2024年 4月 19日 (金)

話題のMMT(現代貨幣理論)が後押しする「積極財政」 その考え方、期待できるのか?《前編》(鷲尾香一)

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「国債は無期限に償還しなくともよい」主張の是非は?

   まず、基本的なことから指摘すれば、発行される国債を直接日銀が購入することは「財政ファイナンス」として、財政法で禁じている。これは、世界のほとんどの国も同様だ。

   したがって、日銀が国債を購入するとしても、一度は必ず国債市場を通過することになる。現在のように、国債金利が上昇しないのは、日銀の低金利政策によるものだ。そのため、国債発行額が増加し、市場原理が正常に機能していれば、金利は上昇する。

   果たして、財政積極化による国債増発を続ける中で、いつまでも市場原理の働かない国債市場を放置し、金利の上昇を抑え込んでおくことができるのだろうか。

   また、国債の償還にあたって、借換債を発行して先延ばしすることは、現在でも行われている。しかし、これにはルールがあり、国債は60年で償還しなければならない。10年国債であれば、借換債の発行は最大5回までということになる。

   したがって、「無期限に償還しなくともよい」という主張は間違っている。無期限に償還しなくて済むようにするためには、ルールを変更しなければならない。

   この問題に関連して、積極派からは、

「借換債の発行ができるため、先進国のほとんどは予算に国債の償還費は計上しておらず、国債の利払い費だけを計上している。日本は国債費に償還費と利払い費を計上している。借換債の発行により償還を先延ばしするのだから、他の先進国と同様に利払い費だけを計上すればいい」

との指摘もある。

   この考え方には一理ある。だが、国債を増発すれば、必然的に利払い費は増加していく。借換債を利用しても、60年ルールがある以上は国債の償還は到来する。また、その間に無制限に国債を増発すれば、償還費と利払い費が増大していくことは間違えない。

   つまり、予算に計上するか、しないかは表面的な問題であり、潜在的に国債の償還費と利払い費が増加することに変わりはない。

   そこで、積極派から出てくる切り札が、

「紙幣を増刷することで国債の償還費や利払い費を賄えばよい」

とする考え方だ。

   さて、では、MMT理論は本当に実践可能なものなのだろうか。これについては次回、検証していこう。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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