ロシアへの経済制裁でジワジワと追い込まれる欧州の苦悩 SWIFTに続き、原油禁輸も...【ウクライナ侵攻】

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   ロシアのウクライナ侵攻に絡む経済制裁をめぐり、欧州が難しい立場に追い込まれている。

   ロシア産原油の輸入が、当面の焦点に浮上している。

  • ロシアへの経済制裁で米国は原油を禁輸措置に……(写真はイメージ)
    ロシアへの経済制裁で米国は原油を禁輸措置に……(写真はイメージ)
  • ロシアへの経済制裁で米国は原油を禁輸措置に……(写真はイメージ)

EU、ロシア最大手のズベルバンクをSWIFTから排除せず

   2022年3月2日付のJ-CASTニュース 会社ウォッチ「ロシアに放たれた『金融の核兵器』SWIFTからの排除 この最終手段でプーチンを止められるか【ウクライナ侵攻】」で解説したように、欧米日は国際決済ネットワーク「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からのロシア排除に動いた。排除された銀行は海外の金融機関との送金業務が大きく制限され、ロシアの対外貿易にとって逆風となるのは確実だ。

   ただ、欧州連合(EU)が排除したのは7銀行で、米国がロシア最大手のズベルバンクとの取引制限に踏み切ったのに対し、EUは排除対象にズベルバンクを含めなかった。

   これには、欧州が抱える事情がある。欧州は天然ガスの約半分、原油の4分の1をロシアからの輸入に依存している。最大手のズベルバンクまでSWIFTから排除すれば、ロシアからの資源輸入が滞る可能性もあり、域内のエネルギー供給に支障が出かねないのだ。

   ちなみに、日本の原油輸入におけるロシアの依存度は4%程度。しかもほとんど日本企業の権益分で、輸入を止めても日本企業が損をするだけでロシアへの制裁効果は小さいとされる。

   そんな欧州の状況に、米国とロシア双方が揺さぶりを強めている。

   米国のバイデン大統領は3月8日、ロシアに対する追加制裁措置として、ロシア産原油の輸入を禁止すると発表。SWIFTからの排除に続き、資源輸出そのものを締め上げることで、ロシア経済に直接打撃を与える戦略だ。

   これより前、ブリンケン国務長官は6日のCNN番組で、ロシア産原油の禁輸に向け調整に入ったと明らかにしていた。ブリケン長官は禁輸に当たっては「同盟国と協調する」と明言し、欧州も足並みをそろえる用意があると付け加えてみせた。

ロシア原油禁輸なら1バレル=300ドル超!?

   これに驚いたのが欧州だ。ドイツのシュルツ首相は7日発表した声明で「欧州はロシアのエンルギー供給を制裁対象から外している」と明かし、米国が突如打ち上げた原油禁輸策に戸惑いを隠さなかった。

   英独仏の首脳は7日、バイデン米大統領と4首脳の電話会談を開催。ホワイトハウスの声明では、4首脳はウクライナ支援の強化で一致したとしたものの、原油禁輸に関する内容はなかった。

   ロイター通信によると、会談でバイデン米大統領は欧州の賛同が得られなくても米国単独で禁輸措置に踏み切る意向を示した模様だ。煮え切らない欧州に「最後通牒」を突きつけた格好だ。

   欧州が対応に悩む背景には、ロシア依存の急速な方向転換が難しい事情がある。ウクライナ危機を受けて、欧州は資源の調達先の分散などに取り組んでいるが、対応には時間がかかる。原油の即時禁輸に踏み込めば、電力需要期である冬場のエネルギー供給が重大な影響を受け、域内に混乱が広がる事態は避けられない。

   そんな欧州の足元を見透かすかのように、ロシアのノバク副首相は7日、「(禁輸措置に踏み切れば)原油価格は1バレル=300ドルを超える。市場に破滅的な結果をもたらす」と警告した。さらに、禁輸が実行されれば「ロシアは対抗措置を取る権利がある」として、欧州向けの海底パイプライン「ノルドストリーム」を通じたガス輸出を停止する可能性に言及した。欧州に圧力をかける狙いは明白だ。

   ウクライナを危機から救うため、「返り血」覚悟でロシアに対する圧力をさらに強めるのか。それとも自分たちの事情を考慮して対ロ制裁の足並みを乱してでも経済制裁に手心を加えるのか。

   米国の原油禁輸方針を受け、すでに原油相場は1バレル=140ドルという13年ぶりのレベルに高騰している。欧州は難しい決断を迫られており、それが、激しい戦火を交えるロシアとウクライナの戦いの行方にも大きな影響を与える可能性がある。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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