2024年 4月 23日 (火)

「関西スーパー」争奪戦 「地域密着型」のH2Oか、成長へ関西進出のオーケーか!?

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   大阪府や兵庫県を地盤とする東証1部上場の「関西スーパーマーケット」を巡り、争奪戦が勃発した。

   阪急阪神百貨店やイズミヤなどを運営するエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングが、関西スーパーの子会社化で合意したのに対し、関西スーパーの大株主で、首都圏地盤の食品スーパー、オーケーも買収に名乗りを上げたのだ。

   その行方は混とんとしているが、背景にはスーパー業界の競争激化があり、再編の動きはこれ以外にも続きそうだ。

  • コロナ禍でスーパー業界は生き残りに懸命だ(写真はイメージ)
    コロナ禍でスーパー業界は生き残りに懸命だ(写真はイメージ)
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H2O、スーパー3社統合なら近畿圏の店舗数首位

   花火を打ち上げたのは、H2Oリテイリングだ。2021年8月31日、株式の10.66%を保有する関西スーパーマーケットを子会社にすると発表した。具体的には、H2Oの100%子会社のイズミヤ株と阪急オアシス株との株式交換を通じ、スーパー2社と12月に統合する。関西スーパーは上場を維持し、事業会社としての3スーパーを傘下に持つ中間持ち株会社として存続することになる。それぞれのブランドも維持する一方、物流や商品の調達・開発などでは連携を進めるという。

   関西スーパーは64店舗を展開。21年3月期の営業収益(売上高の相当)は1309億円。3社の統合で240店舗、売上高4000億円規模になり、食品スーパーの雄、ライフコーポレーションの近畿圏(店舗数158店、売上高3758億円)を上回る。

   H2Oとしては、規模拡大で競争力を高め、コロナ禍で百貨店事業が低迷するなか、スーパー事業を収益の柱として育てたい考えだ。

「関西最強の地域密着型食品スーパー連合をめざしたい」

   H2Oの荒木直也社長は8月31日、関西スーパーの福谷耕治社長とともに記者会見し、意気込みを語った。

   これに対し、「株主利益の最大化の観点から公正に比較検討いただけたのか」と、3日後の9月3日、異議を唱えたのが関西スーパー株の7.69%を保有する大株主で食品スーパーのオーケーだ。それまで水面下で関西スーパーと統合交渉していたことを公表し、H2Oとの統合に待ったをかけた。

   発表によると、オーケーは6月、関西スーパーに対して時価の2倍超で上場来最高値と同じ1株2250円での株式の公開買い付け(TOB)を提案し、経営陣との協議を申し入れた。しかし、「実質的な協議の場」が設けられないまま、今回のH2O傘下入り発表に至ったという。

   この間の経緯について関西スーパーは、社外取締役らによる特別委員会を設け、H2Oとオーケーの提案を検討したうえでH2O傘下入りを決めた説明する。特別委では、オーケーとは客層や店舗運営、人事政策に違いがあるなどの懸念が強かったという。

関西スーパーに「オーケー」への警戒感

   一方のオーケーは9月3日の発表で、TOB条件などを踏まえ、「弊社提案の方が企業価値向上に資する」などと主張。10月29日に予定される関西スーパーの臨時株主総会で、H2Oリテイリングの傘下入りの議案に反対する考えを表明した。

   議案が撤回・否決された場合はTOBを実施するが、その場合も敵対的TOBは行わず、関西スーパー取締役会の理解を前提に進めるとした。完全子会社化には数百億円が必要になる計算だ。

   じつは、今回の争奪戦には前段がある。2016年夏、関西への進出を模索していたオーケーが、関西スーパー株を大量取得したことが明らかになった。資本提携を目指していたとみられるが、協議は進まない一方、関西スーパーはH2Oと同年10月に資本業務提携し、H2Oが筆頭株主になった。

   首都圏で120店舗以上を展開するオーケーは創業者の飯田勧会長(セコムを創業した飯田亮氏の兄)が強烈な個性で引っ張ってきた。ムダを排除した店舗づくりで「エブリデー・ロープライス」を標榜し、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「巣ごもり需要」もあって、業績好調という勢いのある企業だ。それだけに、関西スーパー側には、そもそもオーケーへの警戒感が強く、H2Oを「防波堤」にしたとの見方もある。

   攻防の焦点は関西スーパーの株主総会。株主がどちらの条件が有利か、将来性があるかを判断することになる。

   1株1300円台だった関西スーパーの株価は、オーケーの発表を受けて2100~2200円に跳ね上がっている。H2Oのスキームは複雑だが、3スーパーの統合後に3つのスーパー事業会社を傘下に収める中間持ち株会社が、現在の関西スーパーを引き継ぎ、H2Oを除く今の関西スーパーの約9割の株主は、新たな中間持ち株会社株の42%を保有することになるという。その株価が、オーケーが提案した2250円以上の価値を持ちうるかが焦点になる。

   H2Oとの統合実現には出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要。大株主である伊藤忠食品、国分グループ本社などの取引先、さらに保有比率が計約35%にのぼる個人株主の判断が注目される。

生き残りへ大手スーパーに対抗する地元連合

   関西スーパーの株主総会の結果がどちらに転ぶかにかかわらず、スーパー業界全体に目を向ければ、こうした再編の動きは加速するというのが大方の見方だ。

   オーケーが関西スーパーにご執心なのも、首都圏の新規出店余地が狭まる中で、関西圏に一から進出する時間を惜しみ、関西スーパーを傘下に収めて一気に拡大、成長を図る狙いだ。

   流通大手のイオンは15%出資しているフジ(松山市)を買収し、中四国の子会社マックスバリュ西日本(広島市)と2024年3月までに合併させる。「コロナ禍がデジタル化をはじめとする変化を加速させている」(イオンの岡田元也会長=9月1日の会見)という危機感からの一手だ。

   地方でも、北海道~東北で約340か店を運営するアークス(札幌市)が21年4月、オータニ(宇都宮市、約30か店)を完全子会社化したのは、地場企業同士が手を組んで大手スーパーに対抗しようという動きだろう。

   アマゾンなどのネット通販やコンビニも交えた、生鮮品を含む宅配競争なども激しさを増すなか、スーパー業界の生き残り競争はさらに激化する。(ジャーナリスト 済田経夫)

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