2024年 4月 20日 (土)

他人にやさしくない日本では「ベーシック・インカム」が現実的かもしれない

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半数以上がベーシック・インカムに賛成する理由

   半数以上の人がベーシック・インカムに賛成しているという意味は大きい。日本でもベーシック・インカムについての合意形成は不可能ではないようだ。

   賛成の理由としては、「生活に困窮しているから」、「これから困窮する可能性があり、もらえるものはもらいたい」など。また、年配の人より若者のほうが、賛成する傾向にあった。特に60歳代で支持率が低く、すでに年金をもらっているので必要がない、あるいはベーシック・インカムをもらうと年金がもらえなくなる、と考えた人が多いかもしれない、と見ている。

   日本人は限定給付をもらうのを「恥」と考える人も少なくない。そこで、「給付を受けた場合、市町村のホームページに受給者の名前が掲載される予定です」という文言を付け加えたところ、応募率が87%から27ポイントも下がった。給付を受けていることを隠したいと感じ、給付を公にされるくらいなら「もらえるものももらわない」と考える傾向が強いことがわかった。

   日本の将来について、田中さんは悲観的な見方も持っている。10年後の日本がより利己的で、さらに自己責任の国になっていた場合、国の経済の成長が停滞し、所得が伸びなくなることで、多くの人が豊かさや満足度を享受できず、利他主義がさらに後退して、社会のためではなく自分のために、と考える不寛容が拡大する可能性がある、と指摘している。

   そうなると、自助や自己責任論とも親和的なベーシック・インカムは、日本の公助の一つの形として、短期的・中期的には、より現実的な政策だと言えるかもしれない、と結んでいる。

   ベーシック・インカムの社会実験は、フィンランド、オランダ、ドイツ、スペインの4か国ですでに行われたことも紹介している。給付を得たことによって働かなくなる、というモラル・ハザードの懸念はあまりなかったそうだ。

   生活保護や年金など現行の社会保障や財源の問題で、導入にはさまざまな壁があるだろう。だが、「日本人は助け合う」ということが幻想であることがわかった今、国が積極的に介入する必要があるかもしれない。貴重な一石を投じた本である。

「やさしくない国ニッポンの政治経済学」
田中世紀著
講談社
1100円(税込)

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