リモートと出勤併用の「ハイブリットワーク」が急速に増えています。出勤とリモートの併用で個人的には働きやすさがある一方、チームに一体感がなくなったと感じるビジネスマンも多いようです。部下を持つ中間管理職にとっては完全在宅よりも顔が見える分だけ管理しやすいとはいえ、コロナ禍の1年以上ずっと試行錯誤が続いていると感じている人も多いのではないでしょうか。今回は、リモートワーク下の目標管理として注目されている「OKR」をテーマにOKR導入の専門家である株式会社タバネル代表取締役の奥田和広さんに聞きました。そもそも「組織とは何か?」を考える◆OKRとは?OKRとは、ObjectivesKeyResultsの頭文字をとった略語。目的O:Objectiveと2~5個の重要な結果指標となる重要な結果指標(KR:KeyResults)による目標管理手法をいいます。――そもそも、OKRとはなんでしょうか。奥田和広さん「OKRの話に入る前に、そもそも組織とは何か?ということを少し考えていただきたいんです。組織とは本来、『共通の目的』、具体的には組織のビジョン、ミッションや目指す姿というのがあって、そこに人が集まって一緒に働くということをしているはずなんですね。共通の目的や目標を達成するために、コミュニケーションがあるというわけです。組織成立のための3要素・共通目的・協働意欲・コミュニケーション組織の問題とは、この3つのうちのどれかに問題がある。またはすべてに問題があるということが大半ではないでしょうか。改めてOKRを、ひと言でいえば、この3つの要素を回すためのものであるということです。もちろんOKRは目標管理のツールと言われていて、そのとおりなんですが、私は組織の目的、部門の目的や目標をつなぐマネジメントツールであり、コミュニケーションツールだと伝えています。この組織の目的が伝わっていないと、『給料を支払う・もらう』という関係だけになってしまう、『上から落ちてきた数字をただひたすら追う』ということになってしまうこともあります。よくある話で、インサイドセールス部隊をつくったはいいけど、受注につながらないアポの数をひたすら取ってくる問題などがあります。目の前の目標だけに集中してしまい、目的と手段の繋がりが見えず組織が機能しないという現象もあります。数字追うこと自体は悪いことではないのですが、その先に何があるのか、何を達成したいのか、どうなれば理想なのか、といったことを伝えていない、理解していないことで起きる組織の問題は多いですね」OKRをマネジメントツールにする◆OKRの具体的な方法・3か月先のなりたい状態(目的)をチームで定める。挑戦的な目標を掲げる(ムーンショット)・そのなりたい状態(目的)になるための重要な結果(目標)を明確につなげていく。・週1~月2回で短時間の進捗確認や方向合わせ(チェックイン)・毎週、お互いの成果を褒めあう(ウィンセッション)チーム全体で挑戦的な目的を掲げる(ムーンショット):O(Objective)OKRでは3か月くらい先のなりたい状態をチームで定めます。この時、チームとして積み上げて計算してできる目標やゴールではなく、挑戦的な目標を掲げるということがポイントになります。OKRでの目標や達成については人事評価に反映させないで運用します。挑戦的な目的を掲げて当然失敗することがありますが、そこについても前進できたということを重視します。この挑戦的な目的に向けて重要な結果(KR:KeyResults)となる目標をつなげていきます。定期的な進捗確認(チェックイン)重要な結果(KR)を出すための取り組み状況の共有や課題の共有などを行います。毎週お互いに成果を褒めあう(ウィンセッション)挑戦的な目標に向けて取り組んでいて、うまくいかないからこそ良いところに目を向けてお互いに褒めあう。挑戦的な目標を掲げるのはいいですが、できたこともできないこともたくさんでてくるわけです。あくまでも挑戦的な目標に向けての行動ですので、できなかったことではなく、できたことを確認しあうことで来週もがんばろう、というエネルギーにしていくわけです。――目標管理ツールというと会社によっては人事評価との関係を考える方も多いのではないでしょうか。奥田さん「はい。たしかに目標管理ツールというと人事評価と関連付けて考える方も多いですが、私はOKRをコミュニケーションツールだと伝えています。まず、目標管理とは(ピーター)ドラッカーが提唱した概念で、ドラッカーのいう目標管理とOKRは根本的には変わらない。いわばドラッカーの目標管理の発展形としてOKRがあるといったイメージです。ただ、一般的に言われている目標管理とは目標管理『制度』でして、人事部が評価するために目標を管理しているものが大半です。しかし、目標の達成度合いが個人の評価やボーナスに関わるとなれば、高い目標を掲げることはしないでしょう。個人の目標を最優先に考える、他部門よりも自部門優先、自分優先となるわけです。OKRの場合、挑戦的な目標を掲げてから定期的にチームの進捗や課題の共有(チェックイン)を行います。そのチーム進捗や課題状況によっては他のメンバーを助けるという判断もできるわけです。これは評価が別になっているからできることなのです」◆中小企業はOKRをコミュニケーション方法に位置付ければマネジメントツールに使える!中小企業では、OKRと人事評価と切り離してチームコミュニケーションのツールとして導入することで十分使えますし、リモート時代にあったコミュニケーション方法だと感じます。リモートワークとなってチームリーダーの「1on1」の機会が増えているようですが、なかなか挑戦的なアイデアが出てこない、言われたことしかやろうとしない、といった声もよくききます。OKRは、リモートワークとなり「背中や場の空気」でリードできないリーダーの悩みがあるからこそ、今注目されているのかもしれません。OKRは引き続き実践編へと深堀りします。(聞き手高井信洋)プロフィール奥田 和広 (おくだ・かずひろ)株式会社タバネル 代表取締役一橋大学商学部卒業。上場ファッションメーカー、化粧品メーカー、組織コンサルティンク?企業を経験。最大170人のマネジメントに携わる。自らのマネジメントとコンサルティンク?経験に基づき、成長企業の共通項OKRを用いた組織コンサルティンクを行う。1975年生まれ。大阪市出身。著書「本気でゴールを達成したい人とチームのためのOKR」
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