2024年 4月 25日 (木)

ブランドとは「らしさ」のことである! ブランドマネジメントの理論、実践のポイント

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   一時はよく「ブランド戦略」という言葉を聞いたものだ。でも、そもそもブランドに効果があるの? と疑問を持っている人もいるだろう。本書「超実践! ブランドマネジメント入門」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、ブランドには絶大な効果があると説いている。読めば、ブランドについての誤解も解けるだろう。

「超実践! ブランドマネジメント入門」(上條憲二著)ディスカヴァー・トゥエンティワン

   著者の上條憲二さんは、愛知東邦大学経営学部教授。世界的なブランドコンサルティングファームであるインターブランドの日本法人でエグゼクティブディレクターとして多くの企業のブランド戦略を担当した。2014年から現職。日本ブランド経営学会会長。

  • ブランディングの理論、実践がよくわかる一冊
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ブランドマネジメントは、経営戦略そのもの

   インターブランドではブランド価値の高い企業を分析し、ブランドには以下のような効果・効能があると発表したという。

   それによると、対外的にはChoice(チョイス:選ばれる)→顧客から選んでもらえる、Premium(プレミアム:高価な)→高くても買ってもらえる、Loyalty(ロイヤルティ:忠誠心)→買い続けてもらえるという効果。

   また、対内的にはAttract(アトラクト:惹きつける)→社員が魅力を感じる、Retain(リテイン:とどめておく)→社員が転職しない、Motivate(モチベート:動機を与える)→社員がやる気になるという効果。最近では、社員が「生きがい」「働きがい」を感じることによって、心身が健康になる効果もわかっている。

   ブランドは広告やPRなどで認知を拡大し、よいイメージを持ってもらうプロモーション戦略の一部にとどまらず、企業資産の一部――言い換えれば、企業の経営戦略そのものに大きく関与するものである、という認識に変わってきたことを紹介している。

   自社のブランドコンセプト(ブランド理念)に基づき、経営を行っていくのが「ブランド経営」という考え方だ。

   そもそも、ブランドとは何か? 上條さんは、「頭の中にある確固たる存在」のこと、と説明。そして、頭の中にある「イメージの貯金箱」とたとえている。ロゴマークはその目印であり、「イメージの貯金箱」を開けるカギだ。

   ブランドを日本語では「らしさ」と言い換えている。〇〇らしい活動、〇〇らしい製品などと言い換えるとわかりやすい。顧客は製品やサービス、社員、広告、店舗、経営者など、いろいろな要素を見て、「らしさ」を判断している。

   では、ブランディングは具体的にどう進めるのか? 10段階のステップを説明する。

1 ブランド、ブランディングの基本を知る
2 組織内にブランディングの機運をつくる
3 進めるための組織をつくる
4 自分たちはどこにいるのか環境を見つめる
5 分析を経て、進む方向を考える
6 ブランドの基盤をつくる
7 ロゴマーク、デザインなどの「伝え方」をつくる
8 「らしい活動」を考える
9 ブランドをデビューさせる
10 成果を活かす

勤務する大学で当事者として実践し、成果が出た

   本書がユニークなのは、上條さんが実際に勤務する大学で「ブランディング」を当事者として実践したことを詳しく書いていることだ。

   愛知県にある小規模私立大学で、必ずしも存在感がある大学ではなかったが、志願者の増加、定員充足、学生満足度の向上などの成果が出た。2019年には、日本国内のブランディング活動を評価する「Japan Branding Awards 2019」(「Winners」)を大学として初めて受賞した。

   本の構成としては、上記の10のステップをそれぞれ、理論編、実践編で構成し、各項の最後に「Work」のページがあり、回答していくと、最終的に自分たちの会社・組織・製品などのブランディングができる仕組みになっている。

   ブランディングを始めるには、「大義名分」があるといいきっかけになるという。たとえば、会社創立の周年、経営計画立案、社屋移転、M&A、画期的な新製品の開発などだ。

   ブランディングのための組織をつくり、環境分析、顧客分析の後、いよいよ自社を分析する。そのポイントは、自分たちの「強み」と「弱み」、そして「宝さがし」だという。

   内側ばかりに目を向けていると、「宝」が見えなくなるので、「社会環境、競合の活動、顧客の認識を俯瞰しながらもう一度、自分たちの強みを見つめ直してください」と書いている。自分たちが「ふつう」に思っていることも、解釈次第では貴重な価値に見えることもある。

   「ブランドらしい活動」の例として、エバラ食品工業のブランドステートメント「こころ、はずむ、おいしさ」や事業活動の一部として、「たれで新しい肉料理の可能性を広げていきます」を紹介している。

   顧客が企業であるBtoB企業こそターゲットが明確なのでブランディングが効果的だとして導入例を挙げている。また、採用ブランディングについても専門企業の代表が詳しく書いている。業種、地域、規模に関係なく採用ブランディングができるという説明には納得した。

   すでにブランディングを始めた企業でも、定期的に「ブランドの健康診断」をしてブランド力の強化をすることを勧めている。

   最後は、会社ではなく自分自身の「パーソナルブランドづくり」の項目があり、上條さん自身のパーソナルブランドを公開している。人生100年時代を考えると、「企業のらしさ」と「個人のらしさ」を両立させることも大事なことがわかる。

   400ページを超える厚く大きな本だが、学習ドリルをこなす感覚でブランドに関するすべてがわかると言っていいだろう。広報担当者、事業責任者、経営者に勧めたい1冊だ。

(渡辺淳悦)

「超実践! ブランドマネジメント入門」
上條憲二著
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2970円(税込)

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