2024年 4月 26日 (金)

「失敗は成功のもと」と言うが、世界的企業の失敗の数々

社内の論理で失敗したセブンペイ

   失敗の原因が、ユーザー軽視や同業他社との競争にあれば、まだ救われるかもしれない。しかし、「社内不全」が原因だったとしたら、深刻だ。その例を19年にセブン-イレブン-ジャパンが始めた「セブンペイ」に挙げている。

   ペイペイ、ラインペイなどが乱立する「ペイ戦争」に遅れる形で参入した。2段階認証を導入しなかったため、犯罪集団のターゲットにされ、わずか3か月でサービスは廃止に追い込まれたことは、まだ記憶に新しいだろう。

   失敗の直接の要因は、セブンペイの方針をアプリの新規開発から既存のセブン-イレブンアプリへの統合へと転換したことにある。すでに会員数1000万人を超えるセキュリティ・レベルの低いアプリに決済というハイリスクのサービスを乗せるという決断の誤りだった。

   荒木さんは、セブンペイの社長の記者会見での発言を踏まえ、「我が社は他社と違う」「我が社のロジックだから問題ない」という極めて狭い視野でしか事業を考えていなかった、と厳しく指摘している。いわゆる「我が社の論理」だ。

「社員は企業の外側で起きていることに関心が向かなくなり、他社や一般的な定石を学ぶ意義が感じられなくなっていくでしょう。そして、内部の調整ごとばかりが業務の主体になる『内向きな組織』ができあがるのです」

   日本の企業が陥りやすいケースと思ったら、動画ストリーミングサービスで大成功しているネットフリックスも過去にクイックスターというDVD郵送事業で大失敗していることを紹介している。

   ビジネスモデルをストリーミングに移行するという方向性は正しかったが、タイミングや伝え方が最悪だった、と書いている。トップが社内の反対意見を無視して暴走したのだ。その後、同社は新らたなアイデアが出た場合には必ず反対意見を受け入れるプロセスを組み込んだという。

   大衆車パブリカの失敗を生かして成長したトヨタ自動車のような参考例も多いが、衛星携帯電話「イリジウム」の失敗で転落したモトローラなど、取り返しのつかない失敗例もある。新規事業、新製品を開発している人に多くの気づきを与えるくれる本だろう。

「世界失敗製品図鑑」
荒木博行著
日経BP
1980円(税込)

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