2024年 4月 20日 (土)

投資と実家の役員報酬得る「主婦」の悩み「稼ぎは夫と同程度...夫も家事負担してほしい」 投稿が炎上、専門家の裁定は(2)

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   「投資収入」と「実家の会社の役員報酬」をあわせると、夫と同じくらいの年収を得ている「主婦」の投稿が炎上している。

   投稿者の主張は「同程度の稼ぎがあっても、やはり家にいる妻が家事の大部分を負担すべきでしょうか」というものだ。

   夫婦には2人の子どもがいるが、夫はまったく家事育児を手伝わない。女性がたまに家事代行を頼むと、イヤミを言われてしまい...。家事負担の「不公平」を訴えている。

   「投資や役員報酬があっても、家にいる主婦のあなたが家事をするべき」VS「共働きに近い状況だから、夫も平等に家事を担うべき」と賛否激論だ。専門家の裁定は?

  • すれ違いの夫婦でいたくないのに(写真はイメージ)
    すれ違いの夫婦でいたくないのに(写真はイメージ)
  • すれ違いの夫婦でいたくないのに(写真はイメージ)

「なし崩し的に家事育児が妻の役割となる家庭は6割」

   <投資と実家の役員報酬得る「主婦」の悩み「稼ぎは夫と同程度...夫も家事負担してほしい」 投稿が炎上、専門家の裁定は(1)>の続きです。

――今回の論争はいろいろな問題を含んでいます。まず、夫婦間家事の分担のあり方ですが、「時間があるほうがやるべきか」「収入に応じてやるべきか」「主婦だからやるべきだ」などさまざまな論点がありました。
   川上さんが研究顧問をされている働く主婦層の実態調査機関の「しゅふJOB総研」で今回のテーマに即した調査をされたことがありますか?

川上敬太郎さん「仕事と家庭の両立を希望する主婦層に、『日々の生活の中で、家事や育児のワンオペ状態を経験したことがありますか』と尋ねたことがあります。ワンオペとはワンオペレーションの略で、家事や育児を1人ですべて行うことを指します。
◇働く主婦に聞く、家事や育児のワンオペ

その結果、ワンオペ経験者は7割に及びました。さらに、ワンオペ経験者を対象に、ワンオペ状態になった理由を聞くと、『家族で話し合うことなく自分の役割になった』と回答した人が6割近くでした。一方、自ら望んだ人は2%、話し合った結果だという人は4%に過ぎません。
つまり、話し合いすら行わず、なし崩し的に家事育児が妻の役割になっているご家庭が圧倒的に多いということです。そもそも『時間がある方が』とか、『収入に応じて』などと議論することすらないご家庭の方が多いのだと思います」

「投資の情報収集や資格の知識更新にも努力と労力が必要」

資格だって継続的な勉強が必要です(写真はイメージ)
資格だって継続的な勉強が必要です(写真はイメージ)

――なるほど。そういう議論が無意味なほど、妻が家事育児を担うことが当然視される風潮があるということですね。たしかに、投稿者が「家事育児を担うべき」という回答が目立ちます。その理由として「投稿者は稼ぎが夫と同じだ、というが、投資や役員報酬は不労所得的なものではないか」という見方です。

川上さん「もし仮に、夫婦間で収入の多いほうが、その分家事育児の担当は少なくなる、というルールにしたとしましょう。その場合、夫が年収900万円で妻が300万円だと、家事育児の担当比率は夫1:妻3です。しかしそれでは、夫婦の労働時間が同じくらいであったとしても、妻は夫の3倍家事育児に従事することになり、どんどん心身の疲労が蓄積していくことになるはずです。
では、労働時間が少ないほうが、より多く担当するのはどうでしょうか。収入差に応じて決めるよりは合理性があるように思います。でも、世の中には、家事育児が苦手な人も得意な人もいます。また、お子さんと遊ぶことは全く苦にならないとか、料理するのが好きだという人もいます。そういった得手不得手を無視して、一律に労働時間との対比で決めることが、必ずしも最適だとも言えないはずです。
また、投資や役員報酬が不労収入に見えたとしても、投資の情報収集や資格の知識の更新など、さまざまな準備が必要です。何にどれだけの工数がかかるのかは、外から見ているだけでは把握できません。どのように家事育児を担えば夫婦が互いに納得しあえるのかは、全家庭共通の正解があるわけではなく、ご夫婦の数だけ存在する最適解を見つける必要があるのだと思います」

夫は主婦を「お世話係」と混同している?!

――また一方で、「投稿者は主婦と名乗っているが、株で稼ぐ投資家だ」というような指摘もありました。

川上さん「主婦という言葉から受けるイメージは、人それぞれだと思います。主に家事育児を担当して、家を切り盛りする人という意味でとらえ、投稿者さんご自身もそう名乗っているならば、主婦でよいのだと思います。しかし、投資や役員の活動があることから、労働時間は短いとしても、専業主婦というよりは兼業主婦に該当するのではないでしょうか。
人には家庭や社会のさまざまな場で、それぞれの役割があります。また、自分に合う働き方も人それぞれです。専業主婦であることも、主婦業をしながら投資などで稼ぐことも、当然ながら、それぞれ尊重されるべきだと思います」

――投稿者が家事を外注したり、酒を買っていなかったりしたことに「主婦のくせに」とイヤミをいう夫に対して、「もっと自分(夫)も家事をするべきだ」という批判も多かったです。

夫にも少しは家事をしてもらいたい(写真はイメージ)
夫にも少しは家事をしてもらいたい(写真はイメージ)
川上さん「投稿者さんは日ごろ家事育児全般をこなしていて、十分な収入も得ていますし、たまに家事を外注することが問題だとは思いません。しかし、夫には夫の理想とする妻の姿や家事のあり方があるのかもしれません。また、夫なりの将来設計があり、家事の外注などに極力お金を使ってほしくない、と考えている可能性もあります。
一方、投稿者さんにも夫に求めたい姿があり、お金の使い方に対する考えもあるのだと思います。そこに、夫婦間の認識のズレがありそうです。一度腰を据えて、目線合わせをする必要があるのではないでしょうか。
夫は主婦を『お世話係』と混同している可能性があります。家の中を切り盛りすることと、家族(この場合、夫)の行いや希望を手助けすることは、本来同じではないはずです。たとえば、夫が脱いだ服が床の上に置きっ放しになっていたら、それを片付けるのも主婦の役目なのでしょうか? 夫の役目のはずですよね。そうでなければ、子どもたちに部屋を片付けなさい、と注意することもできませんから。
自分のことは自分でするのが基本で、お酒などの嗜好品の購入も同様です。世の妻が、夫が脱ぎっ放しにした服を片付けるのは、主婦だからではありません。単なる親切心か、そこにあると邪魔だからです。もし夫が妻に『お世話係』を要求しているのであれば、そこまでする必要があるのかどうか、ご夫婦でよく話し合うべきです」

「悩みを疑問の形に書き出して夫婦で話し合おう」

ストレスたまってもうヘトヘト(写真はイメージ)
ストレスたまってもうヘトヘト(写真はイメージ)

――たしかに、そのとおりですね。川上さんなら、ズバリ投稿者にどうアドバイスをしますか。

川上さん「まずはご自身の悩みや不満に感じていることが何かを整理したほうがいいと思います。悩みをザックリとひとまとめにしているうちは、どんな解決策を講じても隔靴掻痒で終わり、モヤモヤしてしまうはずです。

・たまにプロのお掃除などを頼むことはナゼいけないのか
・夫は『主婦のくせに』と主婦業を馬鹿にしているのか
・夫は365日24時間休みがない家事育児の大変さを理解しているのか
・自分も同等の稼ぎがあることを夫はどう思っているのか
・夫婦間でどのように家事育児に携わるのがベストなのか

このように、それぞれ異なる性質の課題です。1つずつ個別に夫と話し合いながら、目線を合わせていく必要があります。地道に話し合いを進めれば進めるほど、お互いについての理解を深めることにもつながっていくはずです」

――悩みを疑問の形にして書き出すと、問題解決の糸口になりそうですね。

川上さん「投稿者さんは家庭での役割を果たしつつ収入も獲得し、不満を感じながらも夫の言い分に耳を傾けるなど、とても頑張っています。ただ、あまり何でも受け止めると、いつの間にか溜まり続けたストレスが破裂してしまうこともありえます。時折ストレスを発散して、頑張り過ぎないように、耐え過ぎないようにしていただきたいと思います。
夫とは、ぜひ丁寧にテーマ設定をして話し合いを重ねていただきたい。話し合う中で、逆に投稿者さんには見えていなかった夫の大変さや思いを知ることができるかもしれません。今後もお子さんが大きくなっていくにつれて、家庭内にさまざまな課題が生じ、夫婦間で目線合わせが必要となる機会が訪れるはずです。話し合いを通じて夫婦がお互いの理解を深めることで、困難を乗り越えていくための礎を築いていかれることを願っています」

(福田和郎)

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