「数字で見る」コロナ禍直撃の旅行、宿泊、飲食業界... 消費行動 どう変化してたか?(鷲尾香一)

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   新型コロナウイルスの感染拡大では、旅行業、宿泊業、飲食業が大きな影響を受け、その苦境が多く伝えられた。

   だが、ようやく10月から政府の緊急事態宣言が解除された。

   県をまたいだ移動や旅行、あるいは飲酒を伴う飲食などの規制が緩和されたが、はたして回復の兆しは見えているのか――。

  • 旅行関連の需要回復に期待(写真はイメージ)
    旅行関連の需要回復に期待(写真はイメージ)
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危機脱したか? 国内旅行&旅館・ホテル業界

   まずは、旅行関連の動きについて、経済産業省の「第3次産業活動指数」を参考に見てみよう。同指数は2015年を100として、各産業の活動状況を指数化している。

   この指数の推移を追うと、新型コロナの影響が明確に出始めた前後で、消費行動がどう変化していったか、その傾向がわかる(以下、新型コロナの影響が明確に出始めた期間を「2020年3月~2021年10月」とする。また、その期間の平均を「平均指数」とする)。

   それによると、「旅客運送業」は2020年1月には105.2だった指数が、5月には48.4と半分以下に減少した。端的にいってしまえば、乗客が半数以下になった、ということだ。

   ただ、その後は通学・通勤客が戻ってきたことを背景に指数は回復し、2021年10月は74.5だった。新型コロナウイルスの影響が明確に出始めた期間の平均指数は69.4と、7割程度まで回復していることがわかる。

   一方、旅行関連の回復は、大きく遅れている。2020年1月に89.4だった「国内旅行」の指数は、同年5月に3.3にまで落ち込んだ。同年11月には85.4まで回復する局面も見られたが、2020年末からの感染拡大を受けて再び低下した。2021年10月には43.3にまで回復しているが、平均指数は32.9と、国内旅行客は3割程度まで減少した。

   悲惨なのは「海外旅行」だ。2020年1月に81.2だった指数は、同年5月に1.0にまで下落、その後も4.0以下で推移している。2021年10月の指数は3.1、平均指数は2.9と壊滅状態だ=表1参照。

   旅行の減少により大きな影響を受けたのは、「宿泊業」も同様だ。2020年1月に89.4だった「旅館」の指数は同年5月に8.5に、「ホテル」は125.0から21.0に、それぞれ低下した。旅館は8割稼動から1割以下の稼働に、ホテルは満室稼動から2割の稼働に、それぞれ落ち込んだことになる。

   その後、2020年11月に、旅館は74.8、ホテルは84.3にまで回復する。しかし、これも2020年末からの感染拡大を受け、再び低下。その後、徐々に回復基調を強め、緊急事態宣言が解除された2021年10月には、旅館が82.1、ホテルが74.9に回復している。平均指数は、旅館が42.0、ホテルが57.6となっている=表2参照。

どん底だった「居酒屋」にも復調の兆し

   さて、コロナ禍の影響で最も多く取り上げられたのは、飲食業だろう。しかし、「第3次産業活動指数」を見ると、同じ飲食業でも濃淡があり、意外な姿が浮かび上がる。

   同じ飲食業の中でも、「ファーストフード店」には新型コロナの影響があらわれていない。むしろ、新型コロナの影響により、好調に推移しているといえるだろう。

   具体的には、2020年1月に116.9だった指数は、同年4月に96.4にいったんは低下する。しかしその後は、110.0以上を維持し、2021年9月には121.0にまで上昇した。10月も118.6であり、平均指数は112.1となっている。

   影響が比較的に軽微だったのは「食堂、レストラン、専門店」だ。2020年1月に101.1だった指数は、同年4月に39.4まで落ち込むが、その後は順調に回復して70.0程度を維持した。10月も77.8で、平均指数は69.4となっている。

   一方で、飲酒を伴う「パブレストラン、居酒屋」への影響は大きい。2020年1月に87.3だった指数は、同年4月には7.4にまで激減した。100人で満席の店に7人、20人で満席の店なら1.5人しか来店しない、ということだ。

   その後、徐々に回復し、2020年10月には51.5まで指数は上昇した。だが、やはり2020年末からの感染拡大を受け、再び低下。2021年9月までは30.0以下で推移し、10月には35.3に上昇したものの、平均指数は27.5にとどまっている。このように、パブレストラン、居酒屋では1年半以上にわたって3割以下の稼働状況が続いた=表3参照。

   こうして見ていくと、新型コロナウイルスの感染拡大で大きな影響を受けたといわれる旅行関連、宿泊関連、飲食関連でも、その影響度合いには濃淡があった。そして、10月の緊急事態宣言解除を受けた回復度合いにも、格差が出ている。

   政府はこうした実態を把握し、適切な支援策を実施することが肝要だ。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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