2022年 5月 26日 (木)

「不要不急」こそ生きる力と説く、堀江貴文さんの新刊

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   「ホリエモン」こと、堀江貴文さんはコロナ禍のもと一貫して、「不要不急を禁じる動きはバカげている!」と発信してきたという。大勢の会食やイベントを徹底的に弾圧することが、感染拡大のリスクを下げるという理屈に疑問を呈してきた。

   そんな堀江さんの新刊が本書「破戒のススメ」だ。「破戒」とは、文字どおり「戒め」、つまり特定の行動を制限する縛りを「破る」ことだ。サブタイトルは「我慢の奴隷から脱出する44の行動哲学」と勇ましい。

   「破戒のススメ」(堀江貴文著)実務教育出版

  • 堀江貴文さんは地方の再発掘に取り組んでいる(写真はイメージ)
    堀江貴文さんは地方の再発掘に取り組んでいる(写真はイメージ)
  • 堀江貴文さんは地方の再発掘に取り組んでいる(写真はイメージ)

リモートワークは浸透したが......

   「不要不急のことを我慢すれば、コロナ禍はきっと収まる」というのは、戦時中の根性論と同じだと批判している。遊びや趣味、飲食だけでなく、会社、銀行、鉄道、道路、インターネット......。文明の基礎を築いてきた多くのインフラは、「今はないけれど、あったら便利だろうな」という、人々の「不要不急への願望」から生まれたものだと。

   本書は、お金、時間、人、仕事、遊び、学びについて堀江さんの考えを述べたものだが、コロナ禍との関連が各所に現れている。

   たとえば、「『コロナが収まったら』と言うな。負け確定だ」とある。原稿を書いたのは8月。東京オリンピックの最中だ。「コロナが明けるまでは我慢! だの、アフターコロナを期待しているだの、と言っている人たちの気がしれない。自粛で行動を制限されている間に、どれほど経済活動が損なわれ、人々の機会が奪われているか。想像するだけで鳥肌が立つ」と書いている。

   日本人の科学リテラシーの欠如を指摘している。「ゼロコロナ」は無理なのだ。正しい知識と知恵を持って、同調圧力に負けずこれまでどおり「ムダ」を楽しむことだ、と訴えている。新型コロナウイルスの新規感染者数が急増する中で書かれた内容だが、第5波が終息しつつある今読むと、あらためてその強い信念が伝わってくる。

   堀江さんは、コロナ禍のだいぶ前からリモートワークに移行しているそうだ。オフィスも決まった職場も持っておらず、ノマドワーカーの先駆けだと自負している。日曜・祝日なども関係ないスケジュールで、仕事と遊びの境目のない日常を駆け抜けている。

   コロナ禍で良かったことの一つは、リモートワークの浸透だという。多くの会社では、社員がフロアにいなくても、仕事は回るし、売り上げも特に落ちないことがわかった。むしろ経費が減らせ、出社するだけで仕事せずにふらふらしている、中年以降の「妖精さん」社員の存在を、あぶり出した。

   リモートワークの浸透は良かったけど、なぜか暦どおりのスケジュール感が残っていることに疑問を呈している。

「働けるときに働き、遊びたいときに遊ぶ。そのメリハリを暦で平均化するのではなく、他人のスケジュールと補完し合う形で同期させられれば、仕事の質もスピード感も爆上がりするはずだ」

地方の再発掘に取り組む

   コミュニケーションについても、いろいろ書いている。「雑談を止めるな! 『自粛警察』が文化そのものを衰退させる」とか、「飲食を交えたコミュニケーションを止めるな」などだ。堀江さん自身も立派な飲食業界の人だという。

   もちろん被害を受けている。手掛ける飲食事業「WAGYUMAFIA」は、コロナ前は順調に世界展開を広げていたが、いったん見直しになった。コロナ禍の以降は黒字を出すのに苦労しているという。普通のビジネスマンならいった事業を閉じたほうが楽だと考えるかもしれないが、堀江さんは違った。

「感染リスクに過大に怯えるあまり、生きがいを手放すような決断を、僕は実業家である以前に、主体性を持つ人間として選択したくない!」

   堀江さんは、2020年の春を最後に、海外に出ていないそうだ。その代わり、国内の地方出張を、毎日のように繰り返しているという。せっかくの機会なので、日本の地方の再発掘に力を入れている。

   その際に役立っているのが、2018年にシェアで購入したホンダジェットだ。国内なら、だいたいの地方空港の間を、タクシーとさほど変わらない使い方で利用できる。午後に函館でゴルフした後、札幌で夕飯を食べることもできる。クルマなら4時間かかるが、飛行機なら20分だ。

   北海道のスキーリゾート、ニセコ以外にも世界に向けてアピールできる地方の観光都市は少なくないという。長崎の五島列島、沖縄の宮古島などを例に挙げている。

   日本ほど、都会だけでなく全国各地に名産グルメがある国も珍しいという。堀江さんたちの宇宙事業が根づいたことで、「ロケットの町」として全国区の知名度を得た北海道の大樹町も成功例だ。辺鄙な地方の町では今こそ、不要不急に求められるヒットの法則が、発掘されるのを待っている。「遠くへ行けないなら、近くを掘り起こせ」と書いている。

堀江さんの強い信念が伝わってくる

   堀江さんの元ライブドア代表取締役CEOという肩書は、もう古いようだ。現在は宇宙関連事業のほか、執筆活動、オンラインサロン運営、高級和牛飲食店経営、通信制高校サポート校主宰、ミュージカルプロデュースなど幅広く活動している。

   堀江さんの著者はこれまでも何冊か読んできたが、本書はコロナ禍で書かれたということも手伝い、より強い信念が伝わってくる。お金も時間も遊びも仕事もすべて、「不要不急こそ生きる力だ」というメッセージを今こそ、受け止めたい、と思った。(渡辺淳悦)

「破戒のススメ」
堀江貴文著
実務教育出版
1430円(税込)

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