2024年 4月 20日 (土)

トヨタEVシフト 「本気度」をアピールも350万台目標に世界はさらなる上積みを求めるかも......

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   トヨタ自動車が電気自動車(EV)の世界販売台数を、2030年に350万台するという目標を打ち出した。従来目標の200万台(燃料電池車=FCVを含む)の1.8倍という大幅な引き上げだ。バッテリー(電池)を含めEV関連に4兆円規模の投資もする。

   世界的に加速する「脱炭素」の流れを受け、EVシフトを鮮明にする欧米勢や中国勢との競争激化は必至で、EVへの「本気度」をアピールするものだ。

  • トヨタ自動車は2030年までにEVに4兆円を投じる(写真は、豊田章夫社長)
    トヨタ自動車は2030年までにEVに4兆円を投じる(写真は、豊田章夫社長)
  • トヨタ自動車は2030年までにEVに4兆円を投じる(写真は、豊田章夫社長)

トヨタが強調する「全方位戦略」

   2021年12月14日、「バッテリーEV戦略に関する説明会」を東京都内で開き、豊田章男社長が発表した。

   5月に公表した目標では、2030年に年間の世界販売(1000万台規模)のうち、800万台をEVやハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)を含めて電池に蓄えた電気エネルギーを動力とする「電動車」とし、うちEVとFCVを合わせて200万台と説明。今回、EVを350万台に引き上げた。

   このため、現在6車種のEVを30年までに30車種に増やとし、説明会では15車種をズラリ並べて一気に公開し、集まった報道陣を驚かせた。350万台のうち100万台を高級車のレクサスブランドとし、レクサスは35年までにすべてEVにする。

   これらを裏付ける投資計画では、30年までにEVに4兆円を投じる。うち、EVの性能を左右する中核部品である車載電池への投資額は2兆円と、従来計画に5000億円上積みした。電池以外では、EVの車両開発に2兆円、HVやPHV、FCVに計4兆円を投じ、電動車全体への投資総額は8兆円になる。

   今回の発表は、トヨタとしてはやや不本意なものとみる向きが多い。

   J-CASTニュース 会社ウォッチが「電動車で『世界の勝者』目指すトヨタ EV巻き返しへ注力するのは次世代の『全固体電池』」(2021年09月20日付)で報じたように、電動車の勝敗を左右する電池、とりわけ次世代の「全固体電池」の開発に力を入れる方針を打ち上げた。ここで強調されたのが「全方位戦略」だ。

   再生可能エネルギーが普及している地域ではEVの投入を加速させるが、石炭火力などの発電割合が高い地域ではEVに切り替えても発電段階の二酸化炭素(CO2)排出が多いので、むしろHVなども併用しながらCO2排出を抑えなるというように、国、地域の実情に応じてどの電動車に力を入れるか、柔軟に対応するという考えだ。

世界の評価、トヨタはEV化に後ろ向き?

   今回の発表でも、豊田社長は「いかなる状況やニーズにも対応し、カーボンニュートラル(脱炭素)の多様な選択肢を提供したい」と述べ、基本姿勢に変化がないことを強調した。

   しかし、9月時点でもEVとFCVで2030年に200万台の目標は維持していたのが、今回、EV350万台とし、電池への投資額も9月に打ち出した1兆5000億円から2兆円へと、わずか3か月で大幅に変えたのは、いかにも唐突感が拭えない。

   トヨタの全方位戦略は、日本国内では評価されている。日本で全乗用車をEV化した場合、原発10基が新たに必要との試算もあり、HVやPHVも活用し、発電の電源構成の動向を見極めながらEV化を進めていくというのは、現実的だからだ。何より、電池で優位に立てば、EVであれHVであれ、競争に勝てるという自信がトヨタにはあるはずだ。

   だが、国際的な評価はまた別。特に話題になったのが、環境保護団体グリーンピースが11月、英国で開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に合わせて公表した世界10大自動車メーカーの脱炭素化の取り組みのランキングで、トヨタは最低評価となった。その最大の理由がEVへの移行の遅れとされたのだ。

   もちろん、グリーンピースの評価だけで、どうこうということはないが、今回のトヨタの発表会で豊田社長が「これでもEVに前向きでないと言われるなら、どうすればご評価いただけるのか」と述べたのは、国際的な視線を意識したものといえる。

ますます強まる世界的なEV化の流れ

   世界的にはEV化の流れは強まる一方だ。日本勢では日産自動車がEVで先行。ホンダは2040年までに新車販売をEVなどの排ガスを出さない車にする方針だ。

   欧州連合(EU)は35年に新車販売をEVかFCVに限る方針で、独フォルクスワーゲン(VW)は年間販売に占めるEVの割合(21年で5~6%)を30年に約50%まで引き上げる方針だ。

   米国もバイデン政権のもと、30年に新車販売の半分を排ガスゼロの車にする見通しで、ゼネラル・モーターズ(GM)は35年にすべての新車販売をEVなどの排ガスを出さない車にするとし、フォードも30年までに新車販売の4~5割をEVにするという。

    トヨタの年間の世界販売規模1000万台のうち、目標としたEVの割合は35%に過ぎないとの冷ややかな見方もあるが、今回目標を上乗せした150万台というのは「中堅自動車メーカーの年間台数に匹敵する極めて大きな数」(豊田社長)で、トヨタのEV強化の本気度に疑念はない。ただ、世界のEVシフトのスピードを考えると、350台の目標がさらに上積みを求められるのも時間の問題かもしれない。(ジャーナリスト 済田経夫)

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