2024年 4月 25日 (木)

「五輪がOKでも四輪二輪が許されないとは...」トヨタ社長のジョークあふれる政府批判のホントの狙いは?

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報道陣に「見出し」まで提案する余裕ぶり

   ところで、豊田社長は実際に、どう発言したのか。自動車専門のニュースサイト「くるまのニュース」(9月19日付)「豊田会長『五輪で許されても四輪二輪は許されない...』同じスポーツでなぜ開催基準が異なるのか」が、豊田氏の熱い思いを伝えるために、「世の中には自分たちの都合で一部だけを切り取って報道するメディアもありますが、くるまのニュースでは完全ノーカットでお届けしたいと思います」として、発言のすべてをこう伝えたのだった。

「日本で開催される世界選手権が軒並み中止になってしまったことに自動車工業会会長として、この現状をどう思いますか」という記者の問いに、豊田氏は下記のように語りました。
「自工会会長としてお応えします。『五輪が許されても、四輪二輪は許されない』(会場から大きな拍手)。我々四輪/二輪系からすると不公平感を感じます。五輪も支援させていただきましたし、アスリート支援をしております。ただ、モータースポーツもアスリートだと思います。そして、オリンピック/パラリンピックに関わる彼ら/彼女らもアスリートだと思います。
同じアスリートに対してどうして入国に対しての許可が違うのか? どうして開催の判断が違うのか? モータースポーツに関しては外国人選手がなかなか入国できない...... などもありましたので、ひと言でいうと。『五輪で許されても、四輪二輪は許されないのはなぜですか?』を見出しにしてください」

というのが豊田氏の発言の全容だ。報道陣に「見出し」のアイデアまで提案する余裕だった。そして、「くるまのニュース」はこう結んでいる。

「モータースポーツはどうしてもマシンが注目されてしまいますが、豊田氏の発言は『人間』であるレーシングドライバーにもっとフォーカスすべき...... ということも伝えたかったんだと筆者は考えます。それは『道が人を鍛える、人がクルマが作る』というトヨタのクルマづくりの考え方とまったく同じ。ブレない軸に感服します」

   豊田氏の発言については、インターネット上ではさまざまな声がある。ヤフコメでは、こんな意見が相次いだ。

   エコノミストで経済評論家の門倉貴史氏はこう指摘した。

「2009年に発表された『F1経済効果調査報告書』によると、鈴鹿でF1が開催された際の経済効果は全国で約293億円にのぼる(うち三重県内で119億円、鈴鹿市内で77億円)。これはF1人気がピークのときの試算なので現在の経済効果はもう少し小さいとみられるが、レースが中止になれば、経済効果がそのまま経済損失になってしまう。デルタ変異株による第5波が収束していない状況では、中止はやむを得ない判断といえるだろう。
ただ、現在より感染状況がはるかに深刻となっていた東京五輪・パラリンピックは強行開催して外国人選手を多数入国させておきながら、自動車レースでは外国人ドライバーが入国できないというのは整合性がとれず、明らかに不公平な措置といえる。自動車レースなど他のスポーツイベントとの整合性をとるためにも東京五輪・パラリンピックは中止もしくは延期すべきではなかったのではないか」

   自動車ジャーナリストの桃田健史氏は、豊田氏の狙いをこうみる。

「豊田氏個人の本音であると同時に、自動車工業会として戦略だと感じる。特にコロナ禍となってから、自工会会長としてさまざまな発言は少々過激。結果、それがニュースとなる。今回も、そう。そこまでしなければならないほど、日本の自動車産業界は『瀬戸際』にいるということ。各方面に取材していて、そう思う。
また、モータースポーツと称するも、日本ではスポーツ分野の枠組みに事実上、入っておらず、マシンへの依存度が極めて高いスポーツであるので致し方ないというのが、モータースポーツ界として、長年の共通な受けとめ。今回のコメント、産業界からレースファンまで、幅広い分野の人たちに『日本のこれから』を考えるキッカケとなったことは確かだ」

   モータースポーツ実況アナウンサーでジャーナリストの辻野ヒロシ氏は、こう指摘した。

「今週末(9月18日~19日)、鈴鹿サーキットで開催されている『スーパー耐久シリーズ』に水素エンジンを搭載したカローラ・スポーツで出場しています。今回の発言はそのレースの取材の中で記者からの質問にジョーク混じりに答えたものです。鈴鹿のF1、ツインリンクもてぎのMotoGPなど世界選手権レースに加えて、トヨタが参戦するWEC(世界耐久選手権)、さらには豊田社長肝いりのWRC(世界ラリー選手権)の日本ラウンド、ラリージャパンが中止に追い込まれました。
海外の関係者が多数来日する国際レースは隔離が難しいタイトなスケジュールで動いていることが多く、オリンピックのように特例があれば開催できたかもしれません。今年はインディ500、モナコGPをホンダが、ルマン24時間をトヨタが優勝。世界3大自動車レースを日本メーカーが制しました。母国の自動車メーカーが活躍するモータースポーツが冷遇されるのは海外から見れば理解不可能なことです」
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