2024年 4月 20日 (土)

バイデン米大統領、まさかの「バックファイヤー」! 備蓄石油放出で岸田首相の決断は吉と出るのか?(井津川倫子)

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   原油価格が高騰するなか、アメリカ政府は備蓄していた石油の一部を市場に放出すると発表しました。供給量を増やして原油価格の上昇を抑える戦略ですが、これに日本、中国、インド、韓国、イギリスの5か国が相次いで連携を表明。災害時ではなく、「価格対策」のために主要国が国家備蓄を放出するのは極めて異例なことだそうです。

   果たして、「Biden's Unusual Oil Release」(バイデン米大統領の異例な石油放出)は、事態の鎮静化につながるのでしょうか? 今回も、最新のニュース英語をたっぷりとお届けします。

  • 米国や日本、中国などは石油の国家備蓄を市場に放出することを決断した(写真はイメージ)
    米国や日本、中国などは石油の国家備蓄を市場に放出することを決断した(写真はイメージ)
  • 米国や日本、中国などは石油の国家備蓄を市場に放出することを決断した(写真はイメージ)

バイデン米大統領の歴史に残る「タンクの栓抜き」?

   アメリカのホワイトハウスが声明を発表し、記録的な高値が続いている石油の価格上昇を抑えるために、国家備蓄の一部を市場に放出することを明らかにしました。主要な石油の消費国である、日本、インド、韓国、イギリス、それに中国がこれに賛同。一体となって石油価格の抑制に取り組むことを表明しています。

President Biden announced the U.S. will tap oil reserves in hopes of reducing energy prices
(バイデン大統領は、米国は燃料価格の下落を期待して備蓄石油を放出すると発表した)
tap:樽などの栓を抜く、蛇口
oil reserves:備蓄石油
in hopes of~:~を期待して

   今回、多くのメディアの見出しを飾っていたのが「tap」という単語です。

   「tap」は、「蛇口」「水道」という意味ですが、「tap water」(水道水)を知っている方は多いのではないでしょうか。外国では、レストランでお水を注文するときに、わざわざ「tap waterをください」と伝えないと、有料のミネラルウォーターがサーブされます。

   この「tap」を動詞で使うと、「樽などの栓を抜く」という意味ですので、「tap oil reserves」は、「備蓄石油のタンクの栓を抜く」と、イメージそのものの表現です。

   メディアによっては、「release oil reserves」(石油備蓄を放出する)と、「release」(放出する)という単語を使っていましたが、「tap」のほうが、がぜん臨場感があります。バイデン大統領が巨大なタンクの栓を抜いている姿が目に浮かぶので、私は「tap」に一票を投じたいと思います!

   石油関連の単語は、ビジネスの場面でもよく目にします。なかでも、「crude oil」(原油)はニュースでも重要単語です。石油の単位は「バレル」(樽)で表しますから、50 barrels of crude oil(原油50バレル)のように、「~barrels of」を使った表現とセットで覚えておきましょう。

備蓄石油放出の背景にバイデン米大統領の支持率低下

   今回の国家備蓄の放出は、米国政府が主導しました。主要国が足並みをそろえての備蓄放出は初めてで、追加増産を見送る石油産油国との駆け引きだと報じられています。

   ところがこの駆け引き、専門家や市場関係者からは疑問の声が相次いでいるようです。

Release could have a short-lived and limited impact on the oil market
(放出は、原油価格に短命で限定的な効果しか与えない)
short-lived:短命の、短期間の
limited impact:限定的な効果

   そもそも、今回の「異例」ともいえる各国協調放出の根底には、バイデン大統領の個人的な思惑があると指摘されています。原油価格の高騰が記録的な物価の上昇につながっている米国では、バイデン大統領の支持率が低下して、就任以来最低の水準にまで落ち込んでいます。バイデン大統領としては、各国を主導するリーダーシップをアピールして、支持率アップにつなげたいのでしょう。

   さらに、バイデン大統領が備蓄の放出を発表したとたん、逆に原油価格が値上がりするという想定外の事態となりました。せっかくの歴史的な決断も「やぶ蛇」と酷評されています。

Biden backfire? oil prices surge after president orders oil reserve sales
(バイデン、やぶ蛇か? 大統領が備蓄石油の販売を指示したとたん、石油価格が高騰した)
backfire:裏目に出る、逆効果となる、やぶ蛇
surge:高騰する

   「backfire」は、良かれと思って計画したことが、期待に反する結果となるという意味の単語です。辞書には、「逆効果」「裏目に出る」「やぶ蛇」「しっぺ返し」など、さんざんな訳が並んでいますが、とにかく「予想外の逆効果」であることは間違いなさそうです。

   それでは、「今週のニュースな英語」は、この「backfire」を使った表現を紹介します。

My plan backfired on me
(私の計画は、まったくの裏目に出た)

My joke backfired
(冗談のつもりが裏目に出た)

I hope your plan doesn't backfire on you
(君の計画が逆効果にならないことを祈るよ)

   それにしても、パンデミックの影響で経済活動が停滞していた昨年は、需要減で原油価格が記録的な低値を更新していたはずです。欧州を中心に再び新型コロナウイルスの感染者が急増するなか、素人が見ても原油価格の行方は不透明です。

   バイデン大統領の呼びかけに応じて「異例の決断」をした岸田首相。年末を控え、「backfired」による価格高騰は御免被りたいところです。(井津川倫子)

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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