2021年 12月 8日 (水)

「東京五輪の赤字」誰が負担する? 「大きすぎて額がわからない」ってアリ?

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   「おもしろうて、やがて寂しき祭りの後」...。

   2021年9月5日に東京五輪・パラリンピックが終了し、今後の焦点は巨額の赤字を、誰が、どう負担するかという、「祭り」の後始末に移る。そこには、スポーツマンシップとはほど遠い、ドロドロの醜い争いが......。

   そもそも、どれくらいの赤字額になるか、誰もわからないという。いったいどうなっているのか――。

  • 「祭りの後」が大変な東京五輪(写真はイメージ)
    「祭りの後」が大変な東京五輪(写真はイメージ)
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「魔の五輪ジンクス」に勝てなかった菅首相

   時事通信(9月7日付)「五輪・パラ、政権体力奪う 赤字穴埋め『ポスト菅』に重荷」が、こう伝える。

「東京五輪に続き東京パラリンピックが閉会し、一連の『スポーツの祭典』が終わった。新型コロナウイルスのパンデミック下で決行した菅義偉首相は政権の『体力』を奪われ、退陣表明に追い込まれた。大会経費の巨額赤字をどう穴埋めするかという重い課題は『ポスト菅』に持ち越される。膨らみ続けた大会経費の検証や赤字補填(ほてん)は次期首相の重荷となる」

   そして、日本で五輪が開催された年には、必ず時の総理大臣が退陣に追い込まれるという「魔の五輪ジンクス」が今回も生きていたとして、時事通信はこう結ぶのだった。

「五輪開催年に首相が交代するジンクスは今回も続いた。1964年の前回東京大会では池田勇人首相(当時、以下同)が病気(編集部注:喉頭ガン)を理由に閉会式翌日に退陣を表明。1972年の札幌冬季五輪を迎えた佐藤栄作首相はこの年、8年近くに及ぶ長期政権を終えた。
1998年の長野冬季五輪に臨んだ橋本龍太郎首相は、同年夏の参院選で大敗、総辞職した。菅義偉政権退陣について、政府関係者は『(五輪に)かなりのエネルギーを使った』と認めた」
開催年に必ず総理大臣が退陣する「魔の五輪ジンクス」に勝てなかった菅義偉首相
開催年に必ず総理大臣が退陣する「魔の五輪ジンクス」に勝てなかった菅義偉首相

   池田勇人氏は五輪開催前から、ガンがかなり進行していたが、周囲は五輪が終わるまで本人にも政界にもひた隠しにした。佐藤栄作氏の退陣会見は、「裸の王様」に怒った記者全員が退出。NHKカメラだけに向かって喋る無残なものだった。

   橋本龍太郎氏の場合は、行政改革、財政構造改革、教育改革など「6大改革」を打ち出し、国民の人気がなかったわけではない。だが、選挙は水物。金融不安の直撃を受けて参院選で20議席減らし、潔く退陣した。そして、菅義偉首相の場合は......。五輪に潜む「魔物」に勝てなかった。

騒音問題で大イベントを開けない国立競技場

   まず、五輪競技場の「負の遺産問題」を見ておこう。

   日本経済新聞(9月7日付)「国立競技場、祭りの後は...活用法に制約、維持費重く」が、特に年間24億円もの維持管理費がかかるといわれる国立競技場の「使いづらさ」を、こう指摘する。

「国立競技場は総額1569億円の公金を投じて建設された。建設コストを削減するため、競技場を覆う屋根を設けなかったことが、今後の活用の大きなネックになる。屋根がないことによって、天候に左右されるだけでなく、コンサートなどのなどの騒音が周辺に漏れやすくなる。大会中も夏場の強い日差し、降りしきる雨の中で競技が行われた日もあった。五輪開会式では、大音量の音楽が競技場外に流れ出ていた。
政府は当初、大会後にトラックをなくし、サッカーワールドカップの開催に対応できる約8万人規模の球技専用スタジアムに衣替えをする計画を描いていた。しかし、改修に最大100億円かかるという試算が表面化。陸上の世界大会が開催できるスタジアムとしての存続を求める声もあり、トラックを残すか否か、いまだに結論が出ていない」

   周辺にマンションも多いため、騒音などで大規模イベントが開きにくいのも課題になっている。

早くも「厄介者」になった国立競技場
早くも「厄介者」になった国立競技場

   ほかにも、大赤字が避けられない施設が多い。NHKニュース(9月6日付)「オリ・パラ 新整備の5施設 赤字見通し 収益性高められるか課題」がこう伝える。

「東京都がオリ・パラのために新たに整備した6つの施設のうち、収支見通しで黒字なのは『有明アリーナ』だけで、ほかの5つは赤字となり、その額は合わせて年間およそ10億8500万円と見込まれています」

   NHKによると、競泳などの会場になった『東京アクアティクスセンター』は、年間赤字額が6億3800万円。カヌーとボートの会場になった『海の森水上競技場』は1億5800万円。カヌーの会場になった「カヌー・スラロームセンター」は1億8600万円。ホッケーの会場になった「大井ホッケー競技場」は9200万円。アーチェリーの会場になった「夢の島公園アーチェリー場」は1170万円といった案配だ。

   いずれも、大会を誘致したり、アスリートの育成場所にしたり、都民が楽しむスポーツ施設にしたりするには「豪華すぎる」施設だという。

組織委「来春にならないと赤字額がわからない」

   一方、大会の運営や施設整備、コロナ対策などのかかった予算の赤字額はどのくらいに膨らむのか。じつは、それがよくわからないのだという。

   日刊スポーツ(9月6日付)「東京五輪決算は来年4月以降、課題山積、赤字は『規模感申し上げられない』」によると、パラリンピック閉会式の翌日の9月6日、東京五輪・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長は会見で、記者たちから「どのくらいの赤字になるのか」と問われて、こう答えた。

「まずは歳入、歳出を詰めて収支差額がどうなるか、数字が出てきてからでないと(赤字の)規模感も申し上げられない」

   「概算の額でもわからないのか?」と突っ込まれても、武藤事務総長はこう突っぱねたのだった。

「(事後処理について)仮設施設の取り壊し、お借りした会場の原状回復を行う。来年3月ぐらいまでかかるものもある。少なくとも、そこまでは収支が確定しない。ほかにも記録の保管、調達した物の処分など諸問題はあるが、おそらく決算は来年の4月以降にならざるを得ないと思う」

   来年の4月頃まで「赤字の規模感」もわからないというのだ。

   しかし、それでは無責任すぎないか。誰が、どのように赤字を負担していくのか。日本経済新聞(9月7日付)「東京五輪・パラ赤字不可避 都や国、補填巡り協議へ チケット収入ほぼ消失」が、その問題をこう解説する。

「今後の焦点は大会収支の確定に移る。多くの会場が無観客となり、900億円を見込んだチケット収入はほぼ消失した。赤字は避けられず、大会組織委員会と東京都、国が補填を巡って12月にかけて協議する見通しだ。国際オリンピック委員会(IOC)と結ぶ開催都市契約との関係上、組織委が資金不足に陥れば一義的に都が補填することになる。それでも補填しきれない場合、国が負担する決まりだ。
都はこれまで、コロナ対策で巨額の費用を投じてきた。財政事情は厳しい。国側は(負担に)慎重姿勢を崩しておらず、調整は難航する可能性がある。3者の協議がまとまる時期について、大会関係者は『12月頃だろう』とみる。
大会予算は延期後に人件費増やコロナ対策などで2940億円が新たに発生し、総額では1兆6440億円まで膨らんだ。組織委員会は大会関連施設などの整備で民間業者と膨大な契約を結んでいる。公費がつぎ込まれた大会の支出が適切だったかどうか、事後の検証は欠かせない」

   そして、日本経済新聞は大会の収支を次のような表で紹介した。

【東京五輪・パラリンピックの収支構造】
◇ 大会組織委員会の収入  6440億円
国内スポンサーの協賛金... 3700億円超
チケット収入.................. 900億円(ほぼ消失)
IOC負担金..................... 850億円
その他(調整金含む)...... 約1700億円
計................................. 7210億円
◇ 支出の分担
組織委員会..................... 7210億円
東京都........................... 7020億円
国................................. 2210億円
総額.............................. 1兆6440億円

   これを見ると、五輪のコストは約1兆6000億円であり、組織委の「収入」を引けば、何となく「赤字の規模感」が出そうな気がするが、日本経済新聞は具体的な赤字額を書いていない。

大会経費は「大きくも小さくも見せられる」

多くの赤字競技施設が並ぶトウキョウ・ウオーター・フロント・シティ
多くの赤字競技施設が並ぶトウキョウ・ウオーター・フロント・シティ

   それはなぜか――。朝日新聞(9月12日付)「五輪コスト結局は? 公表分は1.6兆円 『関連』含め3兆円超か」が、巨額の赤字の全容がまだ見えない理由をこう説明する。

「そもそも、どこまでが大会費用に当たるのか。大会経費は『大きくも小さくも見せられる』(組織委員会幹部)のが実態で、ルールはない。たとえば今大会で都は、大会経費の枠外の『大会関連費』として、7349億円を投じた。暑さ対策で道路の遮熱舗装などにかけたもので、『大会後も生活のためになる』との理由で枠外になった、と関係者は明かす。背景には、安く見せるよう、IOC側が再三求めてきた経緯がある。
ただ、いくら安く見せようとも、1兆6440億円の枠の外に巨額の経費が存在する事実は動かない。国が負担した『枠外』の経費もある。『枠内』として公表されているのは2210億円だが、会計検査院は2年前の時点で、『(国は)すでに五輪関係で1兆600億円を支出した』と指摘している。これらを勘案すれば優に3兆円を超える計算になるが、『もっと大きい』との声もある。
「最終的な検証は、組織委員会の決算が出ないと進められず、結果公表は『早くても来年後半になりそうだ』(関係者)という」

   いずれにしろ、私たちは税金という形で巨額の赤字を尻拭いさせられる可能性が高い。具体的にいったいどのくらいの額になるのか。

   関西大学の宮本勝浩名誉教授(理論経済学、スポーツ経済学)が、独自の試算で「東京五輪・パラリンピックの経済効果と赤字額」を算出している。J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部は、関西大学広報課を通じて宮本氏の詳細な調査報告書を入手した。

   宮本氏は、

「本報告書は、東京オリ・パラ開催に賛成とか反対とかの感情的な立場にたって分析したものではなく、責任のある機関が公に発表した金額、数値に基づいて客観的に計算したもの」

としている。詳細なデータと数式が11ページにわたって並んでいるが、結論は次のとおりだ。

(1)東京オリ・パラ組織委員会の赤字額は約900億円となる。
(2)東京都の税収を上回る赤字額は約1兆4077億円となる。これは国の赤字額を上回っている。そして、組織委員会の赤字額約900億円を補填することになれば、約1兆4977億円の赤字となる。
(3)国の赤字額は約8736億円となる。
(4)組織委員会、東京都、国の赤字の総額は約2兆3713億円となる。

   そして、宮本氏は報告書をこう結ぶのだった。

「報告書は単純に経済的側面から、東京オリ・パラの赤字額を推計したものであり、東京オリ・パラ開催による『新型コロナ』の感染者や、亡くなった人が増加したことなどによるマイナスの効果や、医療関係者の負担増加などのマイナス面は推計していない。
東京オリ・パラの開催に努力された関係者の方々(医療関係者、ボランティアの方々も含めて)のご尽力に敬意を表すと同時に、これまでの努力の積み重ねを精一杯発揮されたアスリートの方々を称えたい。
ただ、新型コロナ騒ぎのない状況での東京オリ・パラを世界中の人々と楽しむことができなかったことは、誠に残念なことであった」

(福田和郎)

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