週刊ダイヤモンドは「最新の塾選び」、週刊東洋経済は「ビジネスと人権」を特集
人権では低い評価の日本企業
「週刊東洋経済」(2021年9月25日号)は、「SDGsが迫る企業変革 ビジネスと人権」という特集。欧米では企業に対し、人権リスクの把握と対策を求める動きが高まっている。遅れを取る日本企業が対応すべき課題に迫っている。
今年6月に公表された東京証券取引所の「改訂コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」に、「人権の尊重」が盛り込まれた。強制力はないが、従わない場合は投資家などへの説明が求められる。
企業は人権に関し、どんな取り組みをすればいいのだろうか。国連のSDGsの指導原則は、以下の3つの事柄を求めている。
・人権方針の策定
・人権デューデリジェンスの実施
・苦情処理メカニズムの構築
2つ目の「人権デューデリジェンス」は、耳慣れない言葉だが、事業活動で生じる人権侵害のリスクを企業が把握し、予防策や軽減策を講じることを指している。
児童労働、ハラスメント、強制労働、低賃金、性別・国籍・人種による差別、安全性や衛生管理の欠如といった人権侵害がないのか、自社、直接取引先だけでなく、サプライチェーン全体が対象になる。人権対応では日本企業の取り組み不足が指摘されており、人権団体からは低い評価を受けている。
特集では、「サプライチェーンを総点検せよ」とリスク確認に動いた味の素と花王の取り組みを詳しく報じている。
サプライチェーン上の人権リスクに味の素が本格的に直面したのは2014年のこと。「タイ産エビの安さの理由は奴隷労働にある」と報じられた。さらに16年にはタイ産鶏肉のサプライチェーンにおける強制労働が発覚。問題が起きたのは、味の素の取引先である養鶏場だった。そこで人権侵害が起こっていることをフィンランドのNGOの情報で把握した。タイで現地調査を実施、第三者の視点も取り入れた報告書を作成・公表した。
花王もシャンプーや化粧品など、多くの日用品に使用されるパーム油に注目。農園開発に伴う森林破壊や土地収奪、強制労働や児童労働などの問題がないか、確認を進めている。
独裁を強めるミャンマー国軍との関係が顕在化し、不買運動に直面している日本企業も少なくない。キリンは国軍系企業と合弁していたため、都市部を中心にボイコット運動が広がり、ビール製品の売り上げが落ち込んだ。
キリンは事業見直しを決断したが、多くの企業は今後の方針を決めることが出来ないと指摘している。
日本国内でも外国人の技能実習制度の人権リスクが問題になりかけている。実習生の雇用状況を調査し、公表する大企業も増えてきた。
「今われわれが襟を正さなければ、いずれ外国から労働者が来てくれなくなる」と関係者は話している。
SDGsを掲げる企業が増えてきたが、サプライチェーンも含めて人権を守ることが要請されるようになり、その内実が問われていると言えそうだ。(渡辺淳悦)