2022年 8月 15日 (月)

地方移住歴18年著者が語る「リアルな暮らしと生活費」 若者が移住を選ぶ理由とは

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   コロナ禍でリモートワークが増えているなか、ヤフーでは国内の従業員は国内ならどこに住んでもOKで、月15万円まで飛行機通勤も認めると発表(2022年1月12日)し、ニュースになった。

   「うらやましいな」と思った人に参考になりそうな本がある。「コロナ移住のすすめ」(毎日新聞出版)だ。「好きな場所で、好きな仕事をする人生」を送る移住者が多数、紹介されている。

「コロナ移住のすすめ」(藻谷ゆかり著)毎日新聞出版

   著者は藻谷ゆかりさん。東京大学経済学部卒業後、金融機関に勤務。ハーバードビジネススクールでMBA取得。外資系企業勤務を経て起業し、2002年にはオフィスを長野県に移転、2018年に事業譲渡した。現在は地方移住、企業などについて講演、執筆をしている。

「存在欲求」を大切にする価値観

   また、夫は国際エコノミストの藻谷俊介さんで、夫婦で経済調査会社を共同経営している。夫の俊介さんはふだん長野県の自宅で仕事をして、用事があれば東京のオフィスへ行く。移住歴は18年を超えるが、ずっとテレワークで仕事をしてきたという。

   そんな移住の経験者が自らの体験と、多くの移住者の話をまとめたのがこの本だ。内容も、地に足がついている。趣味が高じて、田舎に移住したというような話は出てこない。

最近の地方移住の背景には

(1)メンバーシップ型からジョブ型へ
(2)専業から複業へ
(3)所有欲求から存在欲求へ

という3つのパラダイムシフトが起きているという。

   説明しておくと、ジョブ型――つまりジョブ型雇用とは、職務に応じて、適切な人材を雇用する考え方。本書では「スペシャリストとして行うジョブの対価として、報酬を受け取るフリーランス」、もしくは「スモールビジネスの経営者」を指している。

    だから、企業の従業員は対象ではない。「複業」であり、「副業」でないのも重要だ。「いくつかのジョブを掛け持ちして生計を立てていく」から、どの仕事も本業なのだ。

    また、地方移住者には、モノを所有して豊かさを感じる「所有欲求」よりも、人間としての存在を期待される「存在欲求」を大切にする価値観があるという。

「生涯可処分所得」はそれほど変わらない可能性

   著者の藻谷さんは、地方移住のリアルな暮らしと生活費をもろもろ検討し、こう結論づけている。

「地方移住した場合に所得は低くなる可能性があるが、住居費や食費は格段に削減できて、最終的に自由になるお金、すなわち『生涯可処分所得』はそれほど変わらない可能性がある。また健康的な生活を送って80歳まで少しでも稼ぐようにすれば、年金だけでは不足するといわれる2000万円を補うことも可能だろう」

   また、地方に移住した20人の事例を5つのパターンに分類し、複数の事例を紹介している。藻谷さんが長野県に住んでいるため、同県の事例が多いが、岩手県、新潟県、福井県、広島県などの事例もあるので、広く考になるだろう。

1 Iターン移住して複業する
2 Iターン移住して同じ仕事をする
3 Iターン移住して起業する
4 決った地域に移住して同じ仕事をする
5 Uターン移住して新しい仕事をする

   1の「複業」のケースとして、ドーナッツ屋経営と教育スタッフを複業、木材店とゲストハウスのスタッフを複業、古民家民泊と酒米づくりを複業、などを紹介している。

   地方では、都市部に比べて共働き率が高い。共働きは、つまり「夫婦で複業」していることであり、本書の事例のほとんどが「夫婦で複業」している、と説明する。

   2の同じ仕事をしているケースには、「満員電車が嫌」で、地方企業に転職した人、夫婦ともに大手出版社の正社員から独立して、編集やライターの仕事をしているケース、パン屋の店舗を東京から長野に移転後、製造方法を変え、働き方改革を推進する夫婦が登場している。

   3の「起業」には関心が高いだろう。ホンダのエンジニアがチーズ工房を起業、ハウス食品を退職してカレー屋を開業などの事例が出てくる。都会で働いて得た「強み」を活かして、地方で起業しており、既存の建物をリノベーションして活用している点に注目している。

   4の「決まった地域に移住」というのは、イメージしにくいかもしれない。これは、さまざまな理由から、特定の地域に移住した人だ。

   子どもを私立小学校に入学させるために長野県に「教育移住」した女性新聞記者を紹介している。職場の理解を得て東京本社から長野支局に転勤して仕事を継続し、また地域のサポートも得ながら、「ワンオペ育児」をしている。

   5のUターンの例としては、広島県尾道市にUターン移住し、空き家を再生するNPOを設立して社会的企業をした人や、家業を事業継承して新しいチャレンジをしている人を紹介している。

   「若者を県外に出すな」という年配者が多いが、藻谷さんは「若いうちに外に出て、学んで働いた経験があってこそ、地域に貢献することが可能になることを多くの人に理解してもらいたい」と書いている。まったく同感だ。

   地方を変えるのは、「若者、よそ者、バカ者」という言葉を聞いたことがある。よそで学んだり、働いたりした経験がある人が、新しいことにチャレンジする。それにより、地域に活力が出るのだ。新型コロナは、その契機になるかもしれない。

   かつてUターン移住した経験がある評者の目から見ても、地方の実情をよく理解した本だと思った。定年者ではなく若い世代が動き出したところに、今回の移住ブームの本質があるだろう。

(渡辺淳悦)

「コロナ移住のすすめ」
藻谷ゆかり著
毎日新聞出版
1650円(税込)

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