2024年 4月 25日 (木)

携帯販売員3割「お客を高いプランに誘導」、そのうち「上司・店長の指示」5割...携帯電話の闇に迫る総務省「覆面調査」公開

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「どうもペラペラ喋るセールストークに乗せられて、必要がなさそうなオプションばかり付けられた気がする」

   携帯電話ショップで契約を済ませた後に、釈然としない気持ちで店を出た経験がある人も少なくないだろう。やはりというべきか、携帯ショップ店員の3割がお客に必要以上に「高いプラン」を勧誘した経験があることがわかった。

   総務省が現役の店員および元店員から聞いた「覆面調査」で明らかになった。携帯電話会社大手の公然とした「ルール」破りはそれだけではない。いったい、どういうことか。

  • 携帯ショップ店員の3割が消費者に高いプランを勧誘(写真はイメージ)
    携帯ショップ店員の3割が消費者に高いプランを勧誘(写真はイメージ)
  • 携帯ショップ店員の3割が消費者に高いプランを勧誘(写真はイメージ)

今回は「店員覆面調査」の詳細が明かされなかった

   総務省は2022年4月25日、携帯電話の「競争ルールの検証に関するワーキンググループ」と「消費者保護ルールの在り方に関する検討会」の合同会合が開いた。その席で事務局が実施した2つの「覆面調査」を発表、ともにホームページ上に公開した。

   その1つが「キャリアショップ店員に対するアンケート調査」(覆面調査)だ。現職197人・元職228人の計425の携帯電話ショップ店員に匿名で販売の実態を聞いた調査で、昨年(2021年4月)に続き2回目の実施となる。ところが今回は、メディアを含む一般の人々には調査結果の詳細は隠されている。

   J‐CASTニュース会社ウォッチでは昨年4月27日付で「やっぱり携帯電話ショップはお客をなめきっていた!『高い料金プランに勧誘』が4割以上」と、前回の携帯電話ショップ店員らに対する「覆面調査」の結果を報じた。当時の記事を読むとわかるが、この時、総務省は店員らの生々しい声を詳細に公開していた。

   しかし今回は、「サンプル数が限られていることや、ウエブアンケートという手法の制約により、実態を正確に反映できていない可能性があることに留意が必要。詳細な調査結果については、販売現場への影響を考慮し、構成員及びヒアリング対象者限りとする」として、店員らの具体的な声は非公開とした。

   だが、この説明は釈然としない。昨年の調査もウエブアンケートだし、サンプル数は昨年が412人、今回が425人だから、どこが違うのか。携帯電話料金値下げをスローガンに掲げ、携帯電話大手に強い姿勢で臨んだ菅義偉政権から、岸田文雄政権に代わり、携帯電話大手に対して何らかの「忖度」が働いているのか、と想像するのはうがちすぎだろうか。

携帯電話ショップのキャンペーン(写真はイメージ)
携帯電話ショップのキャンペーン(写真はイメージ)

   それはともかく、総務省が「概要」だけ公開した「キャリアショップ店員の覆面調査によると、「お客の利用実態に合わない、あるいは利用実態を確認せずに高い料金プランを推奨したことがある」と回答した人は3割。「不要と思われるオプションやアクセサリーを推奨したことがある」人は、それぞれ3割、2割だった。

   こうした営業の背景について確認すると、「店長や上司からの指示」が5割、「販売代理店」の経営層からの営業目標」が6割、「キャリアからの営業目標」が4割、「自己判断」が1割という結果だった。

   自由記述の中では、次の4つの「声」だけが公開された(総務省事務局が要約)。

「営業目標を期限内に達成しないと店の存続ができなくなる」
「目標を達成しないと給料の減額・降格となる」
「毎朝の朝礼で個人の目標達成具合が読み上げられる。自分だけ契約を取っていないと居場所がなくなる」
「全案件に全商材を提案するように指示される」

違反事案の割合が高いのは楽天モバイル

   もう1つ公開されたのは「電気通信事業法第27条の3の規律遵守状況に係る覆面調査」だ。これは、タイトルにある条項に対する違反行為摘発のために、総務省のホームページに情報提供窓口を開設、利用者からの情報を集めた。

   携帯電話業界の公正な競争を促進するために2019年に改正された項目だ。ざっくりいうと、(1)通信料金と端末代金の完全な分離、(2)行き過ぎた「囲い込み」の禁止、という2つの競争ルールを業界に求めている。

   提供された情報531件のうち、電気通信事業法で2万円と定められた値引き額の上限を超えたり、回線を契約しない客に端末の販売を拒否したりするなど、違反事案が40件、違反が疑われる事案が12件あった。これらをあわせると、調査全体の9.8%にのぼる。昨年調査では、違反・違反疑いの事案は20.5%だったから、半減したことになる。「覆面調査」の効果がでてきたということか。

   違反事案の割合が最も高い事業者は楽天モバイルで、23.3%だった。次いで、ソフトバンク8.4%、KDDI(au)7.8%、NTTドコモ3.6%という結果になった。事業者別に主な違反ケースをみると――。

携帯電話業界の闇は深い?(写真はイメージ)
携帯電話業界の闇は深い?(写真はイメージ)

【楽天モバイル】

   ・SIMと一緒に契約していただかないと端末の購入ができない。端末自体の購入は不可。端末購入プログラムも契約がないと不可。=非回線契約者への端末販売拒否。

   ・(端末購入プログラムについて)楽天カードを持っており、かつ端末がiPhoneであれば、楽天カードで48回払いをしてもらうと適用できるが、回線契約を伴う。=非回線契約者への端末購入サポートプログラムの提供拒否。

   ・ポイントバックは、回線契約を伴わないと適用できない。iPhoneSEについて、回線契約がないと色々なキャンペーンが適用できない。回線契約をした場合、本体価格4万4800円のところ、iPhoneSEのキャンペーンで4万4799ポイント、また、楽天モバイルを初めて契約で5000ポイント、併せて4万9799ポイントになる。=回線契約を条件とする2万円の上限を超える利益提供の提示。

【ソフトバンク】

   ・乗り換えとかなら受付ができるが、端末だけだと、それ専用の端末の納期が未定となってしまっていて、いつ入って来るかわからない状態になってしまっている。今ある端末はソフトバンクから出ている機種になってしまうので、端末だけの購入ができない。=非回線契約者への端末販売拒否。

   ・ソフトバンクユーザー以外は48回払いで24回支払った後に端末を返しても分割が続く。残債免除はソフトバンクユーザーだけである。回線契約をすれば、本体を返せば残債免除になる。ソフトバンクユーザーの人向けに残債免除というプランがあるだけ。=非回線契約者への端末購入サポートプログラムの提供拒否。

   ・iPhoneSEの場合、回線がない状態で単体のみ購入になる場合だと、すべてのキャンペーンが外れてしまうので、5万7600円の定価での購入になる。回線込みで買った場合、乗り換えで番号をソフトバンクに持ってくると1円で購入できる。=回線契約を条件とする2万円の上限を超える利益提供の提示。

【KDDI(au)】

   ・端末だけの販売は基本的にはしていない。au又はUQへの乗り換えだったら端末を販売している。今から案内するiPhoneのキャンペーンはauがやっているものであり、割引額は下がるがUQでも適用される。ただ、端末だけという話なのであれば他の契約してくれるお客様にお渡ししている。=非回線契約者への端末販売拒否。

   ・端サポは回線契約がないと組むことが出来ない。(カタログに回線契約がなくてもよいと書いてある旨を伝えたところ)これは返却時の話。「機種返却時には、回線契約がなくてもよい」という旨の表示。=非回線契約者への端末購入サポートプログラムの提供拒否。

   ・iPhoneSEについて、2、3月は繁忙期なので、auに一度乗り換えてもらえれば9800円でお渡しできる。乗り換えではないと、単純に「5万5000円の代金をお支払いくださいね」という話になる。機種だけだとキャンペーンは適用されない。=回線契約を条件とする2万円の上限を超える利益提供の提示。

【NTTドコモ】

   ・(在庫があることを確認したiPhoneSEについて)乗り換え用で予約されている端末だった。取り置きの方より先に来られたので、乗り換えであればお譲りできるが、それ以外の人にはお譲りできない。=非回線契約者への端末販売拒否。

   ・端末購入プログラムは、純粋新規でも乗り換えでも使えるが、端末単体購入であれば使うことができない。単体購入は一括払いのみになる。=非回線契約者への端末購入サポートプログラムの提供拒否。

   ・iPhone13miniについて、乗り換えであれば、2万2000円の割引に加え、頭金1万4300円を免除させていただく。上の者と今相談し、ここまではできるという話になった。=回線契約を上限とする2万円の上限を超える利益提供の提示。

   などと、それぞれ携帯電話ショップの店員は、さまざまな「言い訳」を用意するものだ。

ショップは「転売ヤー」対策を口実にするが

どこの電話会社のサービスの満足度が高いか(写真はイメージ)
どこの電話会社のサービスの満足度が高いか(写真はイメージ)

   今回の「覆面調査」結果について、ヤフーニュースのヤフコメ欄ではさまざまな意見が相次いでいる。まず、電気通信事業法違反・違反疑いが約10%という数字には疑問の声があがっていた。

「まさに先日、家電量販店の某キャリアのカウンターでそうでした。来店予約して行きましたが、単体製品の購入と分かると1か月以上待ち、ネット注文のほうが早いですと言われ帰りました。(中略)私はたまたま店員さんの対応が柔らかかったのでよかったけど、横柄な店員さんだったらムカついていたかも」
「新宿の家電量販店では端末のみキャリアで購入しようとすると、どのお店も『対応できる販売員がいない』と断られます。暇そうにケータイ拭いている店員もいるのにも関わらず、です。途中までMNP(携帯電話番号ポータビリティ)の体(てい)で話を進めると、食い付いてくるくせに『やっぱり端末だけで』と言うと、『いま担当者がいない』と言い出します。(中略)こういうのはどんどん摘発してほしいです」
「今回での違反は全体の販売の1%未満くらいしか表面化されていないでしょうね。各販売店に2、3月に覆面調査があるという通達が出ていましたから、それとなく調査と分かれば、賢い店は端末のみでもしっかり販売していますよね。(中略)こういった違反はメーカー、キャリア、代理店にメスを入れないとダメです。特に優先的地位の濫用はひどすぎます」
携帯電話の転売ヤーが横行している(写真はイメージ)
携帯電話の転売ヤーが横行している(写真はイメージ)

   また、こんないい加減なケースを紹介する人もいた。

「家族3人で某キャリアを契約した際、主人の名義で1台、私名義で1台、私が紹介した形でもう1台契約すると〇万円値引きになりますと説明を受けたのに、長々と契約を進めていって最後になって『値引きが出来ませんでした』と言われた。(中略)その話を持ってきたのがその店の店長。自分の店の割引内容も把握できないとはいかがなものか」

   ほかに、そもそも携帯電話ショップが端末の単体のみを売りたがらないのは転売ヤー対策だから仕方がない。こういうシステムを作った総務省側にも問題がある。......こういう意見も少なくなかった。

「(端末の)単体購入は9割以上断られますよ。転売対策として当然かと思います。これを違反というなら、10%の店が違反というのはちゃんと調査していないんじゃないですか。単体購入も回線契約のように身分証情報を登録して1人1台に限れば、ある程度の転売対策も可能だと思う。反社会的な輩が買い占め、一般人になかなか行き渡らない現状の仕組みは欠陥です」
「転売ヤーかどうかは、電話問い合わせとか最初の段階でほとんどばれて、『在庫がない』の一言で片づけて終わり。覆面調査も、あからさますぎてばれているから違反率が少なく見えているだけ。(中略)代理店は利益のためではなく、キャリアの意向に従わないと存続できないだけ」

「通信」と「端末」を完全に分離するほかない

   しかし、消費者の立場から言えばトンデモない理屈だ。

「単体購入できるという建前で値引きしているのに、実際には単体購入させないって、明らかにウソついているんだからダメでしょ!」
「アップルストアで7万円とかで売っている物を、回線契約なしで大赤字の2万円とかで売ること自体がおかしいよね。そもそもの契約欲しさのこんな売り方に無理がある。それを買われたら迷惑とか言っていることがおかしい。この値引きの原資は契約しているユーザーが負担している訳だから、既存ユーザーはもっとキャリアに怒ってよいと思う」

   憤りの声が出るのは当然だろう。

   では、どうすればよいのだろうか。代表的な意見を紹介したい。

「キャリアショップは通信事業者なので通信契約(要は電話番号)を得るために本体を販売している。通信だけでなく自社オプションサービスで定額収入が欲しいので、本体を割引く代わりにオプションサービスを付けてほしい。契約数アップや短期解約防止を各代理店に依頼しているので、代理店からすると本体をエサに契約数を稼ぎたい心理が働いて、顧客からすれば悪質なサービス提供になる。これはもう何年も前からで、(中略)有能な本体はAppleみたいにメーカーが直接販売し、通信はキャリアが売る、と分けたらいいと思うんだけど......難しいのかな?」

   このように、「通信」と「端末」の完全分離を主張する意見が目立った。

(福田和郎)

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