2024年 4月 24日 (水)

やっぱり「3%賃上げ」は無理? 調査で判明...企業のホンネは「2%」、なかには「50%賃上げ」回答も

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   「3%の攻防戦」と言われる今年に賃上げ春闘だが、やはりキビシーという調査がまとまった。

   東京商工リサーチが2022年2月21日、賃上げに対する企業側の動向を聞いた「2022年度『賃上げに関するアンケート』 『賃上げ率』3%未満が7割超に、『実施率』改善は1.3ポイントにとどまる」という調査を発表したのだ。

   「3%」どころか、賃上げを行う予定の企業でも「2%」前後という哀しい結果になりそうだが、インターネット上ではとっくあきらめムードが漂っている。

  • 「よっしゃー、給料大幅アップよ!」といきたいが…(写真はイメージ)
    「よっしゃー、給料大幅アップよ!」といきたいが…(写真はイメージ)
  • 「よっしゃー、給料大幅アップよ!」といきたいが…(写真はイメージ)

賃上げ実施率、コロナ前から10ポイント下落

   調査結果をみると、2022年度に賃上げ実施を予定する企業は71.6%だった。前年度(2021年度)の70.3%から1.3ポイント上昇し、2年連続で増加した。しかし、コロナ前の実施率80%台の水準には届かなかった=図表1参照

(図表1)賃上げを実施する企業の推移(東京商工リサーチ作成)
(図表1)賃上げを実施する企業の推移(東京商工リサーチ作成)

   コロナ前は安倍晋三政権下の「官製春闘」や人手不足などの影響で、企業の賃上げ実施率は80%台の高水準に達していた。だが、現在は回復基調にはあるものの、長引くコロナ禍が影響して、賃上げの実施率はコロナ前から約10ポイント落ち込んだ状態が続いている。

   規模別では、「実施する」は大企業77.2%、中小企業70.8%だ。その差は、前年度の7.4ポイント差から6.4ポイント差に1ポイント縮まった。これは中小企業の賃上げ実施率が、前年度の64.8%から6.0ポイント改善したことが要因だ。

   産業別にみると、近年の好調な業界と不調な業界の差がはっきり出たかたちだ。「実施する」と答えた割合が最も高かったのは、製造業の78.8%。次いで、卸売業74.7%、建設業73.2%、情報通信業69.4%の順。最も低かったのは金融・保険業の45.3%だった。

   とくに運輸業は、最近の原油価格の高騰のあおりを受け、経営体力のある大企業を中小企業の差がはっきり出た。大企業の「実施する」が82.2%(45社中37社)に対し、中小企業は60.8%(230社中140社)で、規模格差は前年度の16.4ポイントから21.4ポイントに広がった。燃料代の高騰に加え、人手不足も深刻さを増すなかで、格差が広がっているようだ。

   さて、具体的な賃上げの内容はどうだろうか。

   「賃上げを実施する」と回答した企業に、具体的にその内容を聞くと(複数回答)、最多は、「定期昇給」の81.8%だった。以下、「ベースアップ」32.1%、「賞与(一時金)の増額」28.1%と続く=図表2参照

(図表2)賃上げの具体的な内容(東京商工リサーチ作成)
(図表2)賃上げの具体的な内容(東京商工リサーチ作成)

「50%以上」賃上げする驚きの企業もいるのに...

   ところで、岸田文雄政権は経済界に「3%の賃上げ」を要求するとともに、労働者側の日本労働組合総連合会(連合)でも「3%の賃上げ」を掲げているが、実際の賃上げ率はどのくらいになりそうか。今回の調査でも、賃上げを「実施する」と回答した企業に、賃上げ率を年収換算ベース(100までの数値)で聞いた。

   その結果、賃上げ率は前年度(2021年度)の水準から大幅に悪化し、賃上げ率「3%未満」の企業は前年度の50.8%から73.1%へと22.3ポイントも上昇している。逆に、「3%以上」は26.9%で、20ポイント以上も減少した。

   1%区切りで細かくみていくと、最多は「1%以上2%未満」の36.2%だった。次いで、「2%以上3%未満」が33.4%、「3%以上4%未満」が17.0%(424社)と続く=図表3参照。結局、賃上げ率の中央値は、大企業、中小企業の規模を問わず2.0%だった。これでは、「3%の賃上げ」など夢のまた夢、ということになりそうだ。

(図表3)賃上げ率はどのくらいか(東京商工リサーチ作成)
(図表3)賃上げ率はどのくらいか(東京商工リサーチ作成)

   それにしても、どんな会社か不明だが、「30%以上の賃上げ」を実施すると回答したところが14社(全体の0.62%)あったことは驚きだ。なかには「50%以上」も8社(0.32%)あったのだ=再度、図表3参照

   なお、調査は2022年2月1日~9日にインターネットによるアンケートで行い、6781社から有効回答を得た。「定期昇給」「ベースアップ」「賞与(一時金)」「新卒者の初任給の増額」「再雇用者の賃金の増額」をすべて賃上げと定義。また、資本金1億円以上を「大企業」、1億円未満(個人企業などを含む)を「中小企業」とした。

賃上げより「教育改革」「ジョブ型」を望む声も

   インターネット上では、「賃上げ」そのものに対する「あきらめ」の声が充満している。ヤフーニュースのヤフコメ欄ではこんな意見が相次いだ。

給料、これだけしか増えないのか...(写真はイメージ)
給料、これだけしか増えないのか...(写真はイメージ)
「賃上げはよいけど、もう経済にプラスに働くことはないと思う。それよりも、未来を安心して迎えられる環境が必要だと思うね。低賃金だったとしても、安心して子供を大学まで進学させてあげる安心と、安心して老後を迎えられることを国が担保する」「少子化対策をすぐしないと(中略)景気が先細りしていくのは目に見えているから、せめて20年後、働く人が増えていって経済が上向く実感がわかないとね」

   賃上げしても全部貯蓄に回るから、経済はよくならないという指摘も。

「国が企業に賃上げだけ要請しても、企業も国民も将来が不安だから貯蓄するだけ。欧米などのようにお金を回転させる施策でないと企業も賃金をアップできないでしょう」
「今の日本だと給料上がっても貯蓄に回るだろうね。一番の原因は国民が政府を信じていないこと。年金も社会保障もいざとなれば簡単にルールを覆されるのが目に見えているからね」

   さらに、「賃上げ」よりも、政府や経済界は「改革」に全力を挙げて取り組むべきだという意見も多かった。

「政府が強制的に民間企業に賃上げをさせるなんて限界がある。この先日本が大きく成長する見込みがないのに、賃金が大幅に上がるはずがない。日本が輝きを取り戻すために必須なのは賃上げではなく、痛みを伴う教育改革。これからの時代、異才や個性がますます重要になるだろう。なぜなら単純作業や予測可能な仕事は機械やAIに取って代わられるだろうから」「かつてのように日本が勤勉さや長時間労働で世界を席巻できた時代は終わった」
「日本人も早く欧米や中国のようなジョブ型企業へ転換できるといい。能力ある人材は高報酬ポジションへどんどん転職。各企業は人材確保のために高報酬を約束し、国内企業で人材を奪い合う好循環。とはいえ、現在の日系企業がそんな風に変わるにはバブル世代以上の経営陣が淘汰されないと難しい」
「転職しなくても、基本的に同期横並びの年功序列を崩し、ポジション性にすればいい。特に管理職ね」「15年やっても、責任逃れに終始してきた人と、たった2~3年でも修羅場に挑戦してきた人とは自ずと違う。(中略)年齢にかかわらず経験がある人を当てる。それから30歳ぐらいで配転をやめて、基本的には専門職とする。専門職の給与は市場と連動」「そうすれば専門性を上げたり、責任の幅を広げたり努力をした人はそれなりに処遇が上がる」
何が何でも賃上げを!という声は意外に少ない...(写真はイメージ)
何が何でも賃上げを!という声は意外に少ない...(写真はイメージ)

   経営者へのこんな要望もあった。

「人件費はコストにあらず! 人件費とは地域振興費です! 経営者さまの中には(中略)人を働かせ放題の労働サブスク費と勘違いされている方が多く見受けられます」「仕事というのは(中略)時間とともに雪だるま式に一定量で増え続ける『業務パーキンソンの法則』というのがあり、労働者が業務タスクに費やされる消費カロリーもまた日々増えるのです」「業務タスクだけが増えれば、可処分所得は減ることになり(中略)地域経済も疲弊し、衰退するだけなのですよ。社員の給与を上げることは、地域を振興するための費用なのです」

   もう無理だと観念しているのか、「ぜひ3%の賃上げを」という声は意外に少なかった。

(福田和郎)

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