2024年 4月 18日 (木)

食品値上げが止まらない!...上場食品105社、計6000品目で これまでの内容量減らす「ステルス値上げ」では限界

   即席めん、ハム、かまぼこ、マヨネーズ、ケチャップ、ソース、お菓子、ワイン、焼酎、バター......。

   食品の値上げが止まらない。値上げをしないものを探すのが難しいくらい、といったら大げさか。小麦・トウモロコシなど世界的な穀物価格上昇に加え、原油高による物流コスト増、さらに円安加速というトリプルパンチを受けてのことだ。

   そんななか、帝国データバンクが2022年4月16日に発表した「『食品主要105社』価格改定動向調査」は、今年に入って続々と値上げを行ってきた食品企業の動きを調べ上げている。

   それによると、今後も値上げは続く可能性が高いという。気は滅入るが、生活のためにも知っておかなくては......。

  • スーパーに並ぶ高い食品の買い物に悩む女性(写真はイメージ)
    スーパーに並ぶ高い食品の買い物に悩む女性(写真はイメージ)
  • スーパーに並ぶ高い食品の買い物に悩む女性(写真はイメージ)

加速する食品関連会社の値上げの動き

   食品関連会社の値上げの動きは昨年(2021年)12月から目立ってきたが、今年(2022年)1月から一気に加速した。4月に入っても主要会社の値上げ発表が相次いでいる。報道をまとめると、4月中だけでたとえばこんな案配だ(以下、価格は、断りがないものは税別)。

・森永製菓
アイスクリーム11品目を6月から。値上げ幅は6.1~10%。原料である砂糖や乳製品、包装資材の高騰に加え、物流コスト増が理由。主力の「チョコモナカジャンボ」が140円から150円に。棒アイス「パキシエル」が350円から380円に。
・明治
アイスクリーム、冷凍食品、栄養食品など68品目を5~6月以降に。値上げ幅6.7~8.6%。
アイスクリームは原材料高騰と物流コスト増が響く(写真はイメージ)
アイスクリームは原材料高騰と物流コスト増が響く(写真はイメージ)
・日清ヨーク
乳酸菌飲料とヨーグルト飲料17品目を6月から。値上げ幅5~14%。主力商品「ピルクル400 65ミリリットル」(10本入り)が270円から290円に。
・極洋
イワシ、ツナ、スイートコーンの缶詰23品目を6月から。値上げ幅5~20%。
・ローソン
看板商品「からあげクン」が5月末、1箱(5個入り)216円から238円に(税込み)。値上げは1986年の発売以来初。原材料(鶏肉・小麦)価格の高騰、包材や輸送コスト増が理由。なお、同社はすでにサンドイッチなどを値上げしているが、「からあげクン」は格別に思い入れが強いのか、「苦渋の決断」とコメント。
・コメダホールディングス
国内店舗の9割にあたる約800店舗の「コメダ珈琲店」で4月末から。アイスコーヒーを430円から480円にするなど(税込み)。
・ハウス食品
七味唐辛子やこしょうなど家庭用香辛料98品目を7月から。「七味唐がらし 17グラム」は130円から142円に。
・ロイヤルホールディングス
冷凍食品「ロイヤルデリ」28品目を5月から。人気の「コスモドリア」は580円から650円に。「ビーフジャワカレー」は530円から580円に(いずれも税込み)。
・メルシャン
ワイン300品と焼酎44品を7月から。値上げ幅はワイン(参考小売価格1000円以上の商品。例外あり)が8~10%、焼酎が3~7%。
・ネスレ日本
「きっと勝っとお!」(絶対に勝つ、の九州弁)の願掛けで長年受験生に人気のチョコレート「キットカット」2商品を7月から。ほかに、「キットカット ミニ 12枚」が324円から356円、「バラエティアソート146グラム」が378円から416円に(いずれも税込み)。

   ......といったわけで、それぞれの食品会社が苦渋の決断を下した結果だ。

ハム、カマボコ、即席めんなど...加工食品は値上げした品目多い

   帝国データバンクによると、今年に入り、食用油や小麦粉、大豆、砂糖などが高騰したため、冷凍食品や醤油、食肉加工品、水産練り製品、豆乳、菓子などで価格へ反映させる動きが急増しているという。

   上場する食品主要メーカー105社の2022年1月以降の値上げ計画(実施済み含む)を調査した結果、4月14日時点までに、累計6167品目で値上げの計画があることがわかった=図表1参照

(図表1)2022年に入ってからの食品値上げ品目数・月別(帝国データバンクの作成)
(図表1)2022年に入ってからの食品値上げ品目数・月別(帝国データバンクの作成)

   このうち、6割超にあたる4081品目ではすでに4月までに値上げしている。各品目の値上げ率(各品目での最大値)は、平均で11%となった。

   食品分野別に、値上げとなった品目をみると、最も多いのはハム、カマボコ、即席めんなどの加工食品。2909品目、全体の47%を占めた=図表2参照。値上げ率の平均は12%だ。小麦や油脂などの原材料価格高騰に加え、原油高でラップなど包装材価格高騰を価格に反映したケースが多かった。

(図表2)値上げした食品・分野別(帝国データバンクの作成)
(図表2)値上げした食品・分野別(帝国データバンクの作成)

   次いで多いのが、調味料の1311品目だ。加工食品の2009品目と合わせると、値上げ全体の約7割を占めた。

   調味料では、ドレッシングやマヨネーズを中心に、とくに食用油の価格高騰による影響が目立つ。なかでも菜種油は、マヨネーズやドレッシング類の原料に使われている。その菜種は、主産地カナダの天候不順で生産量が落ち込む一方、脱炭素社会に向けたバイオ燃料向けの需要が拡大し、相場価格が上がっていることが響いた。

値上げの背景に「企業努力で吸収可能な余力を超えている」

   値上げ率が15%と最も高いのが、酒類・飲料(744品目)だ。焼酎類はサトウキビなどから作られる粗粒アルコールの価格高騰の影響が大きい。一方、ワインは、輸入ワインが物流費の高騰と円安のダブルパンチを受けたため、値上げ幅が大きくなった。

ワインも物流コスト高騰と円安のダブルパンチで値上げに(写真はイメージ)
ワインも物流コスト高騰と円安のダブルパンチで値上げに(写真はイメージ)

   菓子(431品目)は、ジャガイモの不作のほか、油脂、砂糖といった原料高、包装資材の高騰が響いた。乳製品(400品目)は、乳牛の飼料であるトウモロコシの価格高騰と、中国国内で健康食品としての「チーズ人気」が高まり、世界的に輸入チーズの消費が拡大したことが影響している=図表3参照

(図表3)価格改定の食品・分野別の原因など(帝国データバンクの作成)
(図表3)価格改定の食品・分野別の原因など(帝国データバンクの作成)

   それぞれ、さまざまな事情がからんでいるわけだが、帝国データバンクでは、

「これまで食品メーカーでは、大多数が値段を据え置いたまま内容量を減らす『ステルス値上げ』でコストアップに対応してきた。しかし、世界的な食料品相場の上昇に加え、原油価格の高騰に伴う物流費と原材料費の値上がり、為替でも円安傾向が続くなど全方位でコスト増が続き、企業努力で吸収可能な余力を超えていることが、今年以降価格への転嫁をせざるを得ない背景としてあげられる」

と分析している。

(福田和郎)

姉妹サイト

注目情報

PR
コラムざんまい
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中