2022年 5月 22日 (日)

世界で加速する「脱炭素経営」 日本を元気にするビジネスチャンスの可能性は? CDP Worldwide-Japanジャパンディレクターの森澤充世さんに聞く

   世界で加速する「脱炭素経営」に向けて、銀行や投資家も目を光らせている。経営戦略に脱炭素の観点を盛り込むことも不可欠となりつつあるなか、資金調達の面でも企業の「脱炭素経営」は必須のキーワードなのだ。

   しかも、かねてから取り組んできたグローバル企業、大企業のみならず、サプライチェーン全体での「脱炭素」が求められる時代になって、中小企業にとっても自社の「生き残り」をかけた取り組みが加速しそうだ。

   今回は、企業や自治体への環境情報の開示を促す取り組みで存在感を高める国際NGO「CDP」において、日本での活動推進ではやくから手腕を発揮してきた森澤充世(もりさわ・みちよ)さん(一般社団法人CDP Worldwide-Japan ジャパンディレクター)に、脱炭素と脱炭素経営の絶えず変化する潮流、日本企業への期待について話を聞いた。2022年「脱炭素経営EXPO 春展」 の特別講演にも登壇するキーパーソン、森澤さんは日本がこの潮流から乗り遅れないように、と願う――。

  • 一般社団法人CDP Worldwide-Japanジャパンディレクター 森澤充世さん
    一般社団法人CDP Worldwide-Japanジャパンディレクター 森澤充世さん
  • 一般社団法人CDP Worldwide-Japanジャパンディレクター 森澤充世さん

CDPを通じて情報開示する企業...世界約1万3000社

――CDPはどのようにして設立され、また、どのような活動をしているのでしょうか。

森澤充世さん「CDPは、『社会的責任投資の母』と呼ばれたテッサ・テナントさんら数人の有志によって、イギリスで2000年に設立されたNGOです。気候変動による地球への影響、その課題解決に向けてCDPは、銀行や投資家が投資判断をする際、企業の気候変動への取り組みも、判断基準として盛り込もうと考えました。そこでCDPが、投資家の署名(賛同)を受けて企業に質問状を送り、得られた回答を公開する、という活動を始めたのです。初期段階では、時価総額世界の上位500社である『グローバル500』を対象としていました。2006年には日本での活動拡大に向けて、私が参加することになったのです」

――日本での活動は森澤さんがリードされてきました。その手腕もあって、CDPを通じて環境情報を開示する企業は年々増えていますね。

森澤さん「おっしゃるとおりで、2021年度は世界の約1万3000社がCDPを通じて情報開示しました。昨年度よりも35%の増加、2015年の『パリ協定』以降では141%以上の増加です。日本は900社近い企業が回答しました(※)。CDPの質問書は『気候変動』『フォレスト』『水セキュリティ』の3分野があり、『A』から『D-』までのスコアを付けています。日本は3分野あわせると『Aリスト』企業が75社で、世界最多。3分野すべてA評価の『トリプルA』を、花王と不二製油グループ本社が獲得しました」

※署名機関および顧客企業からの回答要請に対して回答した企業数。署名機関からの回答要請は、これまでTOPIX500の企業に送付してきたため、まだ参加していない企業もある。なお、2022年4月に控える東京証券取引所の市場再編後、実質最上位となる「プライム市場」上場企業には、気候変動リスクの情報開示が義務づけられるようになる。さらにCDPでも、プライム市場上場企業の全1841社を調査対象とする。
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――CDPの質問書に回答することにはさまざまなメリットがあります。

森澤さん「自社の状況を把握するのにも役立ちます。しかも、毎年継続する――この意義は大きいと思います。『急に情報開示と言われてもできません』というのはよくある話ですが、私たちは『できるところだけでも開示してください』と促しています。なぜなら、情報開示に向けて、情報を整理するなかで、自社の活動に何が足りないか、何をしなくてはいけないか、気づくきっかけになるからです。確実に、翌年以降の改善にもつながるでしょう。
   また、スコアによる評価があるのもポイント。結果を見て、自社が『良い』と評価されるためには、何をすべきかが見えてきます。CDPではスコアリング基準をすべて公開しているので、それも参考になると思います。そして、できていなかったところを見直す――いわば、PDCA(Plan→Do→Check→Action)のサイクルのようなものとして活用してほしい、そんな狙いもあります。
   ちなみに、質問書は世界の動きにあわせて、絶えず見直しています。とくに、金融安定理事会が『気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)』(※)を2015年に設置し、2017年にTCFD提言を発表した以降は、これに準拠したものとなっています。たとえば、TCFDの開示項目とCDP質問書とのマッピング(双方がどの開示項目にあたるか)がなされています。そのため、TCFDに沿った情報開示が求められた際には、CDP質問書に回答した知見が役立つなど、相乗効果があると思います」

※企業の気候変動への取り組みや影響に関する財務情報についての開示のための枠組み。
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