「ペットボトルは資源」伝えてリサイクル! サントリーグループが目指すサステナブル化

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   海洋プラスチックごみが深刻な問題になっている。多くの飲料の容器に使われている「ペットボトル」は、ポイ捨てされるとゴミになって流出する。海洋ごみのペットボトルが分解されて細かくなるまで、じつに400年(出典:Eriksen, Marcus, et al.2014)もかかり、それでも自然界に溶け込むことはないとされる。

   一方、SDGs(持続可能な開発目標)の17の目標の一つに、「つくる責任 つかう責任」(目標の12)があり、持続可能な生産消費活動を確保することを目的としている。「ペットボトル」の再利用はこれにあたり、飲料業界は、2030年までにペットボトルの再利用を50%にしていこうという目標を掲げている。

   ペットボトルの再利用に熱心な、サントリーグループでペットボトルのサステナブル化を担当する、サントリー食品インターナショナルの佐藤慶一(さとう・のりかず)さんに、その取り組みを聞いた。

  • 飲料業界は2030年までにペットボトルの再利用を50%にしていく目標を掲げている(写真はイメージ)
    飲料業界は2030年までにペットボトルの再利用を50%にしていく目標を掲げている(写真はイメージ)
  • 飲料業界は2030年までにペットボトルの再利用を50%にしていく目標を掲げている(写真はイメージ)

目指すは100%サステナブル化

――サントリーグループのリサイクルをめぐる取り組みを教えてください。

佐藤慶一さん「サントリーには『プラスチック基本方針』があって、『持続可能な社会の実現や循環型かつ脱炭素社会への変革』を目的としています。この基本方針に基づき、2030年までにグローバルで使用するすべてのペットボトルに、リサイクル素材あるいは植物由来素材のみを使用し、化石由来原料の新規使用をゼロにすることで、100%サステナブル化を目指します」

――ペットボトルのリサイクルとは、どのような取り組みなのでしょうか。

佐藤さん「従来のペットボトルは、化石由来原料である石油から作っています。リサイクルペットボトルへの取り組みは、使用済みのペットボトルを回収して、新しい飲料用容器として使用しますが、この取り組みは当社では飲料業界に先駆けて、2011年から取り掛かっていて、19年5月、2030年に向けて世界中で使用するペットボトルを100%リサイクルペットボトル、もしくは植物由来の原料を使用したペットボトルを使用していく目標を掲げています。
20年の実績では国内の清涼飲料の26%を、リサイクルペットボトルを活用しています。2022年末には、日本国内のリサイクルペットボトルの使用比率を50%以上に高める計画です」

――サントリーグループでは、リサイクルペットボトルをいつから製造しているのですか。

佐藤さん「2012年に100%リサイクルペットボトルを使用し始めています。特に従来の技術だけではなく、リサイクルペットボトルの製造では、当社と協栄産業様、イタリアのSIPA社様、オーストリアのEREMA社様の4社共同で世界初の技術『FtoPダイレクトリサイクル技術』を開発、稼働しています。ペットボトルリサイクルの工程を短縮することで、二酸化炭素(CO2)の排出量も削減されます。ペットボトル製造でもイノベーションを起こしています」

ペットボトルの再利用、2017年「クラフトボス」で

「リサイクルペットボトルは、リサイクル業者様と一緒に研究をしています」と話すサントリー食品インターナショナルの佐藤慶一さん
「リサイクルペットボトルは、リサイクル業者様と一緒に研究をしています」と話すサントリー食品インターナショナルの佐藤慶一さん

――「クラフトボス」のペットボトルが話題です。これまでのペットボトルと違うようですが、その違いを教えてください。

佐藤さん「発売から5年になりますので、2021年3月にマーケティングの観点から形状を変えました。リサイクルの観点では、2017年に『クラフトボス』が発売されて、その年には100%リサイクルペットボトルを導入し始めていました。すべての商品ではないですが、広げつつあるところです」

――ペットボトルの軽量化は持った瞬間に感じるところですね。

佐藤さん「ペットボトルの重さは30年ぐらい前と比べると3分の1ぐらいになっています。ただ、軽いのですがペットボトルが薄くなって、『飲みにくい』『中身がこぼれてしまう』という声も出てきて、だいぶ改善されてきました。さらなる軽量化が難しいレベルにまで到達していて来ているというのが、正直なところです。じつはリサイクルのペットボトルは、軽量化の次に出てきたテーマで、軽量化も行き着くところまできて、次どうするのかというところで、リサイクルへの取り組みが進んでいった経緯があります」

――リサイクルのペットボトルの製造・利用で留意している点は何でしょうか。

佐藤さん「リサイクルペットボトルは、リサイクル業者様と一緒に研究をしています。特に飲料用のペットボトルは安全性などの条件を満たすような研究が必要になります。その研究は論文としても公表しています。これにより、リサイクルのペットボトルの品質の基準ができ、品質の劣るリサイクルペットボトルが市場に出るのを防ぐのにつながっていると思います。リサイクルペットボトルの利用は、当社では2012年にリサイクルペットボトルを100%使用したウーロン茶を発売しています。
また、植物由来の原料を使用したペットボトルを開発しています。これは『サントリー天然水』で、30%を植物由来の原料としたペットボトルで提供しています。現在も100%植物由来を目指して研究開発しています」

――海外ではペットボトルリサイクル事情が日本と異なるのでしょうか。

佐藤さん「海外では、国やその国の法律によって、そもそもペットボトルの回収が困難な国もあります。それによってペットボトルリサイクル率は国によって大きく異なります。
日本では、ペットボトルリサイクル率は93%という高い数値を達成しています。ヨーロッパでは全体で40%です。その国の法律や社会環境、国民の意識が影響していると思われます」

――ペットボトルのリサイクルにトレンドはあるのでしょうか。

佐藤さん「ペットボトル素材のリサイクルでは、他の製品に加工することも可能です。しかし、ペットボトルの場合は特に衛生面の確保が必要になるなど製品に応じた対応などが必要になります。
今ならではのトレンドとしては同じ製品から同じ製品に加工する『水平リサイクル』が注目されています。水平リサイクルであれば、新たな資源投入が少なくなる可能性があります。それが効率的だと思いますし、将来的にもより環境負荷の少ない事業活動につながっていくのだと思います。ペットボトルの他にも、衣服や紙おむつなどで水平リサイクルが進められています」

――ペットボトルのリサイクルは半永久的に可能なのですか?

佐藤さん「理論上は半永久的にペットボトルのリサイクルは可能です。そこまでの実証事例はまだありませんが、当社では『何度もリサイクルができる』という言い方をさせていただいています」

ペットボトルの再利用は消費者の協力なしにはできない!

おなじみのサントリーのペットボトル商品群
おなじみのサントリーのペットボトル商品群

――リサイクル、SDGs、サステナブル、循環型社会をどのように伝えていきますか。

佐藤さん「リサイクルはSDGs、サステナブル、循環型社会につながっていきます。大切なことは『小さな一歩かもしれないが、それが大きな効果につながる』ことを理解してもらうことです。特に小学生には、言葉使い一つひとつだけでなく、『どれだけイメージしてもらうか』が重要になります。そのために小学校での啓発活動などではビンゴなどのゲームを取り入れるなど、さまざまな工夫をしています。
そして、子供たちに行動してもらうためには、家でのペットボトルの分別などで保護者の理解や協力が不可欠であると思っています」

――回収がままならないとペットボトルリサイクルは始まらないですよね。

佐藤さん「ペットボトルのリサイクルは消費者の協力なしにはできません。国や自治体、社会全体や消費者の協働が必要です。しかし、キャップとラベルをはがすなどペットボトルの分別はリサイクルに大きく影響します。ご家庭ではしっかり分別されていても、自販機横や施設、公園、路上など野外のリサイクルボックスでは、ペットボトル内に飲み残しや、タバコなどの異物が入っていたり、そもそも分別されていなかったりというのが課題になっています。日本の消費者は海外と比べても意識が高いので、さらに広く深く根付いていけるように当社としても啓発活動をより注力していきたいと思います」

――ペットボトルはこれからも使われ続いていくのでしょうか。

佐藤さん「飲料の容器素材には、ペットボトル以前から、瓶、缶、紙が使用されてきています。これは中身の飲料の特性や品質に応じて一番よい組み合わせとなる容器素材が選択されているのです。それは、お客様の使い勝手や飲まれる際の飲料品質を確保できるものを効率的に提供していくという意味で、課題というよりは『より良いものは何なのか』というベーシックな話だと思います。
現在、ペットボトルに代わる容器は、なかなか見つかっていないというのが正直なところです。それもあって、今後もペットボトルは使用されていくでしょう。ペットボトルの存在も、『ゴミではなく資源として社会で循環されていく』ものになっていくのだと思います。ペットボトルは『ゴミではなく資源』であることを伝えていければと思います」

(聞き手 牛田肇)

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