2024年 4月 26日 (金)

税調の権威失墜を印象付けた2022年度税制改正大綱 存在感薄れ、今後懸念される首相官邸の「暴走」

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税調、首相官邸に抵抗せず?

   さらに、この幹部が問題視するのは、自らの懐を荒らされた形の税調側が官邸に抵抗した形跡がほとんど見当たらないことだ。

   賃上げ税制は過去に何度も内容が見直されながら、目立った賃上げの促進効果を得ることはできなかったという評価もある。そもそも法人税から賃上げ分の一部を差し引くことで税負担を軽減する仕組みのため、約6割にのぼる赤字企業にはまったく恩恵がないのだ。

   与党税調内でも「賃上げ税制を強化しても意味がない」との声が強かったが、官邸を刺激しないため唯々諾々と岸田首相に従ったというのが実態だった。 「官邸に花をもたせてやった」。税調幹部の一人は大綱決定後、こううそぶいたが、税制改正の主導権を官邸に明け渡した事実は重い。

   元来、官邸が世論の反発を恐れ及び腰になったとしても、堂々と必要な負担増の議論を展開することが税調の使命とされてきたし、実際に、そうした議論を主導してきた歴史がある。

   税調OBの一人はこう指摘する。

「岸田首相は消費税率引き上げ、金融所得課税の強化といった負担増の議論から逃げ続けている。それにクギを刺すのが税調だ。単に官邸に追随するだけでは税調で税制改正を議論する意味はない」

   税調の存在感低下は、今後の財政論議に尾を引きそうだ。

(ジャーナリスト 白井俊郎)

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