2024年 5月 8日 (水)

中国の利下げは「世界経済崩壊の前兆?」 チャイナリスク危険度をエコノミストが分析

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幹部昇進の大チャンス「党大会効果」に期待

   習近平国家主席の「政策」が、特に消費を冷え込ませてしまったと指摘するのは、第一生命経済研究所の主席エコノミスト西濵徹氏だ。「中国景気は内需の弱さが重石となり、一段の減速が示唆される動き」(12月15日付)で、こう説明する。

「例年、11月は大手EC(電子商取引)サイトによる大規模セールが実施されるなど活況を呈する動きがみられるなか、今年は習近平指導部が掲げる『共同富裕』の余波も影響して例年に比べて盛り上がりを欠く様相をみせた。しかし、インターネット経由の小売売上高(名目ベース)は、年初来前年比プラス15.4%と前月(同プラス14.6%)から伸びが加速しており、当局の『ゼロコロナ』戦略に伴い局所的に都市封鎖が引き続き実施されていることも追い風にインターネットを通じた取引は堅調さを維持している。
よって、局所的な都市封鎖など行動制限の余波を受ける形でデパートをはじめとする実店舗との間でカニバリ(共喰い)の動きが一段と強まっているなど、サービス業の企業マインドが頭打ちの様相を強める一因になっていると考えられる」

   そして、当面は来年2~3月に開催される北京冬季オリンピック・パラリンピックに向けた「ゼロコロナ」戦略と、不動産市場の低迷が足かせとなる状況が続き、曇りが晴れるのは早くとも2022年春先以降になることは避けられない、というのだ。

恒大集団が目指した高層マンション群(公式サイトより)
恒大集団が目指した高層マンション群(公式サイトより)

   一方、2022年秋に予定されている5年に1度の中国共産党の「党大会効果」に期待して、やや楽観的な見通しを述べているのは、大和総研の経済調査部主席研究員、齋藤尚登氏だ。「中国経済見通し:22年は党大会効果で5.4%に 1年8カ月ぶりの利下げを発表。不動産規制も脱炭素もやりすぎない」(12月20日付)の中で、こう説明している。

「2022年は下半期(おそらく10月か11月)に、5年に一度の党大会の開催が予定されている。翌2023年3月の国家機構の人事と併せて、昇進の大チャンスが訪れることから、政績(政治的成績)引き上げのため、党・国家機構の幹部には担当地域や部門のパフォーマンスを良くしようとの意向が働きやすくなる。
これが、党大会開催年の実質GDP成長率は前年を上回ることが多いことの背景となっている。大和総研は『党大会効果』に期待して、2022 年の中国の実質 GDP 成長率を前年比 5.4%と予想している」

と、いうのだ。

中国の不動産バブル崩壊のグラフ(大和総研作成)
中国の不動産バブル崩壊のグラフ(大和総研作成)

   しかし、「党大会効果」が出始めるのは、来年半ばあたりからで、それまでは注意が肝要だと指摘する。

「ただし、2022年1月~3月は慎重にみておく必要がある。『ゼロコロナ』が目指されるなか、旧正月、北京冬季五輪、全人代という重要な社会的・政治的イベントが終わる3月末までは、いわゆる接触型の消費の回復は難しい。さらに、(2月からの)北京冬季五輪を控え、毎年恒例の冬場の大気汚染物質(PM2.5など)の排出削減が、例年以上に厳しく求められることもある。鉄鋼などの生産抑制が3月末まで続く可能性があるということだ。
しかし、こうしたイベントが終わり、3回目のワクチン接種が終了しているであろう4月~6月以降は、景気の本格的な回復を期待している。景気回復を牽引するのは、旅行や外食などの接触型消費の過去2年分の『リベンジ』である。
このほか、3月の全人代で、インフラ投資のための地方政府特別債券の発行額がどの程度になるか、また、どれほど拡張的な財政政策が指向されるかにも注目している」

(福田和郎)

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