著)宝島社
  • もし今、東京直下型地震が起こったら……
    もし今、東京直下型地震が起こったら……
  • もし今、東京直下型地震が起こったら……

1980年代に検討された遷都論

   著者は作家の高嶋哲夫さん。慶應義塾大学工学部卒業。同大学院修士課程修了。高嶋さんは日本原子力研究所研究員などの経歴があり、1979年には日本原子力学会技術賞を受賞している元エンジニア。『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞を受賞している。

   小説「首都感染」のストーリーは以下のようなもの。20××年、中国でサッカー・ワールドカップが開催された。しかし、スタジアムから遠く離れた雲南省で致死率60%の強毒性インフルエンザが出現。中国当局の封じ込めも破たんし、恐怖のウイルスがついに日本へと向かった。検疫が破られ都内にも患者が発生。生き残りを賭け、空前絶後の"東京封鎖"作戦が始まった。中国発のウイルスが日本を襲うという設定が新型コロナウイルスを連想させ、話題になった。

   また、小説「首都崩壊」のストーリーはこうだ。マグニチュード8の東京直下型地震が近く起き、損失は百兆円以上に上るという報告書が提出された。地震は発生したが、規模は予想未満だった。だが、これはさらなる巨大地震の引き金だった。東京直下型巨大地震が発生、世界大恐慌を起こす......。

   2つの小説は以上の内容だが、今回のコロナ禍で明らかになったのは、貧弱な日本の危機管理能力、IT後進性、「東京目線」のコロナ対策とその限界だった。本書は、いずれ起こるとされている東京直下型地震、南海トラフ地震の被害を最小限に抑えるための方策を提言。そして、「東京一極集中」の弊害から脱却するため、首都移転を提起している。

   これまでの政府機関の地方移転をめぐる経緯をまとめると、以下のようになる。

1950年代 学会などを中心に首都機能移転を求める提案が出始める
  88年 東京23区内にある約70の政府機関の移転を閣議決定
  90年 衆参両院が国会などの移転を決議
  92年 国会等移転法が成立
  99年 政府審議会が「栃木・福島」、「岐阜・愛知」、「三重・畿央」の3地域を候補地として答申
 2003年 衆参両院の特別委員会が候補地絞り込みを断念
  06年 首都機能移転担当相のポストが道州制担当相に変更

   これを見ると、80年代に社会問題になっていた東京を中心とする地価高騰の鎮静化も期待できるとして遷都論が浮上したが、候補地の絞り込みすらできず、世論も盛り上がらなかった。また、バブル崩壊による財政問題も深刻化し、国会の移転は事実上、立ち消えになった。

   最近では、第3次安倍内閣の主要政策「地方創生」の目玉として、いくつかの省庁の移転案が急浮上。その結果、文化庁の一部機能が2022年度以降に京都市に移転することになった。だから、「首都移転」が現実的な政治的課題になっていないことは明らかである。

   高嶋さんは「首都崩壊」で、岡山県の吉備高原を新首都の候補にしていた。

・自然災害が少ない
・位置的に日本の中ほどにあり、交通の便がよい
・十分な土地がある

などを理由に挙げていた。本書では、吉備高原を候補地とまで書いてはいないが、以下のように指摘している。

「実際に遷都を目指すとなれば、多くの高いハードルがありますが、具体的な候補地を掲げないことには、議論が進まないのも事実です」
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